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■もうすぐ舞踏会・上

※R12くらい

油断でした……。
カフェで楽しくお茶をして、遊園地では、久しぶりにゴーランドさんやボリスさんと
会って。双子の『恋人』だという紹介には、恐ろしくあいまいな日本人的スマイルで
ごまかしてみて。ンで、ゴーランドさんに乗り物タダ券をいただき、ボリスさんを
加えた四人でアトラクションに乗りまくって。
遊園地内のレストランで皆でお食事をして、ボリスさんと別れて遊園地を後にして。
『疲れたでしょ?休もうよ』と……予約していたらしい宿に連れ込まれましたです。
ああああ!!いい加減、学習しなさいよ自分、と。
――ディー、ダム。私はダメなんですよ……!!
必死にジタバタしてみるけど、マフィア門番の力は伊達では無い。
「お姉さん、大人しくして」
――ん……。
頭の側で腕を押さえるディー。その顔が逆さまに近づき、唇が重なる。
そしてなぜか私の力が抜けてしまう。
舌で唇をつつかれ、素直に口を開くと、舌がぬるりと中に入る。
私の舌を探すように中を探るのがくすぐったい。
優しく頭を抱かれる。やがて舌と唾液の絡む音が聞こえてきた。
「そうだよ。お姉さん。そのまま良い子にしていてね」
ダムも手を止めず、前をはだけ、下を下ろしていく。
足を開かせ、表面を指で撫でたダムがクスクス笑う。
「……もう濡れてる。お姉さん。そんなに待ちきれなかった?」
――違……やだ……っ。
ディーも私にキスを続けながら、胸を愛撫する。
――気持ち、いい……。
私が悦ぶ場所、触り方。いつの間にか、二人はすっかり覚えてしまったらしい。
もう完全に立場は逆転してしまい、私は二人に、いいように全身を弄ばれる。
「カイお姉さん、大好き。その顔は、僕ら以外に見せちゃダメだよ?」
「愛してる、カイお姉さん……絶対に、絶対に離さないから……」
二人分のキスと愛撫を受け、私はただ快楽に声を上げていた。

…………

――つまり、一緒にいるからいけないんですよ。
シャワーを浴びて出て来た私は、そう結論づけました。
いやあ……昼に寝てるもんだから、双子より先に目が覚めちゃいまして。

いくら元の世界の道徳観を持ち出し、自分を叱咤しても、ニコニコ笑う子どもが目の
前にいたら、切り出す別れも切り出せない。ならどうすべきか。
――心情的にほだされるなら、物理的に距離を置くのも有りかもしれないですね。
例えば帽子屋屋敷を出るとか……。

――この子たちを置いて?

ズキッと痛みを感じ、ベッドをチラッと見る。
「カイ……お姉さん……」
「お姉さん……どこ……?」
ベッドの上の双子は、ぐーすか寝て、ときおり寝言で私の名前を呟いていました。
いえ、呟くだけじゃない。もぞもぞ動いて、私を探しているようです。
前にも、同じことがあったような気もします……変わってないですねえ。
――ディー、ダム。お姉さんはここですよ。
肩を落として、ベッドに歩いて行く。
手を伸ばし、二人の髪に触れると、はっきり分かるくらいに双子の顔が緩む。
『お姉さん……』
――はあ。可愛いですねえ……。
大きなため息。この子たちが変にませていなかったら、元の世界に戻るまで、ずっと
『お姉さん』として、そばにいられたのに。

再び眠りの世界に入った双子から離れ、私は歩き出しました。
――ちょっと、散歩に行って頭を冷やしてきますか。
部屋のカーテンの向こうは、朝の時間帯みたいです。
散歩でもすれば、良い考えが浮かぶかもしれません。

…………

風に吹かれて街を歩く。
行き交う人たちは、楽しそう。店の人たちが客引きをする声が通りに響きます。
――ディーとダムに、何かおみやげを買いますかね。
いちおう手持ちはあるんです。
ふところに、双子から『お姉さん、好きな物を買ってね』と渡された大金が……。
――て、何、当たり前の顔で、子どもから貢がれてますか、私!!
罪悪感に頭を抱えるところでした。お金、あとでちゃんと返さないと。
そうだ。子どもと恋人になるのも論外ですが、それ以前に自分がしっかりしないと。
いつ元の世界に戻れるか分からないですし、それまで自立して生きないといけない。
――何か住み込みのアルバイトでも出来ないですかねえ。
しかしわたくしコミュ障。
単に話が出来ないだけなら、どうとでもなるのですが、どうもこう覚えが遅くて。
そしてふと石段につまずきそうになる。

――うわっ!
危うく踏みとどまる。
我に返って周囲を見ると、大きな塔に続く短い石段が見えました。
ずっと平らな道を歩いてたから気づきませんで。
物思いにふけっているうちに、宿からずいぶん離れたところまで来たようです。
いかん、いかん。双子が起きて、私がいないと知ったら悲しむでしょう。
そろそろ戻らないと。

――…………。

目の前の建物を見上げる。ここは行ったことのない場所です。
人がほとんど近寄らない変な場所。
威厳のある、大きな塔だということは分かるんですが、はてさて何なのか。
――い、いえいえ。本当に戻らないと。危険な場所かもしれませんし。
どうしても気になるなら、双子を連れてきてから、一緒に探検すればいいんだし。

――……でも、ちょっとだけ。ちょっとだけ、ですね。

もしかすると山積みの問題から逃げたかったのかもしれません。
私はひょいひょい石段を上がり、まっすぐ塔に行くと、扉を開けて中に入りました。

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