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■仲直り(してない)

恐怖を感じて後ろに下がると、靴の裏にびちゃっと赤い水の感触。
「お姉さん……」
「カイお姉さん……」
さっきまで、以前と変わらず私にまとわりついていた双子。
今はまた、あのときのように冷たい目をしている。
エースとの仲を誤解し、私に不信感を抱いたときのように。

「お姉さん……やっぱり、僕らが怖いの?」
「僕らのことが、嫌い?相手に出来ないの?」
――ちょ、ちょっとちょっと!
双子とは思えないネガティブさです。私は必死に首を左右に振りますが、
「じゃあ、なんで口をきいてくれないの!?」
「本当は僕らのところに帰るのが嫌だったの!?」
あ。何かキレてきた。
しかもこちらが否定するほど疑いが強くなるという、負のスパイラル発動です。
けど、ディーとダムがちょっと怖いのも事実だし……あー、どうしたものか。
「くそっ!」
あーあ。ディーは腹いせのように、転がった不審者の方を蹴飛ばす。
しかし不謹慎だと叱ることも、誤解だと言い訳することも出来ないです。
――ああ、あの、あのですね……。
とりあえず以前のように身振り手振りと表情で、どうにかしようとしましたが、
「そんな怯えた顔で見ないでよ、カイお姉さん」
ダムは悲しそうに私を見下ろす。表情、失敗です!
「お姉さんが僕らを嫌いだったっていうのは十分、分かったよ」
「本当は、再会したとき、まだやり直せるんじゃないかと思ったんだけど……」
うわ、恋愛ENDへの選択肢を蹴りましたか?私。
あとおまえら、ガキのくせに、ませすぎなんですよ。
――わっ!
突然、ディーに手首をつかまれ、強引に引き寄せられました。
そのまま胸にぎゅーっと抱き込まれます。ぬっくいぬっくい。
しかし、流れが流れなので、カイさん、ちょっと震えます。
「カイお姉さん……」
ディーが私を抱きしめながら、私の背中を撫でる。
「兄弟、どうしよう。お姉さん、こんなにブルブル震えちゃって……」
するとダムが背後に立ち、私を後ろから抱きしめます。さらに暖かい。
「お姉さんが好きになってくれないなら……お姉さんの心臓をもらうしかないよね」
やばい。現実逃避してる場合じゃありませんよ!
しゃべれないと、このままでは恐ろしいことになります。
――そ、それなら仕草で伝えます!!
私カイ、サンドイッチされた状態で背伸びし、ディーに唇を重ねました。
もう状況とか、床にどなたが転がってるとか、スルーします!

「……っ!!」
ディーはさすがに驚いたよう。整った顔で目を見開き、でも拒否はしません。
――ん……。
「…………」
久しぶり。だけど大人になって、どこか新鮮なキス。
――ディー……っ!
最初はお互いに警戒したような、ぎこちない、ついばみあい。
でも気がつくとディーの方が夢中になり、唇を強く押しつけられている。
「ん……ん……っ……」
――ちょ、ディー、苦し……。
息継ぎさせない気ですか、という勢い。痛いくらいに強く強く抱きしめられ、強引に
引き出された舌を絡め取られ、貪られる。でも悪さをするのはディーだけじゃない。
――ちょっと……ダム、あなたも何を……!
「お姉さん、ずっと、お姉さんに触れたかった……」
それはいい!それはいいのですが!腰、触ってませんか!?
貴様ら、元の世界なら通報ですよ!?
ん……腰に触れ、後ろの方に手が回り、いとおしげに撫でられる。
――ん……んん。
呼吸がちょっと苦しい。でもディーは許してくれない。
舌を執拗に絡められ、私にも舌を出すように、舌先でつついて促してくる。
――や……ん……。
痛い痛い。上を向かせられ、さらに深く舌を押し入れられる。
唾液が唇からこぼれるけど、未だにディーは口づけを止めてくれない。
けどいつの間にか私も、ディーを強く抱きしめ、身体を押しつけ、どうにか思いを
伝えようと躍起になっている。
――大好きです。あなたたち二人が……!
「お姉さん……」
……て、ダムの手が服の間から潜り込む!
さすがに直接ではないけど、下着の上から……ん……や……。
気持ちよさと恥ずかしさの間で、何となく腰がもぞもぞと動いてしまう。
「大好き……」
ダムにうなじに口づけられ、ゾクッとする。髪を指で遊ばれ、一房持ってキスを
された。隙間も無いほど身体を密着させられ、互いの体温、身体の音が伝わる。
そしてディーの手も私の胸の方に伸び、ダムはというと何か私の下の服を引きずり
下ろそうとしているような……。
――い、いえ、あえて拒絶はしませんが……。
あ、あの。場所、変えませんか?
ここ、廊下だし、××が転がってらっしゃいますし。
とりあえず『いやいや』と首を振ると、ディーはやっと唇を離してくれました。
ダムも私のウエストにかけた手を止める。
「兄弟。お姉さん、落ち着いたみたいだね」
「僕らを嫌がらないし、やっぱりそんなに嫌いじゃないの?」
ダムに言われ、私は笑顔でうんうん、と何度もうなずきました。
「お姉さん……!」
抱きしめられ、今度はダムとキス。でもディーほどは長くありません。
ダムはすぐに顔を離し、私の頭越しにディーと話します。
「兄弟、どうしよう。やっぱり無理だよ、こんな可愛いお姉さんを×せない」
「僕もだよ、兄弟。こんなに大人しくて小さいお姉さん、×すなんて無理だ」
……綱渡り状態ではありましたが、どうにか最悪の危機は脱したようです。
二人にぎゅっとされながら、ほーっと息を吐いていると、

「やっぱり、×を斬って、二度と歩けないようにするしかないよね」
「僕もそう思っていたところさ、兄弟。そうすれば屋敷から出られないしね」

……待て。今、なんと言ったおまえら。
しかし二人は決意をこめた瞳で自分たちの斧を見ています。そして私に微笑み、
「大丈夫だよ。大好きなお姉さんなら、僕ら、喜んで面倒を見るし」
「痛くないように一瞬で終わらせてあげるからね」
いえいえいえ、あなた方のそれ、『痛くない詐欺』ですから!
最初に斬られたとき、すっげえ痛かったんですよ!?
と、どうにか声帯機能を回復させ、ツッコミを入れようとしていると、
「でもその前に……」
「お姉さんとゆっくり愛し合いたいよね」
と、両側から私の両腕を取って歩き出しました。
うわ、ちょっとだけ足が宙に浮く!い、いえ、そんな場合じゃない。
――ていうか、やることはやる気なんですね、あなたたち……。
近くの客室をまっすぐ目指す二人に、肩を落とす。

あと、会合はいいのかなあ……。はあ。

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