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■時計屋は流され中2・下

「ユリウスって、何だかんだ言って後ろが具合いいんだよな。
この間も森で見かけたから散々追いかけて、力尽きて転んだところを捕まえたんだ。
とりあえず最初に口でさせてもらって、全部は脱がさないで無理に入れたとき、
ちょっと中を傷つけたみたいでさ」
「発情して見境が無くなったか?呆れた奴だ」
「でも、みっともなく止めてくれって懇願しながら勃ってるんだぜ?
ほら、今みたいな感じで」
「……っ」
二人の視線が一点に集中し、消えたいと本気で願った。バラされた屈辱もあり、
拷問を受けてもいいから、騎士の×××に歯を立ててやろうかと思った。
「ん……っ」
しかし見越したように、ぬめる自分の×××をトカゲに扱かれ、機会を失した。
「だろうな。こいつは根っからの淫乱だ。この間も……
話は続く。思い出したくない話、決して他人に知られたくない恥辱の話が二人に
共有されていく。
冗談ではない。あのときだって終了後は何もせず夜の森に放置され、塔に帰るまで
どれだけ苦労したことか。
仕事を始めるに始められず伏せっていたらトカゲが来て……
「時計屋……くそ……」
けれど非道を訴えようにも一切の自由がきかない。
そしてトカゲに根元まで深く突き立てられ、ビクッと身体が震えた。
「はぁ、はぁ……時計屋……あ……」
「ん……ん……」
「はは。トカゲさんもユリウスも乗ってきた?いい顔してるぜ」
そう言ってエースがこちらの頭をつかみ、動かしてくる。

「……っ……っ……!」
三人で獣のような声を出しながら、どれほどの時が経っただろう。
「時計屋……時計屋……う……っ」
やがて小さく声を上げたと同時にグレイが達した。
内に迸るいつもの不快な感触が走る。
ほぼ同時にエースも、
「ユリウス、行くぜ」
「……っ!」
大量の白濁したものを喉奥まで吐き出した後、
「ふう……」
エースがやっと出て行き口が自由になった。
屈辱感は最高潮に達している。
それでも渾身の努力をもって何とか飲み込み、命ぜられる前にエースのモノに再度
口をつけ、舌で清めた。そして立ち上がるのも億劫で、這ったまま向きを変え、
今度はグレイに同じ事をする。
「ん……」
残った残滓を中に出し、満足そうにグレイはユリウスの頭を撫でた。
ユリウスは虚ろに床を眺める。
腕を傷つけられ、しばらく仕事は出来ない。
もう出て行ってほしい。
「うわ、ユリウスー。しっかりしろよ」
エースが気遣わしげに触れてくる。
だが今度は、前回のときのような恥辱を強制されずにはすみそうだ。
「時計屋。騎士が苦痛を強いたな。水は飲めるか?」
「ちょっとちょっとトカゲさん」
喉にコップが押し当てられ、口を開けると清浄な水が入ってきた。
本人の顔は見たくも無いが水はありがたい。音を立てて、がぶがぶと飲んだ。
そして叫びすぎてかすれた声で、
「さっさと出て行け……」
それだけ言ったが、
「何言ってるんだよ、ユリウス。俺はこれからだぜ?」
「俺も、まだ頼みたいところだな」
「…………」
二人の男が、欲望と加虐心の入り交じった目で自分を見下ろしている。
抵抗しなければ、と思う。
傷つけられてもかまわないから、憎悪の言葉を叩きつけ、余裕面を少しでも崩して
やりたい。
「でも脅すのに腕をやったのは失敗だったんじゃ無い?トカゲさん。
仕事しかやることがないから、仕事くらいはさせてあげないと」
「そうだな。逃げられないようにするなら足か」
「……止めろっ!」
逃げようとするが、息が合ったようにエースがユリウスに背中からのしかかる。
「おまえ……何を……っ」
グレイがナイフをかざすのが見えた。
「安心しろ。少し動けないようにするだけだ。それに傷などすぐに戻るだろう」
「でも腕はしばらく治らないよな。そうだ。俺、ここに泊まるよ。ユリウスも
動けないままで俺やトカゲさんに愛されていれば、しっかり考えて選べるだろ」
愛されて、ではなくいたぶられて、の間違いではないだろうか。
二人はユリウスへの『可愛さ余って……』から一時同盟を組んだらしい。
「どちらも選ぶものか。おまえたちなど、おまえたちなど……」
返ってきたのは冷笑と嘲笑だった。
「安心しろ。俺はこの騎士のようなクズでは無いから、動けないおまえをちゃんと
世話してやる。だからおまえも……せいぜい奉仕するんだな」
「あはは。ひどいなトカゲさん。俺だってユリウスの世話なら嫌いじゃ無いぜ?
ユリウスは幸せ者だよな。俺もトカゲさんに負けないように愛してあげないと」
もう分からない。こいつらの言っていることが人の言葉かどうかも。
「トカゲさん、どこを斬る?うちの城で拷問するときは、ここらへんを……」
「それは苦痛が強い箇所を故意に選んでいるんだろう。
最小の傷と痛みで確実に動けなくするならこのあたりを……」
「はは。元暗殺者の言うことって参考になるな」
自分を奪い合う者たちが雑談に興じ、二人から愛されている自分は腕と足を
傷つけられ、性玩具になろうとしている。
――壊れているんだ。元から壊れているんだ、この世界は……。
するとエースがユリウスの前に手を伸ばし、
「……っ!」
羞恥で真っ赤になるのが自分でも分かった。
「あはは。ユリウス、そんな期待しないでくれよ。トカゲさん、早くしようぜ。
ユリウスのココが、もう待てないってさ」
続くトカゲの言葉はもう耳に入らない。
せめて悲鳴だけはあげるまいと、拳を握りしめ床に顔を伏せる。
新たな悪夢の開始を、絶望と、わずかな欲望とともに待ちながら。

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