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■緋と藍の時間8

「離せ!エース!この……っ!」
もがいた。ここに連れてこられたときも抵抗したが、そのときの比では無い。
あのときは二人の男に陵辱され尽くしたあとだった上、多少なりとも『この男に助け
出された』という意識があった。
だが今は違う。この男は危険だ。
「ユリウス。怪我をするから、そんなに暴れるなよ」
殴ろうとしたユリウスの拳をかわし、手首をアッサリつかみ、騎士は言う。
そしてユリウスの手首をつかむ手を、
「い、痛……っ!」
「大げさだぜ。ちょっとつかんだだけだろ?」
実際には『ちょっと』どころではない。骨がつぶされるのではと思う強さだ。
そしてエースは別の手で、ユリウスの首を押さえ、
「――っ!!」
呼吸が止まるかと……いや止まっている。喉を押さえられていた。
口を開けて魚みたいに開閉しても息が吸えない。
痛い。喉がつぶされる。窒息する。
唯一自由になる手で、騎士をはらうか爪を立てようとした。
だが騎士の手は全く弱まらない。
――……嫌だ……。
死にたくない、という原始的な本能が蘇る。
そして目の前が暗転しかけたとき、やっと騎士の手が喉から離れた。
「ゲホっ……ゲホッ」
涙をにじませ、押さえつけられながら必死に息を吸い込んだ。
そのさまを騎士は冷静な目で見下ろしている。そしてフッと、
「あははは!冗談だろ、ユリウス」
「おまえは……」
騎士を見上げた。そして言葉を切る。

――……前にも、これと同じ事があったような。

いつ、と特定出来るようなことではない。
だが何度も何度も何度も、殺されかけ、こんな言葉に出来ない思いを抱いて騎士を
見上げていた。そんな気がする。

――もう少し、もう少しで思い出せるのに。

悔しさに歯がみする。
「ユリウス、まだ抵抗するつもりか?」
騎士は笑顔を見せる。また既視感だ。こんな空洞の笑顔でいつも微笑まれていた。
もう少しで、思い出せそうなのに……。

「当たり前だろう!……ぐっ……!」
答えた瞬間、頬に打撃を受ける。殴られた、とは確かめなくても分かる。
口の中に血の味を覚え、それでもどうにかにらみつけた。
「あんまり強がるなよ。ちょっと怯えた顔をしているぜ?」
「……おまえは……誰だ?」
殺意をこめて睨みつけた。
「もうすぐ分かるよ」
「……だろうな」
小さいユリウスを殴った騎士は笑う。
青空のように爽やかに、中身のない笑顔で。


床に押さえつけられ、のしかかられている。
「ん……」
「あ……ぅ……」
頭を騎士の両手で拘束され、無理に口づけられる。
唾液をぬぐう暇もないほど強く、押しつけ、舌を吸い、切れた箇所を執拗に舐められる。
二度目の酸欠と戦いながら、ユリウスは首を振り、逃れようとした。
だが逃れるどころか逆に身体を密着させられ、硬くなった××を押しつけられる。
「ユリウス……触ってくれよ」
そして騎士の片手がユリウスの頭から離れ、ユリウスの手首をつかむ。
「……痛ぅ……」
先ほど、砕けるかと思うほど強くつかまれた箇所だ。
そして痛みにうめくユリウスを無視して、騎士の××を強引に握らせた。
「ん……や……っ」
触れたくない、と拒否しようとしても、こちらの手を押さえる騎士の手が許さない。
強制的に手を上下させられ、吐き気をこらえながら愛撫した。
自分の手の中で騎士の××が育ち、ユリウスは歯がみしたが、騎士の方は目を閉じ、
「ユリウス……」
騎士の息が荒い。間近の頬が、やや上気しているように見えるのは、情愛だろうか、
陵辱者の劣悪な興奮なのだろうか。
「ん……っ」
首元の時計を模した装飾品を引き千切られた。
無造作に投げられ、音を立てて床の上を転がっていく。そして騎士は、やや性急な
手つきでユリウスの胸元をガバッと開き、そこにすぐ舌を這わせていく。
「……ん……ぁ……っ」
チクリと歯を立てられ、ほんの少しだけ身体がうずいた。
騎士も気づいたのか、急ぎがちだった動作を止める。そしてゆっくりとユリウスの
服の前をはだけ、肩と胸を出させる。そして薄い胸板の突起を丁寧に舐めだした。
「ん……っ」
今度こそ、背筋がビクリとはねる。
舌で愛撫された箇所から、何とも言えない熱い何かを感じた。
騎士は手首をつかんでいた手を離し、両手で再びユリウスを押さえつける。
「やめ……止めろっ!」
騎士の××を育てる作業からは解放された。だが両手でいくら騎士の頭を叩いても、
騎士は胸の愛撫を止めない。
そして舌で転がされ軽く歯を立てられるたび、うずくような快感が背筋をぞくぞくと走った。
「はあ、はあ……」
いつの間にか自分の息さえ荒くなっていた。
ついに騎士の頭を叩く作業も放棄し、ぐったりと手を左右にたらした。
「大人しくなったみたいだな」
そして騎士は笑い、ユリウスの上から起き上がる。
「もっと楽しもうぜ。元に戻る前にさ」
そう言って、自分の着衣のベルトに手をかけた。

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