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■私の場所

 振動で覚醒し、ゆっくり目を開ける。
「あれ、生きてる」
 ラッキー。驚きである。
 身体を少し動かすけど、骨折どころかすり傷も何もない。
 しかも、ここは崖の下ではない。
 私は列車に乗っていた。
 森の中で朽ち果てようとしていた、あの車両によく似ている。
 今はきれいになって、ちゃんと動いている。
 前後の車両と連結している。
 外はなぜか真っ暗で何も見えないけど。
 自分がまた呼吸をして身体を動かせたことに安堵し、私はぼんやりと外を見た。
「お客様、切符を拝見いたします」
「え!?」
 唐突に現実に揺り戻され、ドキッとする。
 気がつくと車掌さんがいて、私に手を差し出していた。
「お客様、切符を拝見いたします」
「あ、あの。その……」
 あたふたしポケットを探ると、何という奇跡。
 切符がポッケから出てきた。
「はい! はいはい、これ!」 
 慌てすぎてポケットの中の、他の物が床に落ちる。
 明らかに不審な態度だったであろうが、車掌さんはにこやかに切符を受け取ってくれた。
 うーん。さすが異世界の車掌さんというか、ずいぶんと変わった格好お方だ。
 眼帯してるし、腰に妙な仮面のアクセサリーがついてる。
「あれ? お客さん、行き先が書いてありませんよ?」
「は?」
 見ると、戻された切符には確かに行き先が書かれてない。
 ……さすがに電子カードはないですよね。この世界。
「どこに向かわれますか?」
 ニヤニヤと車掌さんは笑っている。
 なぜだろう。その笑みに、悪意を感じた。
「今はどこへ向かってるんですか?」
「どこへでも。でもお客様が行き先を決めないと、このままでは……」 
 あー、やっぱり夢なのかなあ。
 ろくな場所に行き着きそうにない気がする。
 私は返事に困り、窓を開ける。
「っ!!」
 下から猛烈に吹き上げる風。
 どうやら線路はあるようだけど、驚いたことに線路そのものは虚空に浮いていた。
 下は真っ暗で、何も見えない。
 いや、奥底で何かうごめいているような……。
「…………」
 ゾッとして、そっと窓を閉めた。
「どうしますか? お客さん。早く決めないと……」
 車掌はまだニヤニヤと笑っている。
 状況は不明だが、何かしら答えを提示しないとヤバい。それだけは分かった。
「いえ、いきなりそう言われましても、考える時間が……」
「それが君の答えかな?」
 間近でのぞき込まれドキッとする。
「あ! ストップ! 待って! 今の違うですから!!」
「そう? じゃあ、早くしてよね」
「は、はい。すみません」
 慌てて考える。

 あのままエースといても、また崖から突き落とされる気がする。
 私への愛情がある程度あった上で、私を落としたと思われるから恐ろしい。
 どういう人格破綻者だ。
 かといって、グレイを傷つけた手前、のこのこクローバーの塔に
戻るわけにはいかない。
 ならブラッドさんのお屋敷で清掃業。いや、迷惑かけすぎだ。
「あー、じゃあ元の世界に戻りますんで、そこに行って下さい。住所は日本の――」
「嘘だね」
「え」
「君は元の世界に戻りたいなんて最初から思っちゃいない。
 扉だって困るさ。いくら元の世界と念じられても、本心が真逆じゃつなげやしない」
「――――」
 言葉につまる。
「迷子癖なんて嘘だろう? 君は本当は決めたくない、たどりつきたくないだけ。
 不安定にもほどがある。騎士に目をつけられるわけだ」
「ち、違います……。わ、私は本当に……!!」
『なら願望に合わせて、夢魔の野郎に頭をイジられたな。
 本当に厄介なことしかしねえ奴だぜ』
 車掌の腰の仮面がしゃべったけど、今更そんなことに驚く気になれない。
「君は元の世界に帰りたくないのに、帰るんだと自分をごまかしている。それは困るなあ」
『どこへ行きたい? 答えられないのなら……』
 私は蒼白な顔をおさえ、席にうずくまる。
 そして急に汽車が揺れ出した。
「な、何ですか!?」
 座っているのも困難な振動に、席にすがりつきながら車掌に問うた。
 車掌は、自身も席につかまりながら笑っている。
「あいまいな目的地を指定されたからね。
 きっと脱線しちゃったんだよ」
「こ、こんな虚空で脱線!? どうなるんです!?」
 一度崖から落ちた身だ。もうあんな恐怖はごめんだ。
「そりゃあもちろん……ねえ?」
 あの奥底の数字の吹き溜まりに突っ込むんだろうか。
 車両だけは、どこかの国で朽ち果てるかもしてない。
 でも私は……?
 そうなったら死ぬの? それとも……この世界の端数の一つになる?
 ――エース……っ!!
「何とかして下さいよ、この汽車の人でしょう!?」
 動けていたら襟首つかんでいたところだ。
 でも車掌は笑うのみ。
「大丈夫、大丈夫。目が覚めたらきっと別の場所にいるよ」
『そうそう。もう何も考えなくていい。あんたも楽だぜ?』
 これまでで一番、悪意を感じる声。
「可愛がってあげるよ、リン。いつまでもね……」
「――――っ!!」
 汽車が揺れて、身体がガラスにぶつかる。
 閉めといて良かったー! そのまま汽車の外に落っこちるとこだった。
 そして今にも墜落するかも、という恐怖の中、思う。エースのことを。
 私を車両に閉じこめようかと言っていたエースを。
 誰もいない、誰も来ない森で、ただ一人扉を見ていた彼を。
 花畑で、微笑んでくれた恋人を。
 そして目のはしに緑色のものを見つけ、ハッとする。
 ――四つ葉のクローバー。
 切符をとるとき、落っこちたのだろう。
 あのとき花畑でエースがくれたものだ。

 この国。大好きなクローバーの国。
 私を捕らえ、拾ってくれた優しい緑の国。
 緑の国の赤い騎士エース。
 誰より孤独な……私だけの――。

 気がついたときには言葉になって口から出ていた。

「私はエースのとこに戻ります」

「あんな不安定な男のところに帰るのかい? 適当に言っていない?
 この世界に来てから、迷ってばかりの君にまともな答えが……」
 車掌が嘲笑しながら言い――その表情が驚きに変わる。
 汽車の揺れが収まった。また安定した動きで走り出す。
 再び線路に乗ってくれたようだ。
「……あれだけ迷いっぱなしなのに、急に心を決めたのはどうしてだい?」
 笑みを消し、どこか悔しげに言う車掌。
 唐突に現れた彼が何なのかサッパリ分からない。 
 でも、間違いない。
 こいつは敵だ。
「私、エースが好きなんだなと思って」
「はっ。都合がいいなあ、君は。また突き落とされるかもしれないよ?
 いやもっとヒドい目に遭うかも。
 それとも、殺されても好きなんだとか、面白いことは言わないよね?」
「……さあ」
 周囲の風景が白く染まる。
 汽車が終点についたのかもしれない。

「私より強いのに、私より弱い。
 何だか放っておけないですよ。
 捨てられた子犬を見捨てるみたいで」

 …………
 
 …………

 見上げて見えるのは夜の月。
 どこかでクジラの悲しげな声がする。
「なんかさ。ものすごーく情けない告白を聞いた気がするんだけど」
「……私に謝るより先に、それですか?」
「俺って、そんなに情けない?
 君を何度も守ったし、トカゲさんから奪っただろう?」
 私の傷に包帯を巻きながら言う。
 ここは崖の下。私は一命を取り留めた。
 しかし、あくまで一命を取り留めただけ。
 全身のあちこちが、すさまじいことになっている。
 ちょっと身体を動かすだけで、気絶しそうだ。
「ここが君のいた世界と違う世界で良かったよな。
 時間が経てば傷も元通りだし」
 崖の下に私を捜しに来た、第一発見者にして犯人が言う。
 うん。元の世界なら後遺症は免れなかったでしょう。
 もちろん、巻き戻りとやらが起こるまでは、相応の苦労をしないと
いけないだろうけど。
「俺が面倒を見るよ。君を傷つけたのは俺だし」
 自分の傷にはいい加減なのに、私にはちゃんと丁寧に包帯を巻いてくれる。
 そして額にキスを……いたたた!
 そこもすりむいてるんだから、勘弁して下さいよ!
「てか、あの眼帯車掌は誰なんです? あれ、夢じゃないんでしょう?」
 エースは、私が汽車の中でしゃべった言葉の内容を知っている。
 夢に出入り出来る夢魔が実在するくらいだ。
 あんなリアルな感覚、とても私の妄想の産物とは思えない。
「ああ、彼ならそのうち会えるよ。俺とつきあっていたら、嫌でもね」
 ちゅっと、これまたすりむいた唇にキスをされる。
 ……介抱するフリをして胸触るな。こっちはそれどころじゃないんだから。
「それよりさ。俺は子犬でも何でもないぜ? もう少し別の言い方はなかったのか?
 俺の強さに惚れたー、とか」
「強さで好きになるんならグレイの方がよほどマシですよ……いたたたたっ!!」
 傷口をまともにつかむな! 多分そこ、骨が折れてるから!!
「リンー」
「好きな理由なんて、明確に言えるものじゃないですよ。
 あなたこそ、私のどこがいいんです?」
「うーん。俺と一緒に迷ってくれるとこ?」
「あいにくと、迷子癖は治りました! もう迷子になりませーん」
 ツーンと言ってやる。
「ええ!? そりゃないぜ! 俺一人に迷えっていうの!?」
 ショックを受けた様子のエース。ざまあ。
「それからエース。お願いがあるんですが」
「ん?」
「私がお城に住むようになったら、剣を教えてもらませんか?」
 一瞬、間を置き、エースは目を丸くした。
「ええ!? ダメだよ。君みたいな女の子! 怪我をさせちゃうだろ!?」
「怪我をしないようにです! 
 またあなたに殺されかけたら、反撃して退治できるようになるために!」
 するとエースはもっと目を丸くして、
「あ、あははははは! き、君みたいな子が俺より強くなるつもりなのか!?
 あはははは!……はは!」
 この前より大受けだ。
 そしてほんのちょっと真顔になり、
「言っておくけど、俺は教師としては優しくないぜ?
 本気で教えるなら手加減したくないし」
「死ぬ気で覚えますから」
 ブラックジョークを言うと、ニッと笑うエース。
 ……てか、また『殺されかけたら』って下りについて、ちゃんと否定して下さいよ。

「あー、本当に面白い。君といると退屈しないぜ」
 笑い疲れたらしいエースは、上機嫌の笑顔で、私の唇にキスをする。
 でも本当に良かったのかなあ。
 さすがに銃弾を弾けるレベルに到達出来るとは思えない。
 いや到達出来たとして、どれだけの鍛練を積めば良いのやら。
 勢いで口走って後悔。
「好きだぜ、リン。やっぱり迷ってる君がね」
 見破られてるし。
「さ、もう少し休みなよ。まずは傷を治さないとな」
「ええ……」
 目を閉じるとクジラの声が聞こえる。
 しゃべる扉の声が聞こえる気がする。
「……ごめん」
 私を抱きしめ、小さくつぶやく声が聞こえた。
 私は目を閉じて、ほんのわずかな幸福感に浸る。

 この人が好きだ。大好きだ。
 森で私が拾った迷子の、独りぼっちの騎士が。

 目から一筋、涙がこぼれた。

 …………

 …………

 初めて見るユリウスさんは、思ってたより怖そうな人だった。
「で、何だ? その女は」
「え、えーと……わ、わわわわ私は……リンとももも申しまして……」
 エースの背にしがみつき、ガクブルしながら言う。
「リンって言うんだ。俺の恋人で、剣の弟子。
 俺と同じで旅が大好きなんだ!」
「物好きな」
 それだけ言ってユリウスさんは眼鏡をかけなおし、時計修理に戻る。
「え」
 話が終わったみたいで戸惑うけど、
「ああ、こういう奴なんだ。ユリウス=モンレー。俺の大親友だ!」
 すぐユリウスさんは顔を上げ、
「誰が大親友だ。こいつとは仕事の上でのつながりしかない。勘違いをするな!」
「と言ってるけど、内心では俺と再会出来た感動に打ち震えていて――」
「誰が震えるか! とっとと仕事に行ってこい!!」
 うーむ。思ってたのとキャラが違うような。まあ、いっか。
「……おい、おまえ。勝手に片づけようとするな!」
 あ。無意識に部屋の掃除を始めていた。
「え? お近づきの印に掃除をしようと……」
「いらんいらん! 勝手にきれいになるんだ。掃除など必要ない!」
「そうだね。止めておいた方がいいよ。
 この子が掃除を始めたら、その場所を滞在先としてマーキングするってことらしいし」
「何だそれは!!」
 いやいや。クローバーの塔に帽子屋屋敷、ハートの城、今の国。
 私は未だ余所者で、居場所を定めず転々としている。
 でも大半はエースと一緒。旅の空だ。
「そうでなくとも、泊めてあげると滞在費の代わりに掃除や家事をやってくれるって、
顔無しの間じゃ、評判で……」
「妖精か、おまえは!!」
 あ。意外とノリがいい。そしてユリウスさん、もう一度眼鏡をかけなおし、 
「リンと言ったか。旅はエースとしているのか? 
 いや、こいつとでも、一人でも危険だ。そんな趣味は止めろ」
 しかもちょっと親切だ。
「か、勘違いするなよ! おまえのことを心配しているわけではない!
 余所者はちょっかいを受けやすいし、この世界は物騒なんだ。
 もう少し考えた方がいいと言っているだけで……!」
 定番な方だなあ。エースが好意を持つ理由が分かった気がする。
「大丈夫ですよ。クマを撃退するくらいは出来るようになりましたし」
 腰に差した細身の剣を叩くと、さらに眉をひそめられた。
『油断をしていると……』『だから女は……』と、まだブツブツ言っていた。
 けど途中でハッと我に返ったみたいで、赤面しつつ、エースに紙を突き出す。
「今回の仕事だ。三時間帯以内に仕上げろ!」
「うんうん。三十時間帯だな。分かったぜ!」
「三時間帯だ!!」
 エースが最高に嬉しそうな顔をした。


「優しそうな方ですね」
 時計塔近くの森で、素振りをしながら言った。
「だろう? 本当にいい奴なんだ」
 エースも嬉しそうだ。
 ……しかしまあ、露骨すぎる変わりようだ。
『引っ越し』が起こって、時計塔がある国になってから。
 具体的にどうと言われても困るけど、エースの安定度が違う。
 時計塔がある。親友がいる。
 それだけでストンとエースは落ち着き、機嫌が治ってしまった。
 安心すると同時に腹立たしい……ムカつく。
「リン。ほら、剣が乱れてるぜ!」
 厳しい教師は、私の剣の揺れを見逃さない。
 自分で宣言しただけあって、エースは剣のこととなると本当に厳しい。
 訓練の手合わせで、何度、腕や足を折ったことか……。
 そういう意味ではグレイの方がもっと親切に教えてくれる。
 い、いやさすがに、押し掛けてません。
 エースみたく鍛錬もふっかけてません。
 ただ、私の迷子癖がなぜか健在なのだ。
 塔から出られなくなり、仕方なく廊下で一人素振りをしていると、たいてい
グレイが駆けつけてくれる。
 そのとき、軽く指導をしてくれるのが、お決まりのパターンになったというか。
 頼み込んで一度だけ手合わせさせてもらったけど、箸にも棒にも
かからないくらい私は弱かった。
 あと素人の私にはよく分からないけど、どうもエースは、護身術中心で教えてるらしい。
『その点だけは評価してやるか』とグレイは吐き捨てていた。
 ちょっと悔しいのは私である。
 この世界の人たちのように身体能力が飛躍的にあがらないものかと、地団太踏んでいたら、
『君もいつかはそうなるかもしれないな。いつか……な』
 と意味深なことを言って、頭を撫でてくれた。
 ちょっと切なそうな、年長の友人の笑顔で。
 
 ちなみにドヤ顔で鍛錬を申し込んできたナイトメアの方は、一撃で屠れた。
 あれはちょっと申し訳なかった。


「はあ、はあ……」
 剣を地面に置き、私は汗だくで息を吐いた。
「よし、今日の鍛錬はここまで!」
 エースは軍事責任者の顔だ。
 同じメニューで、相手は汗一つかいてないのが恐ろしい。
 ちなみに今のエースは黒の詰め襟。それでも私より厚着なのに。
「こんなことで、いつかあなたを倒せるんですかね」
「あははは! まだそんなこと言ってるんだ」
 エースは言って、手で私の顎をつかむ。
 獲物を見つめるような緋色の目があった。
 ……まだ少し不安にさせる。
 次の瞬間、私を切り捨てるのではと。
 この国には、ユリウスさんがいるというのに。
「俺は変わらないよ……変われない」
 内心を見透かすように言ってくれる。

 まだ私はエースのことを全く知らない。
 そしてユリウスさんでも解きほぐせない何かを、エースは抱えている。
 あの扉の向こうにいたのは、本当にユリウスさんだったんだろうか。
 でも彼はそれを決して明かしてはくれない。
 そんな気がした。

 私の方から目を閉じると、唇が重なる。
 しかし次の瞬間、草むらに押し倒され、慌てた。
「ま、待って下さい! 私、汗かいてますから!」
「ん? 俺と君じゃ、川を探すのに何時間帯もかかるだろう? 
 それまで我慢するのはちょっとなあ」
 自分勝手なことを言い、服の中に手を入れようとする。
「ま、待って、待って!!」
 抵抗するも、体力差がある上、こっちは鍛錬直後でヘトヘトだ。
 一度侵入を許したら、あとは好き勝手されるしかない。
 相変わらず真っ昼間で。どこかも分からない草むらで。
「別れてやる……でなければ倒してやります」
 呪いの言葉を口にすると、
「あははは! 出来るものならね!」
 ああもう、服を脱がされ、風が寒いったら。
 そしてエースは私にキスをした。
「俺はさ、もうずっと前から君に夢中なんだぜ」
 と言いつつ、迷ってるんだろうなあ。
 愛の言葉をささやいた相手を、次の時間帯には突き落とすような人。
 いや、あるとき突然私の前からフッと消えてしまうかもしれない。
 でも、そんな不安定な騎士様を好きになった。
 迷うけれど、迷いまくるけど、結局戻ってきてしまう。
「私もですよ」
 私は好きでい続けてやる。
 つたないけど、道案内くらいは、きっと出来るようになるから……。
 私たちは微笑み合い、もう一度深いキスをする。


 きっとハッピーエンドではない。
 いつか私の迷子癖が治ってエースに斬られるか。
 あるいは迷子が治らず、エースに引きずられて深みに落ちていくか。
 あるいはもっと別の場所に連れて行かれるか。

 未来は誰にも分からない。

 それでも……。
 
「愛してるよ、リン」

 嘘か本当か分からない言葉にうなずき、心からの笑顔を返し、私たちは愛し合う。
 
 ずっと、ハートの騎士といる。

「私も、愛しています。エース」


 私のいる場所は、いつまでも、いつまでもエースの隣だ。


 〜終わり〜 

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