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■軽い仕返し1

※R15(エスユリ)
※甘め


「ん……」
口元に水滴の感触を抱き、薄く目を開ける。
ぼやけた視界の中に、エセくさい笑いが見えた。
「あ、ユリウス。起きた?」
目の前には人懐こい笑み。奴は、手に雫の垂れた水筒を持っている。
そして自分の口元から胸元までが、水で濡れている。
起こすために水筒の水を引っかけたのか、無理やり飲ませようと口元に
押しつけたのか。ユリウスは反応するのも癪(しゃく)で騎士を睨む。
騎士は今、あの目に痛いコートを脱ぎ、黒いシャツを着、前をはだけている。
そしてここは時計塔のユリウスの部屋だ。
自分は両腕をロフトベッドの杭に拘束され、半裸の状態で座らされていて、
エースはそのユリウスの前に片膝をついている。
ユリウスは最悪の気分で、
「もう満足しただろう?いい加減、鎖を解け!」
両手を持ち上げると、ベッドの杭に巻き付けられた鎖が金属質の音を立てる。
するとエースは膝で頬杖をつき、
「ええ!?殺生(せっしょう)なこと言うなよ。
眠ってるユリウスを拘束するのに苦労したんだぜ!?」
「馬鹿が難しい言葉を使おうとするな!私は仕事をした――っ!!」
最後まで言い切る前に、唇を塞がれた。
抵抗しようにも頭上で拘束された手首が、虚しく鎖を鳴らしただけだった。
「ん……ぅ……」
吐息が熱い。窓から日のさす部屋に、舌が絡み合う自堕落な音が響いた。
「……っ…………!」
騎士の手がユリウスの××に指を滑らせる。
ちなみに下半身はほぼ脱がされ、上も前がはだけ、あちこちに白い液体が
かけられている。むろん内側の汚れもろくに処理されておらず、時間帯が
経った今は、不快で不快で仕方ない。
「この、馬鹿が……今度こそ、クビに……」
反応するまいと唇をかみしめながら、ユリウスは悪態をつく。
「うんうん。そういう台詞は、我慢が出来るようになってから言おうぜ」
エースは笑い、再び反応を始めたユリウスの××に優しく手をそえると、
一気に口の中にふくんだ。
「エー……ス……っ!!や、止め……!……ぁ……っ!」
しかしエースは無視し、逆に音を立て、口を上下させる。
「ダメだ、止めろ……この……」
何とか逃れようと下半身を動かすが、すぐに騎士の屈強な手に押さえられ
動けない。むしろさらに足を開かされ、深く咥えられてしまう。
「……エース……っ!……」
勝手にもたらされる快感に、全身が熱くなる。
寝ている隙に拘束され、誰も来ない室内で何度も何度も犯された。
なのにプライドのカケラもなく達する我が身が、情けなかった。
「この……っ……!……こ……」
呪詛を口から吐き出そうとしたとき、全身を電流が走る。
「――――っ!!」
視界が真っ白になるような絶頂。
そして……喉を鳴らしてその証を飲み込む狂った男がいる。
「はあ……あ……」
口の中に放たれたというのに、慣れた様子でエースは笑う。
「ユリウスは本当に溜まってるよなあ。
ちゃんと抜いてあげるんだから、俺って本当にいい部下だぜ」
口元をぬぐい、水筒の水を煽る。
「…………っ……!!」
羞恥と悔しさで、ユリウスは歯を食いしばってエースを睨みつける。
しかしエースはユリウスをせせら笑い、自分のズボンのベルトを緩めた。
そして嫌悪に顔を背けるユリウスに、己の××を触れるくらいに突きつけ、
「でさ、ユリウス。上と下、どっちに入れてほしい?」

…………

…………

「…………」
乱暴に拭いて拭いて、ようやく床の汚れが取れた。
目の下に隈を作ったユリウスは、立ち上がって清掃道具を片付け、
何度も何度も手を洗った。
「あの……×××××が……!」
そして痛みの消えない身体で作業台につき、時計の修理を始めた。
しかし流れ作業的に修理をしつつも、頭の中ではどう復讐するか、を
考えている。同じような目にあわせ、痛めつけるくらいしないと気が
すまない。しかし、
――…………。
思い出したくもない、遠い繰り返しの向こう側がふと頭をよぎる。
ユリウスはついに想像をあきらめ、天井を仰ぎ、疲れた身体を休めた。
いつからこうなったのか。この歪んだ関係を、どうすればいいのか。
――これもまた、繰り返し、か……。
ため息をついた。
あえて罠にかけ、責め苦を負わせるなど、出来るわけもない。

…………

馬鹿がいた。
「あ、あのさ、ユリウス……」
自分が見下ろす階段の下で。
「何回も落ちてるうちに、足をくじいちゃって……」
歩けず、逃げることも出来ず、
「こ、この間は色々あったけど、俺たち、親友だよ、な?」
多少は自覚があるのか、やや顔色を失った状態で、こちらをへらへらと笑っている。
「待っていろ、エース」
ユリウスは重々しく言い、部屋に引き返す。
「悪いユリウス、助かったぜ〜」
弱り切った馬鹿の嬉しそうな声がする。
だがユリウスは部屋に入る間際、馬鹿を振り返り、一言告げる。
「今、おまえのための鎖を持ってきてやる」
「え……?」

…………

「えーとさ。ユリウス。あ、あはははは!」
もう笑う以外に無いのだろう。
馬鹿の額には汗が一筋流れている。
「さて」
床に座らせるようにして、ロフトベッドの杭に奴の両腕を、がんじがらめに
縛り付け、その前で仁王立ちになり、ユリウスは告げる。

「何からしてほしい?」


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