続き→ トップへ 短編目次 ■軽い仕返し2 夜が更け、時計塔の空も闇に包まれる。 そして時計塔の作業室では、鬼のごとき笑みを浮かべた時計屋がいた。 騎士は、ベッドの支柱に絡めた鎖に両手を拘束され、床に座らされて いる。そして、冷や汗を流しながら目の前の時計屋を見上げていた。 「さて、エース。何からしてほしい?」 ユリウスは言う。すると騎士は顔を上げ、意地の悪い笑みで、 「鎖をほどいてくれよ。そうしてくれたら、お礼にこの前より もっと気持ち良くしてやるぜ?」 「そういえば、以前謝って仕入れた工業用フッ化水素酸がまだ戸棚に――」 「あ、あはは……はは……」 馬鹿を脅しで黙らせ、ユリウスは腕組みをする。 とはいえ本気で拷問するつもりはないし、妙なプレイをする趣味もない。 ユリウスはチラッと作業台を見る。そこには自分の修理を待つ時計が 小さな山を作っていた。 「ユリウス。何をしてくれるんだ?早くしてくれよ」 「…………」 ――何をしても、こらしめるどころか喜ばれそうな……。 ややあってユリウスは、 「……面倒くさい」 ポツリとユリウスは呟く。 「え?……ええっ!?」 逆にショックを受けた様子の馬鹿。 「面倒だ。私は仕事に戻る。おまえはほとぼりが冷めたら解放して やるから、そこで大人しく寝ていろ」 ユリウスは騎士に背を向け、さっさと作業台に戻ろうとした。 「ちょっとちょっと!ずるいぜ、またそれかよユリウス!! 最近、少し枯れすぎだろう!?いい加減にしないと×××に――」 「うるさい!おまえと私は違う!私は常識があるし、変な趣味もない!」 「……え。万年引きこもりのユリウスが『常識』?」 やや痛いことを言われた気もするが、ユリウスは挑発に乗らない。 無視し、椅子を引いて座ろうとした。 一度座れば後は果ての無い仕事に没頭するのみだ。 「ユリウスー!ユリウスー!!」 馬鹿はガチャガチャと鎖を鳴らしている。なまじ図体がでかく馬鹿力な分、 ベッドも床もきしみ、騒々しいことこの上ない。 「うるさい!黙って寝ろ!!子供かおまえは!!」 「子供でもいいから、構ってくれよ!!」 「…………」 本当に子供のようなことを言われ、一発殴りつけてやろうかと、 ユリウスはきびすを返し、大股で騎士の元に行く。 「エース!」 「何々!?」 すると馬鹿は嬉しそうにこちらを見上げる。 「この……」 こぶしを振り上げかけたユリウスだが、騎士はすでに黙っている。 「ユリウスー」 「おまえという奴は……」 しかしエースは大人しい。楽しそうだった。 もしかすると、この後殴られても、やはり笑顔ではないだろうか。 ――助けて治療などせず、放置するんだった。 頭を抱えたい気分で、ユリウスは小さくを息を吐いた。 ――どうしたものか……。 この馬鹿犬に、二度と乱暴をしないよう躾けるには。 ――……そうだ。 ユリウスは腕組みし、クイッと眼鏡のフレームを上げる。 エースは。何かとてつもない期待をこめた目で、こちらを見上げている。 激しく振る尻尾の幻覚まで見えた気がした。 深く深くため息をつき、ユリウスはエースを抱きしめ、唇を重ねた。 窓の外は満天の星だ。作業場に作業台のランプのわずかな灯りしかない。 ユリウスは抱きしめ、あちこちに口づけをし、荒れた手で騎士の身体を愛撫する。 「ユリウス……もっと……」 馬鹿は××を勃て、快感にあえいでいる。 「おい、あまり動くな。足を傷めるぞ」 何度も口づけをし、応急処置をした足を少しさすってやると、 「はは。仕返しするって感じじゃないぜ、ユリウス」 顔をよせ、口づけをねだりながら奴は笑う。 服の裾を上げ、胸に舌を這わせていると、くぐもった声がする。 「……ユリウス……」 名前を呼ばれ、仕方なく顔を上げ、また口づけをしてやった。 「ん……ん……んう……」 「…………」 ユリウスは眉間にしわを寄せた。 硬くなった何かがこちらの腹に当たる。 ――そろそろいいか。 仕返しのつもりだったのに、逆に喜ばせているのでは意味がないではないか。 「おい、エース!」 「ん?何々?あ、またしゃ×ってほしい」 「ああ、そうしてもらおうか」 ユリウスは騎士の下品な言葉は無視し、立ち上がるとベルトをいじる。 馬鹿は嬉しそうに、 「うん!それでその後、俺にも――」 「断る。今回はおまえのモノには一切触れない」 一瞬の沈黙。そして。 「は?……ええ!?」 エースの顔に、本物の危機感らしきものが走る。 「ちょ、ちょっと待ってくれよ、ユリウス!そ、それだけは!! だいたい触らないで、どうやってやるんだよ!!」 「私だけが満足出来る方法など、いくらでもある。 何時間帯か経った後にほどいてやるから、その後一人で寂しく慰めろ」 「ユリウスー!!」 絶望の叫びを心地よく耳に感じ、ベルトをゆるめ、前を出すと、 「ほら、早く始めろ」 と犬に命令した。 2/4 続き→ トップへ 短編目次 |