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■眠りネズミの時間4

「はじめにどうすればいいのかな。まあいいや、ちゅうしよう。そういえば
俺のものなのにちゅうしてなかった。ちゅう……」
唇を塞がれる。本当に唇を合わせるだけの拙すぎる口づけだった。
舌を入れられているわけではないので噛んで抵抗も出来ないし、そもそも腕を上げる
ことさえ億劫だ。そういえば、何だかんだでここに来て水しか口にしていない。
「それから、どうすればいいんだろ……服、脱がそうかな。うん、そうしよう」
あまりにも簡単に言われ、さすがにへたばっている場合ではないと気づく。
だが起き上がる前に何かが視線の端に光った。
それが何か分かったとき、ユリウスは心底からゾッとした。
「うん、君はずっとここにいるんだもの。服なんかいらないよね」
そう言って、ピアスは手にした刃物でユリウスの上着を切り裂いていった。

…………

眠りネズミは最後の服の切れ端を捨てると嬉しそうにユリウスに笑った。
「うん、これで余計なものはなくなったね」
「…………」
恐ろしい、という感情が己の内にあると思いたくはない。
だが衰弱しすぎて今さら時間を進めることもかなわない。
ネズミの巣に連れ込まれ、部下の騎士は自分の行き先を知らない。
助けは何一つ期待出来ない。
そして誰も彼もが狂った世界で、一際強い狂気を内包する眠りネズミ。
ユリウスの服を切り裂いたネズミは刃物と最後の服の切れ端を床に放り捨て、
じっくりと少年の身体になっているユリウスをなではじめる。
「本当に可愛いな。俺が大事にしてあげるからね」
繰り返し呟いては抱きしめ、口づけた。
――汚いネズミなど、誰が……。
ネズミというだけで特定の種族を差別したくはない。
したくはないが、このネズミには仕事で甚大な迷惑を被っている。
オマケに血生臭い意味での『後始末』を専門としている。好意を抱けるわけがない。
しかし、このネズミは見かけによらず力が強い。
たちまち苦しくなるが、眠りネズミは気づかずにユリウスの身体を舐め始める。
「んっ」
胸の突起をなめられ、思わず反応する。
「あ、ユリウス、ここ気持ちいいの?こうされるの好き?」
眠りネズミは嬉しそうに同じ箇所に何度も舌を這わせる。
技巧も何も無く、ただひたすらに舐め続けるだけの動物の舐め方だ。
それでも同じ箇所を何度も刺激され、次第に顔が赤くなってくるのが分かる。
「ふふ。ここが大好きなんだね。俺も好きだよ」
言いながら、眠りネズミは帽子を取り、服を脱ぎだす。
「やっぱり直接触れた方がいいよね。俺も君に舐めて欲しいし」
声が出せないなりに嫌がる素振りをしようとするがどうにもならない。
やがて服を全て脱いだネズミがのしかかってくる。
肌が直接触れ合うと、眠りネズミの高い体温までが伝わってきた。
ネズミはしばらくは肌を直接密着させて満足していたが、すぐに、起き上がる。
ユリウスも無理やり引き起こされ、眠りネズミの足の間に座らされる格好になる。
「ねえ、俺も舐めてあげたから、ユリウスも俺を舐めてよ」
そうして、顔をネズミの胸のあたりに押し当てられる。
最初はユリウスも口を引き結んで抵抗していたが、
「ねえ、舐めてよ……ダメ?……俺のものなのに、言うこと聞いてくれないの?」
ネズミの声がやや低くなり、ユリウスは内心焦る。
狂ったネズミを拒み続けるのは賢い選択か。少なくとも事態が好転するとは思えない。
ネズミの視線がチラチラと床の刃物に注がれるのを見て、ユリウスも腹をくくる。
何度も脳裏に浮かぶのは、自分に全てを頼りきっている部下の顔。
――森の奥で人知れず惨殺されるよりは、屈辱に耐えた方がマシだ。
ユリウスは舌を出し、ネズミの胸を弱々しく舐め始める。
「ん……」
眠りネズミの身体がビクッと揺れる。どうやら感触は悪くないようだ。
甘噛みしたり、舌で転がしたりと、教えこまれた技巧を拙いなりに駆使すると、
ネズミはすっかり顔を上気させ息を荒くしていた。
「君って、小さいのに上手いんだね。俺、すごいの拾っちゃった」
……やりすぎたらしい。どんどん気に入られている気がする。
密かに後悔しているとグイっと頭を押され……ネズミのモノを目の前にさせられる。
「ねえ、ここも舐めてよ。お店の子は、ネズミのだけは死んでも嫌だって、絶対に
やってくれないんだ」
――私だって嫌に決まってるだろう!!
だが実際に死の危険を間近にして死んでも嫌、とまでは言えない。
――今だけ、今だけの辛抱だ……。
ユリウスは覚悟を決めて眠りネズミのモノを口に含んだ。
「……っ……」
小さくなっているということを忘れていた。
思ったより大きいこともあって、含みきれない。
収まらない部分は指で刺激することにし、何とか入った部分を必死で舐める。
「ん……んんっ!」
動物の反応も早かった。ほどなく先走りの汁が先端にあふれ、苦い味が口内に広がる。
「ユリウス……すごく気持ちいい……すごくいい……」
ネズミのモノは急速に大きさと硬さを増し、頭を押さえる手も強くなる。
なおも舐め続けていると、ふいに頭を後ろに引かれ、ネズミのモノが引き抜かれ、
「……っ!!」
生温かいものを顔面に感じ、思わず目を閉じた。眠りネズミは自分のモノを握って
白濁したものを放ってくる。嫌悪と怒りで首を振り、敷布で顔を拭くと、
「ご、ごめんね。君小さいから、口の中に出しちゃ可哀想だと思って」
「…………」
確かにそうだが、だからといって顔に出すだろうか。基準がよく分からない。
「でも、すごく良かったよ。今度は俺がしてあげる番だね」

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