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■時計と麦の穂5

※R18

両手で顔をはさむようにされ、何度も唇を重ねられる。
「ん……」
舌を少し出せば、応じるように捕らえられ、強く吸われる。
口内に下を差し入れられ、殴られたときに切れた場所を執拗に舐められた。
「ん……は……」
鈍い痛み。そして荒く、急くように、角度を変えては深く差し入れられる。
部屋には荒い息づかいが絶え間なく聞こえた。
――何とかして……時計を……。
だがユリウスは口づけを受けながら、そればかりを考えていた。
しかしわずかに手を伸ばしても、お見通しだと言わんばかりに手を押さえられる。
「…………」
さらに強く抱きしめられ、髪をかき抱かれる。
気がつけば床に押し倒され、逃げる場所がどこにもない。
彼の手はこちらの衣服にかかり、少しずつ緩めていく。
「おい、やめろ……」
いつもの悪質な悪ふざけとは様相が異なる。
だが三月ウサギは、むき出しになったユリウスの鎖骨に口づけ、
「う……っ!」
以前に噛みつかれた箇所をなぞるように歯を立てられ、鈍い痛みに意識が覚醒する。
「いい加減にしろ……この……っ!」
背中を叩き、肩を押し戻そうとするが、三月ウサギは完全に無視して、さらに肌を
露出させていく。そしてユリウスに何度も口づけ、沈痛な声で言う。
「――……!――……っ」
「……っ!」
三月ウサギの声を聞き、ユリウスの目が見ひらかれる。
こちらの服を暴き、肌を傷つけながら三月ウサギが今しがた呼んだ『名』は、自分の
ものではない。そう悟った瞬間、ユリウスは三月ウサギの耳をつかみ、
「エリオットっ!!」
怒鳴った。心の底からの叫びを。
「……黙ってろよ」
だが三月ウサギにうるさそうに手をはらわれ、もう一度覆いかぶさられ、叫びを封じられた。

…………

宵の月明かりが、作業場の小さな窓から差し込む。
「あ……はあ……」
床の上には、二人分の服がぐしゃぐしゃに積まれている。
床の上で絡み合う二人は、吐息に欲望を交え、互いの身体をまさぐりあっていた。
「エリオット……ん……」
ユリウスは手を伸ばし、三月ウサギの頭を抱きしめ、口づける。
そして自分と違って、鍛えられた男の汗ばんだ腹筋を撫でた。
「時計屋……っ!」
三月ウサギも、今はスラックスをはいただけで上半身は何も着ていない。
そして首筋に、胸に、晒された素肌に、飽きることがないかのように舌を這わせ、
時おり歯を立てる。そして下半身に遠慮なく手を伸ばし、すでに先走りを零している
ユリウスの場所で、執拗に手を動かした。それから床上で喘ぐユリウスに、
「おい、時計屋。アレは、どこだ……?」
「……?」
意味が分からず、目を開け、見返すと、
「あんたがいつも仕事で使ってる機械油だ……どこにある?」
「――っ!」
相手が何をしようとしているか悟り、ユリウスは快楽の縁から正気に戻された。
「待て、私たちは男同士だぞ?そんな……っ!」
「今さらだろう?それとも、無理やり入れられてえか?」
嘲笑と、殺意に満ちた瞳に、喉まで出た拒絶が引っ込んだ。
友人の死が、そこまで奴を追いつめたのだろうか。
「戸棚の……工具箱の……中に……」
場所を教えると、三月ウサギが立ち上がり、乱暴に作業台の方へ歩く。
逃げる最後のチャンスがあるのなら今だ、と思いながら、ユリウスは横たわったまま
動けない。ここまでの屈辱を受けていながら、上を仰ぐ自分自身をどこか非現実な
思いで見つめていた。
「チっ……分かりにくい場所に置くんじゃねえよ」
戻った三月ウサギは八つ当たりのように吐き捨て、それから機械油の中身を己の手に
ぶちまけ、指先になじませる。それからふいにユリウスを向いた。
「……っ!」
その視線に恐怖する。だが再び覆いかぶさられ、後ろに手を這わされても、何一つ
抵抗が出来なかった。
そして足を抱えられ、後ろに強引に指をねじこまれ、苦痛の声が上がった。

「や、やめろ……っ!……痛……っ!!」
身体をよじって苦痛から逃れようとするが、三月ウサギはこちらを押さえつけ、逃がさない。
「いいから力を抜けよ、時計屋……指、増やすぜ」
「ぐ……っ!」
さらに強引にねじ込まれ、擦られ、異物感と圧迫感。それに激痛に涙がにじんだ。
「止めろ……頼むから、止め……!」
あまりの痛みに情けない懇願さえ出たが、三月ウサギは一片の容赦もなく指を動かし
内側を鳴らし続ける。
「いいから黙ってろよ。後ろにぶちこむんだ。切れたら終わった後が地獄だぜ?」
「そんなこと……あ……く……っ」
今だって、十分地獄だ、と反論しようにも苦痛に翻弄され、言葉が出ない。
永遠とも思える時間、三月ウサギはなおも拷問を強要していたが、
「そろそろいいか……」
「……っ」
ふいに苦痛と圧迫感から解放され、ユリウスは胸を上下させて息を整えた。だが、
「何、腑抜けた面してんだ。これからだろうが」
「――っ!」
三月ウサギが前をゆるめ、怒張した××を出すのを見て、息を呑む。
同時に、指を入れられただけでも、十分に苦痛だったことを思い出し、
「頼む……それだけは、勘弁してくれ……いつものように、口ではダメなのか?」
だが三月ウサギはユリウスの足を抱え、生温い××を押し当てながら、
「当たり前だろ?俺は、あんたの泣き叫ぶ顔が見たいんだからな」
狂気をはらんだ目でそう言うと、無理やりに侵入した。

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