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■装う話・下

※R18

夜は更ける。ユリウスが多忙と知っている職員や構成員は、用が無ければ部屋には
来ないし、ジェリコも抗争で当分帰らないだろう。
時計屋の部屋は暖かく、こちらの服が多少脱げかけていても、寒くは無い。

「…………っ……」
ユリウスの反応を確かめながら、舌と口を必死に動かす。
先走りのものを舌先で舐め取ると、ビクッとデカい身体が震えた気がした。
「ん……く……っ」
痛い。こちらの髪をつかむ、ユリウスの手が痛い。
だがソファに座ったユリウスに奉仕させられた状態だ。抗議したくとも出来ない。
最初は優しく撫でてくれていたのに、とちょっと不満だ。
それにしても、やはりユリウスのはちょっと××××だ。
こっちは口の中が切れているし、長く奉仕していると苦しい。
「……っ……ん……」
そろそろだろうかと構えていると、頭を後ろに押され、糸を引いて××が離れる。
そして口をぬぐう暇もなく、また突き飛ばされ、乱暴に床に倒された。
「ユリウス……っ!」
抗議の声を上げてやると、ユリウスがまたのし掛かってくる。
鎖骨に噛みつくように口づけられ、器用な手がこちらの服を緩めていった。
「……い、嫌だ!口だけで満足させたら、しないって言っただろう!?」
まあ我慢出来ないだろうとは思っていたけど、流れとして抗議はしてみた。
「すまない……」
苦しそうなユリウスは、こちらのズボンを下ろしにかかる。
「ユリウス……!」
形だけ。形だけの抵抗だ。だけどなぜか額に汗がにじむのが分かる。
……顔無しの変態どもに囲まれ、押さえつけられ、笑いながら犯された記憶が、
脳裏をよぎった。
「やっぱり嫌だよ……ねえ、今度はちゃんとやるからさ……ユリウス……っ!」
しかし、いくらもがいても、大柄の時計屋はビクともしない。
「何を……おまえだって、口では嫌がっても、その気じゃないか……」
悪い大人が悪い笑みを見せる。
いやユリウスこそ演技かもしれない。だが一方で、自分も余裕が無くなってきた。
自分は子供だと痛感する。まだ全ては装いきれない。
「ん……っ!……」
半ば勃ち上がった下半身に大きな手をそえられ、身体に電撃のような快感が走る。
「ユリウスっ!……やめ……」
止めようと、虚しく伸ばした手が、時計屋の髪に触れる。
思い切り引っ張ってやっても、少し眉をひそめ、うるさそうにはらわれた。
自分の××を荒れた手で扱かれ、嫌でも息が上がってしまう。
「嫌……ユリウス……っ」
声に涙がまじる。だが抵抗も虚しく、思考が快感に弾ける。
どうやらアッサリと絶頂に導かれてしまったようだ。
「はあ……はあ……」
上着を緩められ、ズボンを下ろされた情けない姿で、床に横たわり胸を上下させる。
だがユリウスは身体を起こし、テーブルの上の、機械油の瓶を手に取っていた。


「や、あ……だめ……痛……っ!」
情けない声が響いている、と思ったら自分の声だった。
昼間、何度もいたぶられた場所のさらに奥深くにねじこまれ、冷たい汗が出る。
指で無理やりに慣らされたし、機械油の潤滑効果もある。けど気休め程度だ。
こちらの服を全てはぎ取り、床にうつぶせにさせた相手は、欲望にかられたように腰を動かす。
「エース……ぁあ……っ」
打ち付けられ、苦痛で仕方ないが、どこか客観的になっている自分もいる。
養い親に床に押さえつけられ、優しさも何も無く抱かれている自分を、遠くから
見ているような変な感覚だ。
「ユリウス……うっ……」
いや、ユリウスも少しは、こちらの痛みを緩和させようとしているのだろう。
一度達した自分の××にまた手がそえられ、優しく上下に動いた。
「ん……っ……」
一度は萎えた××がゆっくりと反応していく。
「……エース……っ……」
耳元で低く囁かれ、頬が熱くなるのが嫌でも分かった。
全身を包まれ、悪夢がほんの少し和らいでいく。
「ユリウス……」
そして、恐怖の記憶も一緒に、ゆっくりと薄れていく。
この世界の『時間』が何かしたのだろうか。あるいは自分自身が。

「は……ああ……っ」
じわじわと湧き上がる快感が、少しずつ痛みを押しやっていく。
ユリウスはこちらの未成熟な身体を後ろから抱きしめ、ひときわ強く、何度も打ち付けた。
「や……あ……っ……ああ……!」
もう装うことも拒むことも何も出来ない。
快感に流されるまま、揺さぶられ、全身でユリウスを感じたかった。
――役を持つなんて、したくない……。
耐えきれず、伸ばした手が小さな歯車をつかむ。
責めを受けながら、血が出るくらいの力で歯車を握りしめ、祈るように思った。
――いつまでも、ずっと……ユリウスの側に……!
それ以上は何も考えられなかった。
時計屋が自分の中で達し、自分の視界もまた真っ白に。
気持ちよくて、けれど苦しくて、何も考えられなくなった。

…………

ユリウスはソファに座り、うなだれている。
「ユリウス。俺は気にしないからさ。ねえ、ユリウス……」
自分もソファに座り、無邪気を装って膝に手をかける。
身体はさすがに辛いが、新しい傷をユリウスに与えられたと思えば、安いものだ。
「……すまない……」
「わっ!」
突然、手をのばし、裸の身体を抱きしめられた。
「おまえのために復讐も出来ず、私は何を……」
震える声と、大人らしくない小さな嗚咽。
「復讐は墓守頭さんがやってくれるんだろう?ちゃんと聞こえたぜ?
あの人なら確実だって」
マフィアらしく、さぞ惨たらしくやってくれるのだろう。
ジェリコが、というのが気にくわないが、自分やユリウスではどうにも出来ないから
目をつぶるしかない。
「ユリウス……」
顔を上げさせ、こちらからキスをする。
「……ん……っ……」
驚いたような顔をするユリウスだが、すぐにこちらを抱きしめ、深く口づけてきた。
同時に、手が再びこちらの身体をまさぐるように動いていく。
「ユリウス……やだ!嫌だ……っ!」
けれど時計屋は手を止めない。身体がきついのに、と呆れつつ受け入れる。

けどときどき、嫌がるのはフリで実は嬉しいのか、本当は嫌なのか、自分でも分からなくなる。
でもこれでまたユリウスが傷つき、迷っていくと思うと嬉しい。
――いい保護者の顔を装うのなんか止めればいいのに。
皆が狂っている。大人と子供が結ばれていたって、誰も何も言わないのに。
そして墓守頭は放っておいても死ぬことが決まっている。
一人になり、人間不信になり、引きこもりになって、自分以外の誰も見ないでほしい。
ソファに押し倒されながら思う。

――いつまでも迷ってくれよ。ずっと、一緒に。

「ユリウス……っ……」
いきり立った××を押しつけられ、口づけを受けながら名を呼ぶ。
そして引き裂かれ、快感に泣き叫びながら、全てを忘れた。
手からこぼれた歯車が、どこかに転がる音がした。

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