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■追いかけられまして・下

昼下がりの光も届かない。それくらい薄暗い路地裏。
通りの喧噪も届かないほど、そこはメインストリートから離れた場所です。
『お姉さん……』
助けの来ない場所で、マフィアっぽい二人に挟まれ、どれくらい経ったでしょうか。
相変わらず、私の心臓はドキドキドキと激しく鼓動を打っております。
前のヘアピンの人と、後ろの長髪の人。
抱きしめられ、吐息を吹きかけられるたびにバクバクと心臓が破裂しそうです。
しかし……しかし……。

――うう、ディーとダムにドキドキしたかったのに……!!

私がこんな奇妙な感情を抱くべき相手は、行きずりのマフィアっぽいお兄さん二人組
じゃあないんです!私を愛してくれる双子の門番にこそ抱きたいのです!!
理性に目覚めて下さい、私の恋愛感情。こんなの間違ってます!
それに、どう見たって一目惚れすべき相手じゃあないでしょう、この人ら!
何か格好も武器も、全身が物騒だし!!

そして私が声も出さず煩悶していると、二人はようやく離れました。
私を挟んだまま、私の頭上で視線を見交わし、
「どうしよう、兄弟。お姉さんを連れてすぐに帰る?」
何!?拉致監禁っすか!?こいつらマジ最低です!!
「でも地形が不安定だし、あんまり動き回らない方がいいんじゃないかな?」
――こら!早く離しなさい!チンピラどもっ!!
ジタバタしておりますと、
「ほら、グズグズしてるからお姉さんも怒ってる」
違うわっ!!
しかし、再度ギューッと抱きしめられ、はかない抵抗を封じられました。
そしてふと長髪の人が、
「兄弟。もしかしてお姉さん、『早く』っていう意味で怒ってるんじゃないかな?」
「え?そうなの?お姉さん?」
二人に見下ろされ、私は怒り心頭でブンブン首を上下に振ります。
早く離して下さい!
すると二人は顔を見合わせ、

『そっか。僕たちと愛し合うの、そこまで待てないんだ』

……は?

――……わっ!!
後ろの長髪の人に、胸を軽く撫でられ、我に返りました。
「お姉さん、積極的なんだね。嬉しいな」
――は?はあ?
ヘアピンの人も私の頬を撫で、嬉しそうに顔を近づけてきます。
「こんな場所で愛し合うのはどうかと思うけど、恋人の要求には応えなきゃね」
と、私に唇を重ねました。
……え?

今、キスされてますか?目の前にはヘアピンの人の長いまつ毛が見えます。
そう、なんですよね。唇重なってますし。あ、何か唇を舐められてくすぐったい。
何か口を開けてって言われてる気分。え?開けた方がいい流れ?
「ん……んふ……」
――ん……。
大人の舌が私の唇に割り込み、私の舌を捕らえ、絡めてきます。
強く、強引に、角度を変えてさらに奥へ。唾液の絡む音がやけに大きく。
――あれ?抵抗しなきゃいけない展開だったような……。
でも、今から抵抗しようにもいつの間にか、二人から両手首をつかまれ、動きを封じ
られています。それに何より……私の側にあまり抵抗する気がないというか。
――だ、ダメダメダメ!私に触れていいのはあの二人の子だけで……!
なのに触れられるほど、触れられた箇所が熱くなっていきます。
「兄弟。交代してよ」
そして、服の上から私の胸を愛撫していた長髪の人が、急かしました。
「ん……仕方ないなあ」
ヘアピンの人が唇から離れると、唾液が糸を引きました。
でもそれをぬぐう間もなく、長髪の人に向き合わされ、キスをされました。
――ん……あ……。
熱い。何だかすごく熱い。胸がドキドキして、全身がおかしいです。
――何で……。
いえ、違う!私は恐怖で動けないだけ!
こんな行きずりの、マフィアっぽい大人二人に一目惚れなんて、絶対ないですから!
私が好きなのは子供二人ですから!!
……心の独り言とはいえ、決して主張してはいけないことを、主張したような。
と、私の内心の葛藤を知りもせず、二人のマフィアっぽい人は、徐々に、身体的な
接触を増やしてきます。私を挟んで抵抗を封じ、服の上から胸を……。
――や……っ!
二人の手が同時に下半身に伸び、服の上とはいえ身体が震えました。
――ん……ん……っ!
羞恥にもがきますが、二人は私を解放してくれません。
「お姉さん、可愛い……本当に待ちきれないんだね」
長髪の人がクスクス笑いながら、しっかり反応している、私の胸を撫でます。
「路地裏で悪いけど、そこまで欲しがってくれるなら、男として応えなきゃね」
ヘアピンの人が、前とお尻の方を同時にいじめてきます。
その手は、今にも私の衣服を剥がしそうでして。
――ううう!
私はというと最大限の葛藤に打ちのめされていました。
――わ、私って、実は×××なんですか!?
双子で子供の恋人を持つ時点でどうかしていましたが、挙げ句に初対面で行きずりの
男性二人に迫られ、抵抗しないほどに×××だったんですか!?
こんな新しい自分はいらなかった。
でも理性とは別に、私の中の熱ははちきれそうなほど熱くなっていて、いやらしく
腰までゆらしています。
――いや、ですが!しかし!こんな場所はさすがに!!
「小さいお姉さん、真っ赤になって可愛い……」
「大丈夫。こんな可愛いお姉さんをいじめたりしないよ。優しくするから……」
耳元で妖しくささやかれ、二人の手が私の服の中に入り込もうとしました。
――いえ、でも、ちょっと待って下さい!こ、心の準備があ!!
今さらですが、ちゃんと声を出して意志表示する方法はなかったのでしょうか。
そして私が混乱のるつぼの中、欲望に流されようとしたとき。

「おい、ガキども!!仕事サボって、女とイチャついてんじゃねえよ!!」

……聞き慣れた怒声と共に、一発の威嚇発砲がされたのでした。

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