続き→ トップへ 短編目次 ■緋と藍の時間3 ※R18 窓の外の時間帯は夕暮れへと変わる。 薄暗い部屋が、さらに陰鬱な色に染まるが、明かりをつける気にもなれない。 コートもはがされたユリウスは、ソファに座る騎士の前にかがむ。 やや手を震わせながら騎士の服の前を緩め、××を出すと、騎士が笑った。 「へえ。分かるんだ。向こうでも可愛がってもらってたんだな」 頭を撫でられた。 でもなぜだろう。騎士の言葉に何か暗いものを感じる。 自分だってこんなこと、したくもない。 だがこの騎士は剣を持っている。 相手を拷問することも切り裂くことも、簡単にやってのけるだろう。 「ん……」 意を決して口に含み、陰鬱な記憶の命ずるまま、口を動かし、手を上下させる。 「本当に慣れてるな……あっちで、どれくらいさせられたんだ?」 声はやわらかい。だがこちらの髪をつかむ手が、少し強くなった。 ――痛い……! 「ああ、ごめんな、ユリウス。でも俺に嫉妬させるユリウスが悪いんだぜ?」 ――嫉妬……? よく分からない。だけど機嫌を損ねるのが怖くて、必死に口を動かす。 騎士の××はすぐに反応し、次第に容積を増していった。 「そう、だよ。嫉妬するんだ。だって俺は……ユリウスの……――だから……」 騎士の言った『ある言葉』に目を見ひらく。 普通、『それ』は男と女でなるものだ。 いや男と女であっても、大人と自分のような小さいのが、なるものではない。 「こら、ユリウス。止めるなんて悪い子だ」 コツンと頭を叩かれ、ハッとして口の動きを再開させる。 苦しい。舌も手も疲れた。休みたい。 「あははは。眉よせちゃって、そそる顔をするなよ……もっといじめたくなる」 ――……っ! 騎士の手が伸び、少し強く、こちらの胸の尖りを弄り始めた。 ――や……だ……っ! 鈍い痛みと恥ずかしさで、奉仕を続けながら身体を離そうとする。 だが、その前に騎士の足が器用に動き、こちらの脱出を阻んだ。 たかが足と思われたが、鍛えているのか力が強い。押さえつけられ、逃げられない。 あきらめて、悪戯をされながら、奉仕を続けていると、 「へえ。あれだけされて、まだ羞恥心が残ってるんだ。 小さくなっても真面目だよな」 別の手が髪を軽くつかむ。言われている意味がよく分からない。 そして口の中に生温い味を感じ、それどころではなかった。 不快感に、一刻も早く逃げ出したいけれど、それは出来なかった。 窓から差し込む夕日がまぶしい。薄暗い部屋には苦しそうな息づかいと、時折誰かが 笑う声が響いていた。 そして必死に口を動かし、どれくらい経っただろうか。 「ん……ぅ……」 頭を撫でていた騎士が、ふいにこちらの顔を押した。 口内の圧迫感と苦しさが消え、一瞬だけ安堵した。しかし騎士は髪をつかんだまま、 「ユリウス……出すぜ……」 ――っ……! 顔をそむける間もなく、顔に生暖かい液体がかかった。 「はは。大人より興奮するな、こういうのは」 ×××をこちらの顔にすりつけるように、残りを出し切り、騎士は嘲笑する。 ユリウスはにじんでくる涙を、懸命にこらえた。 ――はあ、はあ、はあ……。 やっと足がどけられ、髪から手が離され、こちらも顔を離す。 「ユリウス、使う?」 差し出された布をひったくるように受け取ると、必死に顔を拭いた。 そして嫌悪と憎悪をこめ、ソファに座る騎士を見上げると、 「可愛いよな……本当に、可愛い」 騎士の方は愛おしげな目で、またこちらの頭を撫でてきた。 「ジョーカーさんたちが執心してたのも分かるぜ。 ……ちょっと、歯止めがきかなくなりそうだな」 「っ!!」 そして逃げる間もなく手首をとらえられ、再び床に押し倒された。 「これはゲームなんだぜ、ユリウス」 暴れる自分の四肢を押さえつけ、騎士は笑う。 「思い出せたら、おまえの勝ちだ」 ――思い、出せたら……? そういえば、悪夢の中の男たちも似たようなことを言っていた。 自分は何か重大なことを忘れているらしい。 重大なことと言えばもちろん、自分に関する記憶の全てだ。 だが名前以外は未だに何も思い出せない。 今いる、この乱雑な場所にかすかな懐かしさを覚えるが、それもおぼろげな記憶だ。 ――もし、思い出せなかったら……。 すると騎士が考えを読んだように笑う。 「思い出せなかったら、俺がずっとユリウスを守るだけだ」 嬲る、の間違いではないか?と思ったが口には出せなかった。 騎士が喜ぶと思ったからだ。 「それじゃ、楽しもうぜ。ユリウスが思い出すためにさ」 そう言って、騎士は身体を起こし、卓上に置いてあった機械油の瓶を取った。 ………… ――……んっ……! 背中からのしかかられ、床についた腕で身体を支える。 恐怖しか感じないのになぜか汗がにじみ出た。 「腕が震えてるぜ。怖い?悔しい?」 もちろん返事などしない。 そして慣れた、けど慣れたくもない鈍痛を後ろに感じる。 「ユリウス。ほら、力を抜けよ。もう一本増やすぜ」 ――……っ! 残酷な言葉と共に痛みが増した。 誰か助けてほしい、と思う。 だが部屋の外に人の気配は全くない。 もしかするとこの世界には、自分とこの男しかいないのではないか。 そんな馬鹿な思考が一瞬だけ頭をかすめた。 3/10 続き→ トップへ 短編目次 |