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■雪山とジョーカーさん・下

「い、いつから……」
「時間帯が変わったあたりかな。暖かくなったから火とコートが暑くなっちゃって。
それで目を開けたら、横でサカってる誰かさんがいるんだからさあ……」
「…………す、すまん」
「君が変態だとは知ってたけど、隣で人が寝ているときくらい我慢したら?」
「返す言葉もない……」
変態呼ばわりには反論したいが、この状況では余計からかわれるだけだ。
穴があったら入りたい。コートを引き、羞恥にただただうつむくしかない。
「全くだよ。言ってくれれば協力したのに」
「――は?」
聞き返す前に、やんわりとジョーカーに抱きしめられる。
「お、おい、ジョーカー」
「雪山で身体温めあうなんて、ネタとしてあまりに定番すぎるから我慢してたのに……」
言いながらジョーカーはユリウスの顔を両手で引き寄せ、口づける。
今しがた晒した醜態のため事態についていけなかったユリウスだが、ジョーカーの
身体の熱を感じ、懐に忍び込んだ手が胸の突起に触れ、ようやく目が覚めた。
「お、おい!何を考えている!」
「それ、俺も同じこと言っていいかな」
「こんな場所で……天候もよくなったというのに……」
「だからそれ、俺も同じこと言っていいかな」
「……ええと、その……」
弱みを完璧に握られた。しかも羞恥で一旦萎えたものが、再度起ちはじめている。
「君が俺の隣でしてたこと、ジョーカーや処刑人にバラしてほしい?」
「…………………………好きにしてくれ」
「素直でよろしい」
笑うと、素早い手つきでいつの間にかはだけた胸に舌を這わせる。
「ん……」
先端を軽く噛まれ、声が出る。音を立てて舌でしつこくねぶり、また歯を立てる。
ユリウスは洞穴の壁に背を預け、白い息を吐く。
だがいつの間にか焚き木の火は消え、昼の時間帯とはいえ寒気が肌を刺す。
本能としてはこのまま続けたいが、やはり性欲より生存が優先だ。
「おいジョーカー、やはり早く山を降りたほうが……」
「自分だけ楽しんでおいてそれはないんじゃないか?でも確かにそうだね……」
非難がましい口調ながらも、割合冷静なジョーカーは顔を放す。
ユリウスはホッとして立ち上がろうとし、突然グイっと頭をつかまれる。
そのまま前のめりに下げられ、危うく地面に額を激突しかける。
「おい……」
抗議に顔を上げると――
「うん、だから早く終わらせようか」
これまたいつの間に出したのか、ジョーカーの×××を眼前につきつけられ、
げんなりする。
「拒否権はあるか?」
「ははは。ないねえ」
寒さに震えていた弱気な姿はどこへ行ったのやら。
だがある意味ジョーカーらしいジョーカーが戻って安堵する気持ちもある。
ユリウスは渋々ソレをつかみ、ゆっくりと口に含むと舌を這わせ、頭を動かし出す。
ゆっくりと、徐々に強く、舌を使い、適度に刺激してやる。
「ん……」
「……ぅ……」
悪くはなかったのか、ジョーカーに頭をつかまれ、揺さぶられる。
口内のモノは順調に育ち、ユリウスは先端から溢れるぬめる液体を音を立てて啜り上げた。
ややあって口からそれが引き抜かれ、粘液が糸を引く。ジョーカーは笑いながら、
「ユリウス、ちょっと上手くなった?」
「教育熱心な奴らに囲まれているからな」
ジロリとジョーカーを睨むと、
「はは。俺、置いていかれそうで怖いなあ」
「安心しろ。私に触れる者全員ときれいさっぱり絶縁する予定だ」
別れ話は何度となく進めているが、役持ちというのは大概聞く耳を持たない。
おかげでユリウスの心身への被害が拡大するばかりだ。
「役がらみの人間関係を断ち切るのは難しいよ。まあ、俺は陰ながら君を応援するけど」
「そう思うなら今すぐ、それをズボンの中に納めろ!」
だがジョーカーはユリウスをやんわりと押し倒し、下を下着ごと膝まで引きずり下ろす。
寒気に出されたユリウスのそれは、寒さに萎えそうになりながらもしっかりと存在を
主張している。ジョーカーに手を添えられるとビクッと震え、上下に刺激され、
湿り気を滴らせる。ユリウスは熱くなる身体をよじらせ、
「おい……早くしろ」
「情緒がないよなあ。せっかく外でやってるのに」
「雪山に情緒も何もあるか!」
「ああ、君、野外慣れしてるんだっけ。
変態の恋人を持つと大変だよね。あ、変態同士気が合ってるのか」
煽りやからかいというより本当に納得したように真顔で言われ、内心傷つく。
だが後ろに手をやられ、ゆっくりと指を入れられると反論の言も失せる。
しばらく慣らされ、いい加減にユリウスが達しそうになったところで、
「それじゃあ行くよ」
「わざわざ言わなくていい!」
それでも後ろにあてがわれ、殊勝に待ってしまう。
「ん……」
ゆっくりと挿入され、痛みと快感に声が漏れる。
置くまで挿れたジョーカーはユリウスの腰を支え、ゆっくりと動き出した。
思わず息を吐き、背をのけぞらせる。
慣らされた箇所を抉られ、擦られ、うめき声を上げた。
するとそれに煽られるようにジョーカーも次第に動きを速くし、ユリウスも身悶える。
「はあ……はあ……」
「はは、こういうのも……悪くないね」
「ん……」
ジョーカーの手がユリウスの×××をつかみ、扱き出す。
「あ……あ……」
前と後ろに激しい刺激を受け、快感に腰が揺れる。
「はあ……はあ……」
汗が流れ、冷気さえ気にならない。二人は互いに快楽を貪り合うことに集中し、全てを
忘れた。やがてジョーカーの突き上げが激しくなり、ユリウスも合わせるように
身体を動かす。
「ユリウス……」
「はあ……ああ……」
瞬間、大量の白濁したものを内側に放たれ、同時にユリウスも達して上に放ってしまう。
「はあ……はあ……はあ……」
ジョーカーがユリウスの上に覆いかぶさり、ユリウスはそっとジョーカーを抱きしめ、
口づけをかわした。

「はあ……雪だね……」
「ああ、雪だな……」
「…………」
「…………」
非力な二人は沈黙する。あの後洞穴を出発したものの未だ人里が見えない。
空は再び夜に変じた。雪は降りしきり、風まで吹いてくる。このままだと吹雪くかもしれない。
「だから、変な行為にふけらず出発しようと言っただろう!」
「最初にしていたのは君だろう!君が変に俺を煽るから!」
「勝手に曲解したのはお前だろう!」
「いや君だって!」
言い争い、二人同時にため息をつく。
最悪だ。もはや洞穴すら見つからない。ビバークしようにも両者とも知識がゼロだ。
変に汗をかいたおかげで身体も冷え、寒さのせいだけではない悪寒も感じる。
ジョーカーも平静な態度こそ変えないが、状況が逼迫(ひっぱく)しているのは
お互いに分かりきっている。
――……洒落にもならない人生の終わり方だな。
諦めて肩を落としたとき、
「あ、ユリウス……!」
「!!」
ジョーカーが指差す方向に灯りが見えた。ユリウスは希望に顔を輝かせ、
「街か!?近いのか!?」
「いや、でも変だな。灯りが一つで――」
雪中を駆けるように二人は近づき、
『………………』
テント、だった。中からは聞きなれた鼻歌が漏れてくる。
誰がいるのかは確認するまでもなく明白だ。仕事はサボってきたらしい。
「どうする……?」
「ある意味、ここにいる方が安全じゃあ……」
二人でぼそぼそ会話するが、選択の余地がないことは分かりきっている。
テントは冬山登山仕様の頑丈な造りだ。
中からはシチューの美味そうな匂いまでする。
野宿や遭難のエキスパート(!)である奴と一緒にいる限りは心配はいらない。
だが、彼は冬山の寒さより恐ろしい存在だ。
そして余裕を取り戻したジョーカーもまた、奴に劣らず危険な相手に戻るだろう。
――はあ……街に出るんじゃなかった。
ユリウスは平穏に別れを告げ、ジョーカーと一緒にテントの扉を開けて中に入る。

そして、また新たな遭難が始まった。

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