【キミイロ】
高い高い空を飛空艇が飛んでいく。
雲ひとつない、空の旅を楽しむには絶好の日和。
「ねぇ、海が見えてきたわ!」
甲板に出ていたローザが声を弾ませた。
それを聞いたリディアの瞳がぱぁっと輝きを帯びる。
「海だって、カイン!」
彼女は上空から見下ろす海原の景色が大のお気に入り。
幼少を山奥と地底で過ごしたせいかもしれない。
はしゃぐリディアの少し後ろをやれやれと苦笑しながらカインがついて歩いた。
「うわぁ〜〜!! きっれ〜〜い!」
甲板から身を乗り出すようにして眼下の海を覗きこむ。
カインは風に流される髪を手で軽く押さえながら彼女の隣に付いた。
「綺麗なエメラルドグリーン! ね!」
「あぁ、そうだな」
彼女につられるようにカインが柔らかく微笑う。
遠く沖合まで海底が見える透き通った海。
時折群れをなして泳ぐ魚やイルカの姿が見えた。
日差しに輝く淡い碧色はどこか神秘的。
そう、それはまるで。
「カインの瞳みたいだね」
「リディアの髪みたいだな」
見事に声がかさなって、微妙な空気が漂った。
「…………ご馳走さま」
「…………」
笑いの混じったローザの一言に2人は思わずそっぽを向き合ってしまう。
少々困ったような、2人の可愛らしくはにかんだ表情にローザは肩を揺らして静かに笑っていた。
「あ〜〜、平和ねぇ〜〜」
「……そうだね」
「……そうだな」
…………。
今度こそ、青い空に
ローザの笑い声が響き渡った。
おしまい
(05'08某日)