【太陽に眼差し】

バロン城の窓から見上げた抜けるような青い空。
穏やかな空気と暖かな光がとても気持ちよくって……。

「こういう日にピクニックとか行きたいよね〜〜」

ただ思いつきで口に出しただけだった。
本当に行きたい!って思ったわけじゃなかったんだけど……。

でも、あのときの自分に感謝しなくちゃ。

そして今。
あたしの背中にリュックサック。
中身はお弁当。
カインの手には水筒。
中身は紅茶。
あとあたしの持って行きたいってわがままを聞いてくれて……お菓子。
バロン郊外の静かな道をゆっくり、2人で歩いてる。

「ね、カイン、どこいくの?」
「ん……すぐそこだけどな……」

それだけ答えてカインは黙々と進む。
あたしはただそのあとをついていくだけで……どこへ行くかは聞いてないの。
あたしが思いつきで言ったあとに、『じゃあ行くか』って席を立って……。
カイン、すっごいの!
部屋にあった材料だけでぱぱぱっとサンドイッチやおかず作っちゃって。
……あたしはお弁当箱につめただけ、なんだけど……。

「ちょっと待ってろよ」

そう言ってカインが鉄製の門の前で立ち止まる。
門の向こうは広いお庭、そのずっと奥に……すごく大きなお屋敷。
な、なぁに?ここ……。
カインがポケットを弄って鍵の束をとりだした。
え、え、入っちゃうの??

「だ、大丈夫なの?カイン……」
「ん? あぁもちろん」
「でも勝手に入ったら……」

そう言ったあたしに返ってきたのはまったく予想外の言葉。

「なんで? 家主が自分の家に入って何か問題があるか?」

…………。
…………………。

はぁぁぁぁぁあああ!!!!??

「こっ……こ、ここ……カインのお家……!!!?」
「ああ」
「えっ……だっ……」
「俺が……10年生まれ育った家だ。 1度は手放したがな、買い戻した」

か、か、買い戻したって……ていうかこんな大きなお屋敷の……お、お坊ちゃま、だったなんて…。

「ま、とにかく入ろう。 ココの庭先ならピクニックもできるしな」

重い音を立てて門が開く。
月に1度お庭やお屋敷のお手入れを人に頼んでるんだって。
刈り揃えられた庭木や植えられたお花がすごく綺麗。
これまた大きな玄関に続くアプローチも広くまっすぐに伸びてて、こう見るとお屋敷からお庭まで左右対称になってる。
あまりに衝撃的な事実とゴージャスなお屋敷に呆然と立っていると、カインがとなりでクスリと笑った。

「あっちを特に綺麗にしてもらってるんだ、行くか?」
「う、うん! 見たい……けどいいの? 芝生踏んづけちゃうよ」
「構いはしない。 そんなことに気を使わなくていいから……おいで」

そういってカインはさっさと行ってしまうから、あたしも慌ててあとを追った。
お屋敷の綺麗な石作りの壁を横目に見ながら裏側へ回る。

「っ……わぁ……!!」

目に飛び込んできた光景は、裏庭一面に広がる眩しいくらいのひまわり畑。
そんなに背は高くなくて、あたしの胸くらいまでのひまわりがお庭を一面埋め尽くしてた。

「すごい! すごい!! きれい!」
「お気に召していただけたならなによりだ」
「すごい……!」

鮮やかな黄色が視界いっぱいに広がっていて、お日様の光に輝いてる。

「あたしひまわりって大好き……!」

そういうと、カインが笑みをうかべた。
すごく、すごく柔らかくて……やさしい、笑顔。
こんな表情見たことなかったからすごく驚いて、その一瞬であたしは目を奪われちゃった。

「俺の母が好きだったんだ、もちろん父も。 ……俺も、好きな花だ」
「そう、なんだ……」
「他の誰かが自分と同じものが好きだというのは嬉しいものだな……」

そういってひまわり畑に目を戻す。
あたしは……まだ彼を見つめたままで。

その視線に気づいたらしいカインが不意にこっちを見た。

「ひまわりの花言葉……知ってるか?」
「え、うぅん、知らない……」

カインが意味ありげににやりと笑う。
うっ……この笑顔はなにかある……。

「知りたい?」
「……ぇ……う、うん……」
「んじゃ、教えてあげよう」


『私の目はあなただけを見つめる』


…………ッ!!!


「な、なに……っ、あ、あ、あたしは別に……!」
「うん? 俺はただ花言葉を教えただけだろ……?」
「ッ!」

た、確かに……!

顔が熱くて、くらくらしちゃって。
あたしは、なにも言い返せない。


……少し意地悪で、かわいい笑顔。
やっぱり見とれてしまうから……。


おしまい
(06'05/26)
5555hitファング様のリクエストでした。
 
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