#6 そして、最終章




目が覚めると、もう夕方であった。起きると電伝虫と手紙。気になったが、それよりも外で誰かが戦っている。

飛び出すと、海の方角からの気配だった。まだ、眠気の残る頭を振って起こす。ああ、強い睡眠薬だった。

駆け出す。きっと、トキと誰かが戦っている。

「ティーチ!!」

「ゼハハハハ、折角お誂え向きにひとつの島をまるまる用意したんだ!エースも参加してれねえと、つまんねえよな!」

「エース!?」

無傷なティーチと、傷と血だらけのトキが対峙していた。
俺が来たことに目を見開き、トキは振り返ったことにより隙が生まれてしまった。

闇が彼女を凪ぎ払う。彼女もはっと気づいて避けた。普通なら間に合わないだろうが、時を操ったようで、トキの姿がぶれたかと思うと位置が移動した。でも、位置は闇が振り払われる軌道上のまま。
勢いは少しばかり殺がれたが、トキの体は吹っ飛んだ。

「トキ!くそ、火拳!」

「闇黒星!」

お互いの力が相殺される。
やっと見つけたんだ、絶対にサッチの敵は取ってやる。










「エース、薬か何か洩られたか?ゼハハハハ!
またしても、"運命"はおめえを殺すんだな」

膝を着いて、倒れた。
ああ、すまねえ、サッチ。すまない。

「"今度"はここで死んでいけ、エース」

何を言っているか、分からない。俺の知らないことが起きているのか・・・・・・。

「お?トキ。やっぱり守るのか」

倒れた俺とティーチの間にトキが入り込む。
弱々しい背中で、白と黒の服は赤が目立った。そして、立っているのもつらいだろう、酷く咳込んでいる。

「もう立ってるのも辛いんだろ?トキトキの実の能力は便利だが、体の負担がでけえよな。ゼハハハ。
体がまともに動けばエースを掴んで時間を飛ぶのに、出来るのにな!」

「黙って、ティーチ!時空真空!」

「おっと、あぶねえ」

トキがティーチに向かって真空の刃を飛ばす。狙いが甘かったようで、さらりとティーチは避けた。そして、逆に咳込んでトキは座り込んでしまう。

「同じゲームをお前が納得するまで繰り返させるんだから!
なあ、エース隊長を後何回死なせたら、気が済むんだ?
・・・・・・でもよ、新しい時代が来るのに、邪魔をすんじゃねえ」

ティーチの闇刃がトキに向く。
駄目だ、トキが死ぬっ。




・・・・・・倒れて、動けなかったのに、俺はトキの前に出た。振り下ろされた刃はトキではなく、俺に致命傷を与えた。

でも、まあ、間に合ってよかったな。

「エース?」

「ゼハハハ。これでエースは死ぬな。妹の為に体張ったんだから、今回はトキを見逃すぜ。
まあ、次も、頑張れ、可愛い末妹」

にやり、と笑うとそのまま背を向けて手を振り、歩き出した。本当は追いかけて、サッチの敵をとらねえといけないのに、力がもう入らねえ。ぐらりと、体の力が抜けて後ろに倒れて、トキに体を預ける形になった。

「あ・・・・・・あ・・・・・・」

俺を抱き留めたトキはぼろぼろと泣き出して、絶望した顔を見せる。ティーチの顔が最後より、泣き顔の方がマシだな。出来れば、笑っている顔が良かった。

沈みかけている夕日がトキの顔を照らす。せめて、最期まで見させてくれ。

「エース、・・・・・・ああ、どうして、なんで」

(エース、どうして、死んじゃったの?ねえ、おきて、エース。みんなで助けにきたんだよ?)

(やめて、また死んじゃいやだ!やだ!)

(さあ、脱獄しよう!大丈夫、わたしはみらいみてきたから。わたしを忘れちゃった?あれ?なんで?エース、死んじゃうのやだ。やめて、1人にしないで。おいていかないで。知らないところにいかないで!やだ、エース。やめて、殺さないで。ごめんなさい。初めまして、わたくしはトキです。もう、疲れた。だから、。で、そし・・・・・・ね・・・・・・あ・・・・・・)

・・・・・・またデジャブ。俺の記憶じゃないのに、何かが頭の中に浮かんでくる。

(大好きなエース、絶対に助けるから)

日が沈むと共に、雨が降り出してきて、トキの体から体温を奪っていく。俺の体も急速に冷えていくのは死ぬからで・・・・・・あ、俺死ぬんだな。
ははは、死ぬってこうなんだな。

「いやあああああああああああああああ!」

我が身を引き裂くような叫び声だったのに、トキの声が遠い。俺を抱きしめているはずなのに、もう何も感じなかった。

大丈夫だって、言ってやりたいのに・・・・・・何も残せなかった。声も温もりも優しさも。

それでも・・・・・・。

次も、愛しい妹が俺を救いたいと願うなら、俺は何度でも死ぬ運命に絡め取られてもいい。





Are you return the time?
(そして、俺の世界はまた停止して、また世界が戻り回り出す)








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