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■緋と藍の時間4

※R18

夕焼けが、窓の外の血のような夕焼けが、あまりにもまぶしい。
捕らわれていたときは、あれほど焦がれた空だったのに、現在は忌まわしいとさえ感じる。

「ん……ぁ……」
「思ったより、慣れてるよな」
こちらの頭を床に押さえつけ、背にのしかかる騎士は嘲笑する。
慣れてるわけがない。だが潤滑油の助けを借り、騎士の指が後ろにねじこまれる。
「……っ!」
頭を押さえつけていた手が髪を引っ張り、わずかに騎士の方へ顔を向けさせられる。
「……ん……」
そして後ろから、指の鈍痛が消える。そして騎士の両腕が自分を抱きしめた。
「ユリウス……」
深く口づけられる。
もちろん、そんなことをされても全く嬉しくは――。
――…………。
そのとき一瞬だけ、甘い何かが胸をかすめた。
――……?
追究しようとした違和感は、すぐに消し飛ぶ。そして背後から声がする。
「ダメだ……はは……弱い物をいじめるのは騎士じゃないんだけどな」
苦しげなこちらを見、騎士はまた笑う。
「いいや、ユリウスはユリウスだ。子供でも、弱い物でもない」
そうして、またこちらを床に押さえつけた。
「ユリウス、入れるぜ?いいよな」
「…………」
大人の体重に寒気を覚え、必死に首を左右にふったつもりだった。
だが後ろに忌まわしい記憶しかない生ぬるさを感じ、歯を食いしばるしかなかった。

「……っ……!!」
灼熱のような塊を強引に後ろにねじこまれ、息が止まる。
「ん……や……っ」
二度と味わいたくないと思っていた圧迫感と痛みに、冷たい汗がどっとにじみ出た。
「……はは……やっぱり、ちょっとキツイな」
騎士の声も、苦痛を耐えているようだった。
「痛……出て……け……っ」
相手が耐えかねて止めてくれるのではないか。
わずかでも期待し、声を絞り出したが、
「そう言われると、逆に誘われてる気になって、くるんだよな」
「……っ!!」
逆に楽しそうな声。容赦のない力で突き上げられた。
「ユリウス……っ」
騎士の手が、自分の胸に爪を立てる。
「ん……――んんっ!……」
後ろの奥深い場所と胸を苛まれ、必死に身をよじって逃れようとした。
もちろん無駄な努力だったが。だが騎士は思ったよりアッサリ手を離した。
「あっと、ごめんな、ユリウス……はは、小さいから興奮したみたいだ。
俺って、そんな趣味はないはずなんだけどな」
悪びれていない。こちらの苦しむ声が聞きたかったのでは、と勘ぐってしまう。
だが騎士の方は、ゆっくりと腰を動かし始めていた。
「あ……ああ……っ止め……痛い……っ」
身体を引き裂かれるような痛みに、涙がポタポタと床にこぼれる。
「ユリウス……だったら、思い出してくれよ」
まだ苦しげな騎士。だがその声には、欲望の色が戻り始めていた。
こいつも道化たちと同じだ。意地悪で、何を言っているか分からない。
「……ユリウス……俺を……」
騎士の熱い×××が自分の中を侵略していく。そう思うと嫌悪しか――。

『ユリウス』

「……ッ」

瞬間、電撃のように背筋を何かが走った。
分からない。だが今、確かに感じた。
あの二人に苛まれているときは、全く感じなかった何かを。

――……前にも、これと同じようなことが……。

「ユリウス……っ」
「――っ」
まただ。身体の中の時計が、奇妙な音を立てた気がした。
名前を呼ばれ、こちらの苦痛お構いなしに深く突き立てられる。
嫌悪と憎悪しか感じない。そのはずなのに……。
――熱い……。
なぜだろう。
「……ユリウス」
名前を呼ばれるたびに、身体が熱くなっていく。
懐かしいような、どこか切ないような思いを伴って。
「ん……ぁ……」
「ユリウス……ユリウス……っ」
×××が内側を抉るたびに、たまらない何かがこみ上げる。
それがどうしてか、徐々に苦痛を遠のかせていく。
――どうし、て……。
熱くなった身体を震わせ、何度も突き上げられながら、ワケも分からず床にすがった。


窓から差し込む夕日がまぶしい。この呪われた夕焼けはいつ終わるのだろう。
「ぁ……はあ……ぁ……」
認めたくないが、間違いなく痛みは遠ざかった。
そして代わりに別の感情がこみあげている。
打ちつけられるたびに出てしまう声も、抑えるには限界だった。
「ユリウス、もしかして、感じちゃってる?」
気づいたのか、笑いを含んだ騎士の声がした。
「違……っ」
押さえつけられたまま、首を左右に振るが、
「好きだもんな、ユリウスは。ジョーカーさんたちも、そんな声で誘ったんだろ?」
「……違、う……」
必死で答えたが、
「俺って不幸だよな。外を出歩いてる間に、恋人が特殊な嗜好に目覚めて浮気だもんな」
謎の言葉を吐き、騎士はさらに腰を動かす。
「ん……ぁ……あ……!」
もう自分でもごまかしようのない、強烈な快感だった。
「こんなにひどくされて感じるんだ。相変わらず××だよな」
「……っ……!」
反応している自分の××を騎士に無遠慮につかまれ、イッてしまうところだった。
「ダメ……ダメ、だ……」
自分でも何を言っているか分からず、汗ばんだ身体をよじる。
「うん、そうだな……でも、俺も……」
のしかかる騎士が、後ろから耳朶をかむ。
拘束する片手はユリウスの××を扱き、別の手は胸の先端を弄る。
全身を快感に包まれ、内に感じる騎士の熱も限界寸前のようだった。
「あ……ああ……っ……出……あ……っ」
「ユリウス……――っ」

ひときわ強く名前を呼ばれた、と思った瞬間に頭が真っ白になる。
一瞬遅れ、内側に生ぬるい熱が大量に放たれ、騎士も達したようだった。

「……ん……」
成熟しきっていない自分の雄から、白濁したものがビクビクと放たれる。
「……ユリウス……」
甘い声で名を呼ばれ、無意識にうなずいていた。
髪を優しく撫でる手は、いたわる恋人のそれだ。
騎士がゆっくりと自分の中から出、どろりとした液体が後ろから出るのを感じる。
「ん……」
それでも抱きしめる温かい手と快感の余韻。
ユリウスはそんな自分に戸惑いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。

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