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■小さくなった話・下

※R12くらい

何か大きなものに、全身を軽くつつかれた。
「ユリウス起きろよ、ユリウス。マシュマロが焼けたぜ」
「……は?」
ユリウスはパチッと目を開ける。
「っ!!」
周囲の何もかもが巨大サイズになっていて驚いた。
が、すぐに自分が小さくなっていたことを思い出した。
しかしすぐ顔をしかめる。
確か寝る前は時計塔にいたはずなのに、今、自分は夜の森にいる。
場所はエースの膝の上だ。
どうやら馬鹿に、外に連れ出されたらしい。
「エース!私は仕事があるんだ。とっとと――」
「ほらユリウス。マシュマロが焼けたって言ったろ?」
「は?」
見ると眼前にはパチパチと明るくはぜる焚き火。
そして甘ったるい匂い。
エースは小枝に刺したマシュマロをユリウスに向けていた。
マシュマロは軽くあぶられ、表面に焼き色がついていた。
しかし自分が小さくなっているだけに、巨大もいいところだ。
「食えるか!!」
「え?だって疲れてるみたいだったから、甘い物を食べさせてやろうかなって思ってさ」
「こんなものを食べたら、私の全身がベタベタになるだろうが!」
怒鳴ると、エースはひょいっとマシュマロを口に放り込み、
「言い方がいやらしいなあ、ユリウス」
「……相変わらず頭がおかしいな、おまえは」
「ええ!?恋人に向かってひどいぜ!」
「事実を言っているだけだ」
するとエースは悪戯っぽく笑い、
「へー、今の俺にそんなこと言っていいんだ」
ニヤリと笑う。
ユリウスは嫌な予感を抱き、背筋が寒くなるのを感じた。
「まさか私を放り投げたり、地面に叩きつけたりするつもりか!?」
「いや、するわけないだろ。友達相手に」
「なら私を猫や熊の前に放置するとか」
「いやいや、ユリウスが食われるとこは見たくないって」
「なら私を枝に突き刺し、火であぶるつもりか!?」
「……想像力が豊かだよな、ユリウス」
脱力したように言われ、なぜだか傷ついた。

「ん……ぅ……」
「ユリウス、気持ち良い?」
「良いわけ……ん……」
「顔が赤いぜ?でも良かった。小さいから力の加減が難しくってさ」
「なら最初から……止めっ……ん……」
身をよじり、逃げようとするが、やんわりとエースの親指に押さえつけられる。
さすが騎士といおうか、ほとんど力を入れられていないはずなのに動けない。
そして足を開かされ、指で前を『刺激』される。
「お、おまえ、こんなことをしたって、何の……意味も……」
サイズが違いすぎて『入る』わけがないし、エースには何の得もない行為だ。
「え?俺はいいぜ。ユリウスが気持ち良いんなら。でも何かしてくれる
つもりなら、俺の服の中に潜って――」
「馬鹿か!誰がするか!……んっ……――っ……」
反応している場所を指の腹で擦られ、声が出る。
一方的に快感を与えられ、乱れている姿を見られているのが恥ずかしく、
押さえつけている指にすがり、何とか耐えた。
「文字通り、『手の中』だよなあ、ユリウス」
馬鹿がニヤニヤと笑っているのが気に食わない。
「おまえ、後で……覚えて……っ……や……!」
エースの指が胸の辺りを撫でる。おおざっぱすぎる愛撫だ。
だが普段に無い刺激であること、完全に相手の支配下であるという状況に、
なぜか頭が勝手にのぼせていく。
そして熱く硬くなった場所を、とりわけ乱暴に、強引に擦られ、
「あ……だめ……っ……〜〜――っ!」
頭が真っ白になり、声を上げて達する。
そして快感にしばし呆然とした。
「はは。喜んでくれてよかったぜ」
「……っ!」
馬鹿の笑い声に、一瞬遅れて頭が冷静になり、カーッと真っ赤になる。
「エース!おまえ……っ!!」
「は、はははは!本当に可愛かったぜ、ユリウス!はは……っ!」
馬鹿は腹を抱えて笑っている。自分の手を汚されたというのに。
「××××!この×××××!」
あらん限りの罵倒をぶつけ、エースの手を殴っても、馬鹿は笑うだけだった。

…………

ユリウスはエースの服の襟元から、ちょこんと顔を出し、言う。
「それで、いつになったら戻るんだ?」
「ん?とりあえずネズミ君を探して、解毒剤でももらおうぜ」
服の上からユリウスを撫で、エースは笑う。
「……ネズミを探すのに、なぜ山を登っているんだ?」
「え?街の方向はこっちだろう?」
「山頂に街があるか!!上下感覚くらい正常になれ!」
襟から身を乗り出し、落ちそうになってエースに支えられる。
「おっと!気をつけてくれよ、ユリウス」
「う、うむ」
ついでに山の中腹の寒さに少し身を震わせる。
そんなユリウスを上から包みこみながら、
「任せてくれ!俺は必ずユリウスを守ってみせるからな!」
「それならまず山を下りてほしいんだが……」
力なく呟く。
そして、エースの服にもたれ、空想にふけり出す。
――まずネズミを脅して薬をうばって、こいつを小さくして……。
「好きだぜ、ユリウス。小さくなってもさ!」
「うるさい、黙れ、馬鹿」
「あはははは!小さい方が可愛いな。×××出来ないところさえ
何とかなれば、ずっと小さいまんまでもいいのにな」
「いいわけがあるか!」
怒鳴りつけ、拳で思い切り殴るが、エースは笑うだけ。
ユリウスはため息をつき、目を閉じる。

――私も、もう少しこのままでいいか。

不思議と自分でも、そう思いながら。

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