続き→ トップへ 目次に戻る ■大好きな不思議の国4 拝啓、ディーとダム。カイお姉さんです。 あなたたちと会えなくなって、幾歳月……というほど時間は経ってないですが。 いえ、時間の概念がないっぽい世界ですが……いやいや、そうじゃなくて。 とにかく、お姉さんは元気です。人里を離れすぎて、このまま山岳地帯から元の 世界へジャンプするのかと思うと、寂しいかぎりですが……。 「カイ、何やってるの?」 ――うわ!びっくりしたぁ! エースに肩からのぞきこまれ、驚きました。 後ろに立つときはそう言って下さいよ、心臓に悪い人だなあ。 ともあれ、私は書きかけの手紙をくしゃくしゃにして、そこらに放りました。 どうせ日本語なんだし。するとエースは面白そうに、 「何々?俺へのラブレター?」 そんなわけがありますか。 あんまり遭難期間が長いから、ディーとダムに手紙を書いてたんですよ。 はあ……本当に二人に会いたい。元気ですかね。ケガとかしてないかなあ。 「なあ、カイ。俺を無視しないでくれよ」 ――っ!! 間近で、耳に息を吹きかけられました。この野郎。ワザとだな……。 私が振り返り冷たく睨みつけると、エースは肩をすくめ、 「冷たい冷たい。俺たち、何度も身体を重ね合った仲じゃないか」 ――嘘八百を言わないで下さい!!一度も×××はしてないでしょうが! 「あはは。それは俺の願望だったね。唇を重ねた、の間違いだったな」 ――あ。マズい。 逃げようと……思ったその時には、肩ごしに唇を重ねられていました。 「ん……」 ――この、痴漢!変態!! 突っぱねようとするけれど、背中に回された騎士の手が、離れることを許さない。 何とか舌をもぐり込ませようと、こちらの唇に舌を這わせる騎士。 ううう、唇を端から端まで丹念に舐め、口を開かせようと舌でつついてくる。 ……ちょ!鼻をつままないで下さい!無理やり口をこじ開ける気ですか、あなた! 酸欠の恐怖に負け、うっかり口を開いてしまう。 すると、ぬるりと入りこむ感覚。 ――ん……っ! 息が止まりそうになる。エースはさらに私の身体を強く引き寄せ、ほとんど密着。 ――ダメ……っ! 熱い。探る舌を押し返そうとすれば、まるで恋人同士が舌を絡めているような形に なってしまう。エースは完全に余裕で、何度か角度を変えては、さらに舌を入れる。 ――ん……ん……っ。 どれくらいキスをされているんだろう。一分?一時間帯? 苦しげな私の息に、唾液が絡む音が混じる。私は苦しさと熱で、抵抗が少し薄れ、 いつの間にかエースにもたれる形になっている。 エースはそんな私を薄目で笑い、そして私の胸に手をのばし……。 ガサッと近くの茂みが揺れました。 ――人!?久しぶりに人間に会えた!? ハッと正気に返り、横目で見ると……。 ……見上げるようなでっけえクマさんが、茂みで立ち上がっておられました。 「あーあ。空気を読んでくれよ。クマくん。 見ての通り、俺たち、いい雰囲気なんだぜ?」 仕方ない、という感じでやっと顔を離して唾液をぬぐうエース。無茶言うなや。 追加でツッコミつつ、私も必死で口をゴシゴシする。 それに、いい雰囲気と思ってるのはあなたお一人です!……多分。 「よし、逃げるぜ、カイ。俺にしっかり捕まってな」 ――え?ちょっとエース!?……うわっ!! 視界が一気に高くなったかと思うと、私はエースに、肩に担ぎ上げられていました。 「俺は騎士だから、動物は殺せないんだ。じゃあな、クマくん!!」 ――ちょっと待ってぇ!!猛獣に背中を向けるのは……! そしてエースは猛ダッシュで道なき道を走り出した。 私は担ぎ上げられたまま、こちらを追いかけてくるクマさんと恐怖のにらめっこを するハメになったのでした……。 ディー。ダム。お姉さん、名誉のために言っておきます。 お姉さん、騎士にキスはされました。その後も何度もされています。 が、その先には行ってません。誓って何もありません。 エースは騎士だけあって、×××に関しては一応、合意を取りたいみたいなんです。 でも、そのため、たびたび口説いてきます、キスしてきます。 『合意』を引き出そうと野外で痴×行為に及ぶことも。 もちろん、お姉さん、全力で拒否してますよ。 でも遭難生活が長く、食事からテント設営から、頼り切っていることもあり、何か 慣れてきました。 そのうち吊り橋効果でよろめかないか、自分が怖いです……。 8/10 続き→ トップへ 目次に戻る |