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■騎士は療養中5

「……ぅ……」
エースの顔が歪む。快感の反応ではなく傷の痛みだ。思わず手を止めると、
「ユリウス、俺の怪我のことは、気にしなくていいから……」
下からエースが見上げてくる。熱に浮かされているようであり、思い通りに
ならない身体に苛立っている風でもあった。
「だが……」
「ユリウスの、好きにしてくれて、いいから……」
常とは違う弱々しい声。だがその声に、逆に本能が動かされる。
「後悔しても遅いぞ。本当に、好きにさせてもらうからな、いくら痛がっても
止めないからな?」
念を押すように言うと、エースは嬉しそうに何度もうなずく。
「この、馬鹿が」
ユリウスはエースの上着のボタンを外すと、傷に触れないよう、その胸に触れた。
最初は遠慮がちにおずおずと、だが次第に欲望に動かされ、肌を乱暴に舌でなぞる。
いつもとは逆に、今回はあまり動けないエースは、
「ユリウス……ユリウス……」
と、震える手でもどかしげにユリウスのシャツをつかみ、求めてくる。
なだめるように唇を触れあわせ、優しく抱きしめてやり、上着のボタンをさらに外し、
胸の突起に舌を這わせる。騎士がビクッと反応するのが心地良い。
「ダメだ、もっと強く……ユリウス……」
頭をかき抱かれ、強く押しつけられる。
少しでも満足させようと甘噛みし、出来る限り舌を使っていると、エースの声が艶を
おびてくる。ユリウスが自身のシャツのボタンも外しながら、エースの下半身を
見ると、すでに立派に起ちあがっていた。
「エース、もう少し我慢しろ」
いつも翻弄される自分が逆にエースを翻弄している。そう思うとユリウスは少し
加虐的な気分になってきた。
ゆっくりと股間を撫で上げ、ズボンの生地がじっとりと湿るまで焦らす。
騎士は頬をうっすらと染め、ユリウスを見上げる。
「ユリウス……そんなにいじめないでくれ、よ……」
そう口をとがらせる彼は、年相応、いや年より幼いというか、ともかく本来の
この青年の顔になった気がした。つきあいが長いが初めて見る顔だった。
ユリウスは何とはなしに、もっと色んな表情のエースを見たくなった。
求められるままに衣服を引きずり下ろし、すっかり硬くなったモノに手をそえ、上下に動かす。
「あ……ああ……」
屈強な騎士がのけぞり、切なく目を閉じる。
素直な反応にユリウスも熱くなってきた。
「そんな声を出すな。もっと……声を出させたくなる……」
下衣を完全に抜き去り、少し身体を抱き上げ、上も引きはがす。
いつもとは逆に自分が服を残し、騎士が一糸まとわないでいる。
だが、ところどころに巻かれた包帯とにじむ赤が痛々しい。
それを見透かしたように、
「ユリウス、今は俺の怪我のことなんか考えるなよ。それにもうすぐ治るんだし……」
エースの方が傷に頓着しない。痛いだろうにユリウスの首にすがり、熱い声とともに
抱き寄せてくる。激しく求められていることは嬉しく感じるが、
――しかし、ここからは……。
エースの目を見ると、静かにユリウスを待っている。
「くそ……どうなっても、お前の自業自得だからな」
それだけ言うと、ズボンのポケットから小瓶を取り出す。
少し手が震えたのは興奮からだと思いたい。いつもエースにどうされていたか
思い出しながら、少しずつ指を後ろにうずめていくと、
「……っ……痛っ……」
思ったとおり、異物の挿入にエースが声を上げる。ユリウスは手を止め、
「だから言っただろうが。ここでやめておくか?」
だがエースは頑なに首を振る。
「いい、続けてくれ……ユリウスだって、いつも、されてる、だろ……」
妙な対抗心というか、相手が耐えられているなら自分も耐えられないはずがないという
理屈らしい。仕方なくユリウスも隘路(あいろ)を慣らす作業に専念する。
「ん……ユリウス……」
額に汗が浮いている。
身体を強ばらせすぎ、包帯の下に新たな赤がにじみ出しているのが分かった。
だが今、止めるといっても聞かないだろう。
――いや、私が止めたくないだけか。
見るまいとしても遅い。
男の本能に目覚めた身体は騎士に負けず劣らず硬くなっている。
このまま突き進みたい、この男を思う存分に貪りたい。
だがそれは相手に過度な負担を強いることだ。
ユリウスは何とか欲望を抑え、エースを慣らしていく。
「そろそろ、いいか……」
冷静さを装ったつもりだが、我慢の限界だという方が近い。エースはというと痛みと
快感の狭間といった様子で、もはや声もなく、求めるままに手をのばしてくる。
ユリウスはその手に軽くキスしてやると、自分の前をゆるめ、先走りでしたたる自分の
×××を出す。さすがにエースも顔に緊張を走らせた。ユリウスはなるべく優しく、
「大丈夫だ。すぐ、終わらせてやるから……」
「いや、いい……ユリウスの、好きに……早く……」
限界が近いのはエースも同じのようだ。
ユリウスは足を抱え、後ろにあてがうと、慎重に、ゆっくりと沈めていった。
「あっ……ああ……っ!」
エースが叫ぶ。一度目は侵入の痛みに、二度目はそれでのけぞったことによる
傷の痛みに。その声にユリウスは耐えきれず、
「エース、やはりやめよう。どうしてもイキたいのなら口でしてやるから……」
「いい、続けてくれ、俺、大丈夫だから……」
もはや意地だ。だが、痛みに耐えるエースの顔にどこかゾクリとする。
欲望のためか早く終わらせてやりたいからなのか、自分でも分からないうちにユリウスは動き出した。

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