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■厄介な恋人3

「頼む、とは何を?」
本当に分からないのかナイトメアに言わせたいのだか。
「その……は、初めてのことだから、一度やってみてくれないか?」
長い沈黙があった。
「まずは俺が上になって、どうやるか『実践』すると?」
「そ、そうだ」
さらに間があった。あまりに静かなものだから、呆れ果てたのかと心配になる。
「本当に、それでよろしいのですね?」
「あ、ああ。夢の中のことなら、多少何かあっても大丈夫だし……」
「本当に?」
重ねて念押しされ、血を吐きそうな思いだが、ナイトメアは
「あ、ああ。かまわない」
「そうですか……」
あまりの不甲斐なさに呆れられてしまったのだろうか。
不安が頂点に達した瞬間に
「――!!」
何が起こったのかわからなかった。
グレイに抱きすくめられ、キスをされていると気づいたときには押し倒されていた。
「ち、ちょっと待て、グレイ……」
「お許し下さい。ナイトメア様」
――ここまで来て往生際の悪い……もう離さない。
丁寧な言葉とは裏腹に荒々しい本音が聞こえてくる。
冷静さを欠き、表のときのように思考を隠すことが出来ないらしい。
反論をキスで封じられる。表の世界でしたときとは比べ物にならないくらい、
熱く激しいキスだった。これまでのキスと違い、舌が強引に入り込む。
「ん……んん……!」
あまりに荒く口内をかき乱されるので、胸を押して抗議するが、
病弱な夢魔の抵抗など、トカゲの補佐官は歯牙にもかけない。
――ずっとこうしたかった……全て俺のものだ。
普段とかけ離れすぎた声を聞かされ、ナイトメアも身体が熱くなってきた。

…………

「……っつう!」
鎖骨に痛みが走る。跡になって残ってしまうというくらい強く吸われる。
「ぐ、グレイ何のつもりだ!ま、まさか、夢の中であることをいいことに
日ごろの恨みを晴らそうとか――」
「申し訳ありません、ナイトメア様。つい図に乗ってしまいまして……」
――夢の中だから、かまわないだろう。俺の好きにさせてもらうぞ。
「お、おいおい……」
言葉と本音が完全に生き別れになっている。
だが冷静になる暇もなく、シャツのボタンを引きちぎられる。
剥き出しになった薄い胸を舌が這い、ときおり先刻と同じ痛みが走る。
まるで愛されると言うより食われかけてる錯覚に陥る。
「……くっ……」
胸の敏感な部分を甘噛みされ、声がもれる。
それに煽られたようにグレイは執拗にそこをねぶり、歯を立てる。
「……あ……ん……」
「ナイトメア様、お許しを」
完全に欲望に支配されたグレイの思考はまとまりを欠き、読み取りにくい。
だが思考の断片から、ナイトメアを激しく求めていることは伝わった。
だからナイトメアも痛みをこらえ、グレイのしたいようにさせてやる。
だがほどなく、
「ぐ、グレイ、そ、そこは待ってくれ……」
グレイの手が下半身に伸びたのを感じ、身を引いて逃げようとする。
沈痛な面持ちでグレイは言う。
「ご無礼をご容赦ください、ナイトメア様……」
――ここまで来て逃がすと思うか?逃げられるものなら逃げてみろ。
漏れ聞く思考はドスが利いている。ある意味、臨戦態勢のようだ。
ナイトメアは背筋が寒くなり、暴れるのを止める。
「申し訳ありません、大切な御身に……」
――そう、いい子だ。気持ちよくしてやるから、大人しくしてな。
もはや表と裏の差に突っ込む気にもなれない。
グレイもようやく上着を脱ぎ、引き締まった上半身にナイトメアは顔を赤らめる。
しかしそれ以前にナイトメアの身体はすでに十分反応してしまっていた。
グレイがズボンの膨らみに気づかないはずもなく、服越しに形をなぞられる。
自分で慰めたこともほとんどないナイトメアだが、激しい思いをぶつけられた
後では、ぬるい刺激は物足りなかった。
「……あ……く……グレイ……」
だが、グレイの動きは急に遅くなる。
さっきまでのように、もっと強く触れてほしいのに、焦らすように動きが鈍い。
「今なら、まだ止めることも出来ますが……あなたの身を汚すことなく……」
――さあ、どうしてほしい?寸止めされたくなければ口で言ってみろ。
「おい、グレイ……」
身体は熱いのに冷や汗が出る。無意識なのか聞かれていないつもりなのか。
グレイは黙って見下ろしてくる。視線だけで威圧される。身体も心も限界だった。
「や、やめてほしくない。さ、さ、触ってほし、い……ち、直接……」
「そうですか。あなたが望むようにしましょう」
――ち。エサが悪かった。もう少し恥ずかしいことをさせれば良かった。
何か、もうどうでもいいか、と思うナイトメアだった。
下衣をずり下げたグレイがそこを口内におさめるまでは

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