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■監獄ゲーム・中

「パス……三回目だ」
震えながらうつむく黒のジョーカー。
「次で終わりだね。ハイ、クローバーの2、と」
白のジョーカーがユリウスを見て微笑む。
ユリウスはうなずいてクローバーの1を取ろうとし、
――ちょっと待て、何で私が言うことを聞かなくてはならないんだ。
いつも難癖つけてくる黒い方のジョーカーをつい、いたぶってしまったが、負けると
困るのはこっちの方ではないか。
ユリウスは浅慮を恥じ、慌てて6か8を出そうとし……
「ユリウス?続き、楽しみたくないの?」
監獄の所長の言葉に、ゾクッとする。
服は整えたつもりだが、タイは外れ、ベルトもゆるんだままだ。
中途半端な愛撫で止められた体はジリジリと続きを迫る。
目をあげると白のジョーカーがニヤリと笑う。
ユリウスの欲望がもう一度鎌首もたげたことを知っている。
――いや、ちょっと待て、冷静になれ。七並べだ、七並べ!
大の男三人が七並べをやっているんだぞ!?
アホらしい構図を再認識し、熱を冷まそうとして、
「俺に、可愛がられたくない?」
のばされた手が首筋を意図的に這い、身体の芯が震える。
「おい、俺はまだ負けたわけじゃねえぞ!
イチャつくのを止めて早く出しやがれ、時計屋!」
なぜかジョーカーではなく自分が責められているのか。
言葉とは裏腹に、黒のジョーカーは今度こそ期待を込めてユリウスを見る。
隣を見れば、笑っている白いジョーカー。
――いつまでも、私が思い通りになっていると思うなよ。
葛藤などお見通しだと言いたげな顔に反発がわき上がる。
いつまでも言いなりになっている玩具ではない。
「悪いな、ジョーカー」
ユリウスはカードをテーブルに滑らせる。
クローバーの8。
そして、かすれるような小さな声がした。
「え……俺、クローバーの9持ってないんだけど……」
「――は?」
「ああ、それ俺が持ってるよ。悪いねジョーカー」
白いジョーカーが笑った。そして蒼白になったユリウスの服に手をかける。

…………
暗い所長室に切なげな声が反響する。
「ん……ぁ……」
「……ち。勝ったお前らが勝手にイチャつくのはともかく、何で俺までいなきゃ
ならねえんだ……」
無駄に豪華な所長室のベッドから離れて座っている黒のジョーカー。
サーカスの団長姿の彼は、嫌そうに二人の交わりを見ていた。
「ええ?別に無理にいろと言ったわけじゃないよ。
仕事の件があるから、いてくれた方がいいとは言ったけどねえ」
「お、俺だって監獄の所長でもあるからな。
こんな胸糞悪いショーなんぞ見たくも無いが、仕事だから仕方なくいるんだ!」
「そう?まあ、楽しんでよ」
なぜか目をそらし気味の黒のジョーカーとからかうような白のジョーカー。
――しかし、ゲームに勝ったからといって、私がジョーカーに抱かれる
理由にはならないのではないか……?
何となく、今さらなことに気づき、ユリウスはもがくが、ベッドに押し倒された
身体は容易に動かない。
「あ……ダメだ、止め……ろ、ジョーカー……」
「ふふ。やっぱり制服の方が脱がしがいがあるねえ。
時計屋の服はゆったりしすぎていていけないや」
言って鞭の先端で胸の突起を擦ると、それだけでユリウスは紅潮する。
「ん……やめ……」
「嫌って事ないだろ?ほら、こっちも大きくなってきてる。
もうちょっと頑張ってくれないかなー。俺が楽しめないじゃないか」
言いながら、楽しそうに愛撫していく。
唇に、首筋に、鎖骨に口付け、下半身をまさぐる。
「あのよお、お二人さん。楽しむのは勝手だけど、俺がいるんだぜ?
もう少し遠慮っていうか、声抑えるとか……」
黒のジョーカーがうんざりしたように言う。
「そう?じゃあ君も入る?ジョーカー。
三人でっていうのも楽しそうだし」
「冗談!時計屋となんかやりたくもねえよ」
「あ、そう。でもいつでも入ってきていいよ。
俺もジョーカーも同じジョーカーだし、構わないよね、ユリウス?」
「う……そんなわけ……ぁ……」
唇を塞がれ、舌を深く入れられ、抵抗はあえぎ声に変わる。
「け、盛りのついた雄犬どもが。つきあってられねえよ」
だが、言いながらもサーカスの団長は部屋を出ない。
じっと二人を見ている。
二人のジョーカーの視線を感じ、ユリウスも体が熱くなってくる。
ズボンと下着も下ろされ、ひんやりした所長室の空気が下半身に触れても衰えない。
「うわ、こいつ本当にサカってるな。早くしねえと先にイカれるぞ、ジョーカー」
上半身を脱いだジョーカーはユリウスに優しく口付ける。
「そうそう。ユリウスって興味ございませんって顔して、結構乗り気だよね。
恋人のしつけがいいのかな?
まあ、飼い犬にしつけられる飼い主もどうかと思うけどさ」
「う、うるさい。どうでも……いいから、はや…く……」
冷静な二人に対し、自分だけが熱くなっていると思うと羞恥心でどうにかなりそうだ。
「ちょっとちょっと。君ももう少し俺を燃えさせてよ。こう、誘うとかさあ」
「道具でも使ったほうがいいんじゃねえの?もしくは縛っとくとか」
「ああいいね。ねえジョーカー。
こないだ仕入れたあのスゴいやつ、ちょっと取ってきてくれないか。
新しい囚人に使おうと思ってたけど、ユリウスが先でもいいや」
「よく……あるか……」
いろんな意味で聞き逃せない。
「冗談じゃねえよ!な・ん・で!お前のお楽しみのために夜の道具持ってこさせるんだよ!!」
嫌悪を顔にたたえ、もう一人のジョーカーが顔をしかめる。
「意地悪だな、ジョーカー。心配しなくてもユリウスを独り占めにしないって。
ちゃんと君にもいじめさせてあげるよ」
「お、俺は別にこいつのこといじめたいなんて……」
「好きな子いじめたいとか君はいつもお子様レベルだよね、ジョーカー」
「んだと!ジョーカー!!」
「ちょっと……まて……」
突っ込みたいが、二人には完璧に無視される。
体が熱くて、しかし欲しいものは与えられず欲求はたまるばかり。
ユリウスはジョーカーの下で動き、うつぶせになった。
冷たい空気を吸った清潔な寝具が気持ちいい。
「あ、ごめんごめん、ユリウス。ふーん、今日は後ろからがいいんだね」
「……え……」
体勢を変える間もなく、ジョーカーが後ろから圧し掛かった。

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