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■時計屋争奪戦6

「時計屋、そのままでは辛いだろう。俺に任せてくれ」
「は……はあ?」
「ひどい目にあっているんだな。本当にひどい変態どもだ」
「……お前も新たな一人に名を連ねようとしているんだが」
監獄に連れ去られかけたとき助けてくれたことには感謝するが、最終的に身体を
要求するのなら彼らと同レベルだ。
「だが、お前だって、そんな格好をしているから……俺はてっきり……」
ユリウスの額に汗が浮かぶ。
――もしや、服を直さないのは『待っている』と思われたのか?
言い訳を口にする前に、グレイはユリウスに唇を重ねてきた。
「ち、ちょっと待てグレイ……ん……」
時計の音が重なるほど強く抱きしめられ、深く口づけられる。
舌の絡み合う淫猥な音が響き、グレイの手が愛おしくて仕方ない、というように
ユリウスの背を撫でる。それだけで身体がビクッと動き、声が漏れる。
気がつくと何度目か分からないが草むらに押し倒され、グレイの手で下半身を
絶え間なく刺激されていた。
「ん……あ……」
羞恥と気まずさに何とか止めさせようとグレイの手に己の手を添えるが、
「そんなに急かすな時計屋、心配しなくともお前のいいようにやってやるさ」
黄色の瞳が意地悪く輝く。首筋の爬虫類までからかうように尾を振ったと感じた。
「やめ……離せ……」
「なら一人で慰めるか。終わるまでじっくり観察させてもらおう」
「なっ……」
手を離されかけ、慌てて押さえる。グレイは心得たように、
「どうした?時計屋。どうしてほしい?」
先に熱くなっている分、こちらが不利だった。
だがグレイに刺激され、熱は我慢出来ないほど高ぶっている。
「時計屋、どうしてほしいんだ?はっきり言ってくれ」
耳元で低くささやかれる。同時に根元から先端まで一気に扱かれ、思わずのけぞり
声を上げてしまった。口を慌てて押さえたところで遅い。
グレイは笑みを浮かべてユリウスを見ている。先端からあふれる汁で手を汚されて
いるのに頓着する様子もなかった。そして先端を指の腹でこすられ、限界だった。
「ぐ、グレイ……その……だ、抱いて…………ほしい」
「そこまで頼むなら、仕方がないな」
グレイが笑った。
すぐに後ろにぬめるものが塗りつけられる感覚がし、それを潤滑油代わりに、
グレイの指がゆっくりと侵入する。ユリウスは痛みを感じたが、待ち望んでいた
感覚でもあるので、じっと待った。やがて十分に慣らしたのだろう。
グレイが自身の前をゆるめ、外気に出したモノをユリウスの後ろにあてがう。
「時計屋、行くぞ」
「ん……っ!!……つ……」
ゆっくりと熱く硬いモノが埋め込まれ、足を抱えられ、動かれた。
「あ……あ……」
痛みにやや正気に戻ったとしても一切の抵抗は不可能だ。
ユリウスは汗を流し、服を握りしめ、痛みと、それを押しのけるように
わき上がって来る快感に耐えた。グレイはそれを見逃さず、容赦なく
腰を打ち付ける。腰を引かれたかと思うと奥まで叩きつけられ、そのたびに
甘い悲鳴が漏れた。
わざと音を立てるように揺さぶられ、足を無理やり開かされ、前を強引に刺激され、
達しそうになっては必死に耐える。それを見ながらグレイは、
「本当に、お前は……」
あとはよく聞き取れない。打ち付けられるたび、喘ぎ声をたて、快感の放流を押さえる
だけで精一杯で、冷静に考える余裕がない。
「誰にも、譲りはしない……俺だけの……」
そう言って、一際強く腰を打ち付けられる。
「時計屋……時計屋……――――!」
名前を呼ばれた。
それで限界だった。ユリウスは声を上げ、白濁したものを放った。
同時に内側に熱いものが放出されたことを感じる。
ゆっくりと腰を引きながら、グレイはユリウスの髪を撫でる。
「愛してる」
そう言って優しく微笑んだ。
――本当におかしなクリスマスだ。
災難と表現するほかない。だが、ほんの少しは楽しかった。
グレイに抱きしめられながら、ユリウスは目を閉じた。

そして、はた迷惑な争奪戦は幕を閉じたのだが――。

「うっかり珈琲豆をもらって、あんなことになっただと!?」
「あ、ああ」
グレイは深々とため息をつき、
「あのなあ時計屋、今どき若い娘だってもう少し警戒心はあるぞ?」
「だがいきなり渡されたし、あんなことになるとは――」
「なってからでは遅い。俺が現れなかったらお前は今も監獄でいたぶられていたんだぞ?」
「い、いや、その件に関しては感謝してるが、しかし……」
「いいか、正しい交際のあり方とは――」
――お前がそれを言うか?
だが反論するだけ説教が増えるだろう。
ある意味、自業自得だとあきらめてユリウスはため息をつく。
塔までの帰り道、延々とグレイから『正しい”同性”交友』について説教されたユリウスだった。

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