続き→ トップへ 短編目次

■緋と藍の時間9

※R18

時間帯が夜に変わる。
淡い月明かりが暗い室内に入り、床に長い影を落とす。
床に座り込む騎士は、ソファにもたれ、ユリウスに奉仕をさせている。
「ん……いいぜ、ユリウス。最初のときより、ずっと……いい……」
「……ん……う……」
騎士の××を奥までくわえこみ、手で愛撫しながら懸命にしゃ×った。
彼に強要されているのだと思う。そう思いたい。
だが何かに突き動かされるように、熱心に奉仕している自分もいた。
「でかいときより、上手いかもな……」
髪を撫で、自身も衣服もゆるめながら、騎士は言う。
「う……るさい……」
悪態をついて顔を離すと、騎士の先走りのものが口から糸を引いた。
不快になって口をぬぐって、見上げる。
「私は、やることが、あるんだ……早く終わらせろ」
あの作業台を調べれば全てが終わる。そんな予感がした。
「そっか。どうしても思い出したいんだ」
騎士は笑う。
そしてユリウスを優しく床に転がし、言った。ユリウスが予想していなかったことを。

「なら俺も言うぜ。あの子のことはユリウスのせいじゃない」

慣れた様子で機械油を手に垂らし、騎士は言う。
「……?……っう……!」
問おうとして後ろに異物の挿入を感じ、苦痛にうめいた。
だが騎士は、それを無視し、指で後ろをほぐしながら続けた。
「現に、誰もユリウスに何も言わなかっただろ?いや接点にさえ気づかなかった。
あの子は、何度かユリウスのところに遊びに来ただけだ」
「何の話……い、痛い!」
仰向けで無理矢理足を開かされ、ほぐす指を増やされ、悲鳴を上げる。
……だが痛みは物理的なものだけだろうか。
己の時計がひどくきしむ気がした。
これが心臓を持つ者にとっての『心が痛い』というやつなのだろうか。

――心臓……?

「ユリウスは、あの子と、別に恋人だったわけでも何でもないだろ?
なのに勝手に罪悪感持っちゃってさ」
「エース……もう止めろ……」
「ユリウスは、表面上、いつもあの子に素っ気なかったからな。
監獄にいるって気づくまで、国中を回ったんだぜ?」
「いったい……なにを……」
痛みと、じわりと背を這う快感のはざまで、息を吐きながら問う。
エースは顔を上げて、ユリウスを見た。

「どこかの人魚姫の話だよ」

何を言っているのか、さっぱり分からない。
ユリウスは続きを待ったが、騎士はそれ以上、説明をしなかった。
その代わりに機械油にぬめる指を抜き、ユリウスの足を抱え上げる。
「…………」
これからされることを悟り、だがどうしようも出来ず、ただ歯を食いしばる。
エースは先端をユリウスの後ろに押し当て、そしてつまらなさそうに言った。
「忘れようぜ」
「――っ!」
そして、何度経験しても、慣れることのない灼熱が貫いた。


月の光の中、見えるのはただ目の前の男だけだった。
「エース……エース……もっと、ひどく……っ」
「言われなくても……ん……」
「あ……ああ……っ……」
腰を抱えられ、奥まで荒々しく貫かれ、悲鳴と歓喜の声を上げる。
同性、そして体格差と体力差。
行為は苦痛でしかないはずなのに、なぜか強烈な快感を覚えてしまう。
己の内で何度も吐き出された、白濁した××も苦痛を和らげる手助けをする。
突き上げられるごとに頭が白くなり、黒い何かが薄れていった。
もう騎士の××で、身体の内も外も汚され尽くしている。
「あ……はあ……あ……」
すでに何度も達しているのに、ユリウスの××は変わらず、上を向いていた。
それに手を伸ばし、手荒く愛撫しながら、
「ユリウスは……何も悪く、ない……悪いのは……」
「もう、いい……や……あ……ぁぁ……っ!」
手の中で絶頂を迎えさせられ、白濁したものが飛ぶ。
まともなことは何も考えられない。騎士に解放させられていく。
「あ……だめ……っあ……」
だがエースは止めない。
再び腰に手を当て、さらに揺さぶり、抉り、突き上げる。
――熱い……。
そしてまたマグマのように、欲望が奥底からわき上がってくる。
――エース……。
何度も口づけあいながら、ぼんやりした頭で思う。
そしてエースは繰り返した。

「ユリウスは何も悪くない」

――ああ、そうだろうな。

ユリウスは、かすかな思考で認めた。

9/10

続き→

トップへ 短編目次

- ナノ -