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■君のためなら・下

エースはユリウスを抱きしめ、唇を合わせる。
「ま、待て、エース……助けなかったのは悪かったと……ん……」
舌を挿入され、頬が熱くなる。
ユリウスもエースの体に手を回し、舌をからめる。
「……ん……」
「…………はぁ……」
狭い作業室に唾液の絡む音が響く。
しばらくして離れるとエースは笑い、
「今日は逃げないんだな、ユリウス」
「ん……まあ、敢闘賞か?」
罪悪感もあるが、今回に限っては、ほだされたところも大きい。
ユリウスに会いたい一心で、階段を何度転げ落ちてもあきらめず、挙句に塔の壁を
油まみれで登り、さらに休み無く『行為』に突入しようとする。
ある意味、尊敬に値するバカさ加減……いや、行動力だ。
「ここまでされて突っぱねるのは、哀れというか……」
「うわ、ユリウスひっどいなあ!」
言いながら、エースはユリウスを床に押し倒す。
「じゃあ、今日はまさしく俺の愛の勝利だな!
愛の力でユリウスの心を動かしたってことだ!」
「あー、そうなのか……?」
心動かされたというか、呆れ果てて抵抗する毒気を抜かれたというか。
ユリウスも自分からコートと上着を脱ぎ、ズボンのベルトをゆるめる。
「ユリウス……」
「ん……」
そして同じくコートと上着を脱いだエースの、鍛えた体に抱きすくめられた。
肌と肌が密着し、騎士の熱と汗の湿り気が伝わってきた。
そしてユリウスは眉をひそめる。
「しかし油くさいな……」
機械油の匂いに慣れたユリウスの鼻もどうにかなりそうな、濃厚な油臭だ。
いったいここまでの臭気を背負うまで何十回落ちたのだろう。
「そっか?ユリウスだって、いつもこのくらいの匂いだぜ?」
「いや、そこまでひどくはないだろう?」
「自分では気づかないものじゃないか?それに、そんな話よそうぜ」
エースの手が体を這い、ユリウスの胸の突起をいじる。
「ん……ぁ……」
体がビクッと震え、小さく声が出る。
エースは指の腹で突起を刺激しながら、
「ユリウスって何でいつも声抑えるかな。どうせ誰も聞くことがないのにさ」
「う、うるさい。お、お、お前が聞いてるだろ……」
「へー、そういう恥ずかしいこと言っちゃうんだ」
ニヤニヤ笑い、布越しにユリウスの股間に触れる。
「ん……あ……っ!!」
「じゃ、俺もちょっと頑張ろうかな?」
「あ……はあ……」
騎士の手が巧みに動き、布の下のモノが起ちあがっていく。
「え……エース……」
「え?何?ユリウス?どうしてほしいんだ?」
布越しでなく直接触れてほしい。
だが普段受身である羞恥心から、口に出せない。
「ユリウスー、このズボン後で着替えなきゃな。ビショビショだぜ」
「い、言うなっ!」
先走りの汁で前が濡れてしまっている。
エースはいたぶる表情で、そこをさかんに刺激する。
「ん……ん……」
「ユリウスー、どうしてほしいんだ?俺頭悪いから、言ってくれなきゃ分からないぜ」
欲望で熱くて熱くて頭が溶けそうだ。
「さ……さ……触って……くれ……ち、直接……」
「よく出来たな、ユリウス」
ズボンを下着ごと下ろされ、限界まで起ちあがったものが外気に触れる。
同時にエースもズボンの前を緩め、十分に大きくなったソレを出す。
「今日は油もあるから慣らす手間が省けていいよなー」
上機嫌に言うと、濡れた服から油を絞り、手にのばす。
「ち、ちょっと待て、い、一応それは……使用済みの廃油だぞ。
潤滑油に使うなら、新しい…の、出すから……」
「待てない……だろ?お互いに……」
「ん……っ!」
後ろの口に指を挿入され、機械油が塗り込められる。
性急なやり口で解されるが、ユリウスはむしろ先を急かす。
「ん……えーす……はやく……」
「うん。いい反応だ。いつもこうなら俺も嬉しいのにな」
指が引き抜かれ、圧迫感が去る。
だがすぐ足を抱えられると、後ろに熱い物があてがわれる。
「ユリウス、行くぜ」
「……あ……っ!」
一気に挿入され、鋭い痛みが体を突き抜ける。
「ちょっと待て、もう少しゆっくり……」
「悪い、ユリウス。俺も余裕ない……」
構わず動き出すエース。
強い手がユリウスのソレをつかみ、待ち望んでいた刺激にユリウスはのけぞった。
二人とも、最初から限界を迎える寸前だった。
「あ……はぁ……」
痛みが引き、波打つような快楽が脳を支配する。
激しく揺さぶられ、ユリウスもエースの背にしがみつく。
「エース……」
「……ん……ぁ……」
熱い。
痛い。
もっと欲しい。
刺激に合わせるよう、腰が動く。
「あ……あ……あ……エース……」
「ユリウス……ごめん、限界……」
一際激しい突き上げに声無くのけぞる。
瞬間に絶頂に達し、次いでエースも中で果てた。

「はあ……」
夕日が差し込む時計塔。
機械油と精液の匂いの混じる部屋で、騎士と時計屋は怠惰に転がっている。
いつもと違い、エースは床で寝こけている。
滑る階段に挑戦したり壁をよじのぼったりで、よほど疲れたのだろう。
仕方なくユリウスは起きて後始末をしてやり、自分の服も調える。
だからといってすぐ仕事に戻る気にもなれず、エースの横でベッドの柱にもたれ、
本を読みながらうとうとしている。
――エースも、油まみれの服が元に戻るまで外には出せんな。
そして退屈を持て余した騎士が自分にすることは一つしかない。

ユリウスは深く深くため息をつく。
……もう二度とバケツは落とすまい。

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