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■軽い仕返し3

※R15

「ん……」
「だから、そんなもの飲むなと言ってるだろう。ほら、水だ」
唇についた白濁したものを舐める馬鹿に、乱暴に言ってコップの水をふくませる。
喉を鳴らして飲む様子を確認し、コップを離してテーブルに置いた。
「はは。お仕置き中でも優しいよな、ユリウス。
なあ、いいだろ。そろそろ触って――」
嬉しそうに言ってくる馬鹿を眺め、
「黙っていろ。触れてやらないぞ」
快感をエサにピシャリと命令し、また口づけをする。
最後まで触れずにすませ、絶叫させることを思うと口元がゆるみそうになる。
そして上着をはだけて素肌を晒させ、肌に犬歯を立てた。
「……んっ……ユリウス……イイ……」
「声を出すな」
「わ、分かったぜ」
自分の下でまともに反応している、馬鹿の×××はむろん無視する。
そしてユリウスは、エースの髪に自分の指を絡ませて撫で、胸元にそっと
顔をよせ、先端部に舌を這わせた。
「……〜〜!」
くすぐったいのかエースが何度か身じろぎするが、声を出すなという命令を
従順に守っている。
ユリウスは少しおかしくなり、表情を変えず何度も何度も刺激し、馬鹿が
声を出しそうになっては慌てて押さえる様子を楽しんだ。
――それに、こちらからじっくりと触れるのは、久しぶりだな。
優位に立っているという余裕から、愛撫しながら何となくエースの身体を
じっくり見る。すると。
「…………」
――は?
一瞬、自分の見たものが信じられなかった。
エースが目をそらした。少し顔を赤くして。
――まさかとは思うが……。
「おまえ、もしかして、私に見られて恥ずかしいのか?」
「――っ!!」
バッとこちらを振り向き、何か言おうとして……黙る。
今の沈黙は命令を守っているのではなく、単に気まずいからのようだ。
「馬鹿か?その程度で……」
「〜〜〜〜!」
エースが何か言いたそうに何度か口を開き、結局何も発さない。
馬鹿の貼り付いたような薄ら笑いの仮面を剥がすと……ただの馬鹿がいると
分かった。殴られるより奉仕を強要されるより、単に見られるのが嫌なのか。
ユリウスも反応に困って上着を脱ぐ。そして近づき、
「ほら」
何を命じたわけでもないが、エースは犬が舐めるようにこちらの胸を
舐めてくる。髪を撫でると嬉しそうに笑う気配がし、本当に大型犬を
じゃれつかせている錯覚に陥った。
――……私は何に怒っていたんだ?
馬鹿が馬鹿すぎたせいかもしれない。怒りがしぼんでくる。
時おり口づけをかわし、唾液が滴るほどに舌を絡めているうちに、自分が
何に激昂していたのか、だんだん分からなくなっていく。
「なあ、ユリウス。お願いだから……」
限界まで勃ち上がった×××を見せつけるようにし、犬が懇願する。
まだこちらが怒り心頭だと思っているのだろうか。
ユリウスは冷たさを装い、
「何だ?犬がしゃべるとはおかしな話だな。氷水でもかけてやろうか?」
「ユリウス〜。本当に限界だぜ。触ってくれよ。このままじゃ……」
「なら誓ってもらおうか。二度と人の寝込みを襲うな」
「分かった、誓う!!」
「呼びつけたら10時間帯以内に来い。珈琲くらい淹れろ。無駄口を叩いて
いないですぐに仕事にかかれ。それから――」
「誓う誓う誓うから!!」
もっとも、馬鹿が本気で実行するとは思っていないし、実は言葉の間に
口づけをかわしているのだが。

そして奴が切羽詰まる様をしばらく楽しみ、嫌味と要求を言い尽くした
ところで、言葉がなくなる。
『…………』
それから、二人で少し見つめ合う。

そして、どちらともなく顔を近づけ、長い口づけを交わした。


鎖をほどけば、態度を翻して襲ってくるのでは、とも思った。
だが馬鹿は意外に素直にユリウスをベッドに運ぶ。
足の怪我もあるだろうに、器用なものだった。
古いベッドがギシッと抗議を上げるが、今回も耐えてもらうしかない。
あまり使わない敷布の上に下ろされ、エースがそっと抱きしめてくる。
自力で果てる寸前だった××は、まだ硬度を保ったままだ。
「……限界なんじゃないのか?」
「限界だぜ。でも、今はほんのちょっと、こうしていたいかな」
もう遠慮は無いのか、普通にしゃべってきた。
「そうか」
髪を撫でると、見えない尻尾が振られる気配。
頬に手をやるとまた自然に口づけが交わされる。
そして互いの身体を探るように愛撫が再開された。
「ユリウス……」
馬鹿の息づかいが荒くなる。我慢していただろう、身体を這う手が熱い。

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