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■どうにか解決・下

「畜生!なめやがって、小娘が……後悔させてやるっ!」
侮辱されたと思ったのか、リーダー格の男が、今度こそ私を撃とうとした
……けれど、
「それじゃ!遠慮無く!!」
「ぐっ!!」
真横からピンクの風。そして吹っ飛ぶリーダー格の男。
男を蹴った反動を利用し、軽やかに一回転して着地するボリス。
「……へ?」
何が起こったのかと呆気に取られていると、
「これだけ大勢の気配に気づかない馬鹿共に侵入されるとは……。
本当に許しがたいですね」
銃声。そして、私を羽交い締めにしていた男がゆっくりと倒れる。
「……!!」
振り向くと地面に倒れた男と……赤。
それから目をそらすように顔を上げると、黒ウサギの宰相閣下がいた。
「まあまあ。わたくしの領土でお客様を危険にさらして申し訳ありません」
その後ろには、楽しそうに笑うクリスタ。
「陛下、お下がり下さい。今すぐに全員片付けます」
シドニーは感情のない声で銃を構え直す。
「……や、役持ちどもだ!」
「う、撃て!こうなったら一人でも役持ちを道連れにしろ!!」
残った賊たちがヤケになったように銃を乱射しはじめる。
「う、うわ!!」
「伏せてろ!カイ!!」
木立の向こうから現れたのはジェリコさん。
あの優しいご様子からは想像もつかない、冷徹な瞳で、銃を撃つ!
「ユリウス!放せよ!俺も参加したい!!」
「うるさい!おまえも伏せていろ!!全く、下手な好奇心を起こして!」
暴れるエース君を押さえながら、ジェリコさんの横に立って応戦するユリウスさん。
「う、う、撃たれる!!グレイ、助けてくれー!!」
「てめえもウロウロしてんじゃねえよクソガキ!
いいか!!俺から絶対に!離れるなよ!!」
私と同じく慌てふためいているナイトメア君と、それを頼もしく
守って戦う、この世界のグレイさん。
そう。あちこちから役持ちが現れたものだから、悪漢たちは完全にパニックに
なっていた。でもヤケになって銃を乱射しまくるから、とても危険。
私はすくんで立ちつくしているしかない。
そして――私を庇うように、目の前に大きな背中が二つ、立ちはだかった。

「カイお姉さん!大丈夫!?」
「もう安心だよ、僕らが守るからね!!」

私のそばにも、ナイトが到着した!

…………

…………

ダイヤの城のガーデンパーティー会場。
そこに役持ち一同が集まっていました。
「つ、つ、つ、つまり、私が人質になってからの一部始終を、み、み、
皆さんはごらんになっていたと……?」
私は双子に挟まれ、これ以上にないくらい身体を縮こませ、顔を真っ赤に。
「うん。僕らは気づいてたけど、危険だったからね」
「向こうも気配に気づかない馬鹿の集まりみたいだったから、皆には待機
してもらってたんだよ」
平然と応えるディーとダム。私は恥ずかしくて恥ずかしくて身体を震わせ、
「でも、何だって、皆さんが私なんかの後を追って……」
役持ちの何人かは顔を見合わせ、何人かはニヤニヤしています。
まずボリスさんが、
「えーと、俺がついていくのは普通だよね?だって友達とその彼女が
喧嘩してるんだから。またモメるなら、間に立ってあげようと思って」
ああ、麗しきかな、友情。
「わたくしは、その、あなたたちの恋の行方が気になって……」
……女王様はなぜか子供に戻っていて、ホホっと上品に笑う。
「陛下のご様子を見にうかがったら、何やら痴話喧嘩の野次馬に行こうと
していらっしゃる。お諫めするため、ついていきました」
完璧な無表情でシドニー。
「パーティーなんて退屈だなーと思ってたら、面白そうなことが起こってる
みたいだったからさ、宰相さんの後についていくことにしたんだ!」
快活に笑うエース君。
その後を追ってきたのだろうユリウスさんは、特にコメントがないのか、こめかみを
押さえ、頭痛をこらえている風。
次にナイトメア君が、
「私は領主席にいたんだが、座りっぱなしで気分が悪くなってきたんだ。
で、グレイに連れられて、救護室に行こうとしたら、何か皆してどこかに
行くのが見えたから……」
「行くなって言っても聞きやしねえ。行った先で倒れられても困るから、
俺も様子を見に行った」
何とも言えない表情をするグレイさん。最後にジェリコさんが、
「いつまで経っても誰も戻ってこないから、心配になって会場に
行ったんだ。そうしたら役持ちがそろってゾロゾロ歩いてくから……」
頭をかきながら笑うのでした。

私は顔から火が出る思いでした。

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