続き→ トップへ 短編目次

■時計塔の大型犬4

「で、おまえはいつ帰るんだ?」
腹を満たしてとっとと追いかえすつもりが、エースは未だ作業場でゴロゴロしている。
夜も更け、本格的に仕事に入りたいユリウスは苛々する。
「んー?」
図々しい駄犬に、ユリウスは眼鏡を置いて立ち上がり、強引に追い出してやろうと
決意する。またコートを脱いでソファでゴロゴロする騎士は、
「んー……」
と寝ながらユリウスの方に両腕を突き出す。
「いいから、とっとと出てい……」
腕をひっつかんで立ち上がらせようとし、逆に引き寄せられた。
「お、おいっ!私はこれから仕事で……!」
「なあ、ユリウス……『サービス』してくれるんだろ?」
「…………」
耳元でささやかれ、なぜか沈黙する。
しばらく互いに見つめ合い、やがてどちらともなく唇を重ねた。

結局、場所を変えるのももどかしく、ソファで抱きしめ、唇を重ね合う。
最初は触れるだけ、それが徐々に深いものになっていく。
エースを抱きしめ、顔を見下ろしてもう一度唇を重ねようとすると、
「はあ……恋人が自分より背が高いって複雑だぜ」
自分から下になっておいてぼやかれた。見下ろされるのが不満らしい。
「……何なら、少し若返ってもいいが」
「その歳で若返るとか言うなよ。それに、ユリウスは多少戻ってもデカいままだろ?」
「そうだな」
二人で顔を見合わせ、フッと笑う。
仕方なく、ユリウスが起き、二人してソファに座りなおす。
エースは一度立ち上がってユリウスと正面から向き合い、身体をかがめる。
「好きだぜ」
愛おしげに髪を撫でられ、肩を抱かれる。唾液の絡みあう音が部屋に響いた。
「ユリウスー」
「何だ?」
エースはユリウスに頭をこすりつけてくる。今度は大きな猫ときた。
「ユリウスー、ユリウスー」
「だからなんだ?」
「かまってくれよ」
「かまってるだろう、馬鹿が」
わざとらしく甘えてくる騎士の頭を笑ってこづき、もう一度キスをする。
するとエースは先に進まず、膝をついて中腰になり、ユリウスの膝に頭を乗せた。
「どうした?猫に転職するのか?」
からかって喉をくすぐると、まんざらでもないのか嬉しそうに目を細める。
「それもいいな。チェシャ猫くんになって、時計塔で飼われたいぜ」
「……そうしたら、ますます道に迷って、私の手伝いなんか出来ないだろう?」
チェシャ猫はあちこちを放浪するのが仕事だ。
「あ、それもそうだ。俺って馬鹿だな」
「今気がついたのか?」
そして二人でまた笑い、キスをする。そしてエースの手がユリウスの下半身を見、
「……なあ、たまには俺からしようか?」
「…………」
心地良い時間が微妙に変化したのが分かり、ユリウスは黙る。
ニヤッと笑ったエースが膝を撫で上げ、
「お、おい……」
『そのあたり』を撫でられ、顔が赤くなるのが分かった。エースのニヤニヤ笑いが
嫌で、つい両膝を閉じるとエースが爆笑する。
「く……ははっははは!name4#、女の子みたいだぜ?」
「う、うるさい!」
怒鳴ればエースは笑う。そしてユリウスの両膝に手をかけ、難なく開かせる。
「な……っ」
「力の入れ方にちょっとコツがあるんだ。それに、ユリウスも期待してるだろ?」
「…………こ、こらっ!」
真っ赤になってエースを押さえようとするが、エースは笑いながらかわし、服に
手をかけてきた。

「ん……」
「…………」
いやらしい音が室内に響く。
音を立てて×××を吸われる。久しぶりに見下ろすエースの顔は思いの外、色香が
あり、快感に流されそうになりながらも見入ってしまう。
エースは先走りのものを絡め、さらに口を動かし、一心に責め立てる。
「ん……く……」
眉根を寄せて必死に耐える。けれど気がつくとエースの頭に手をやり、より快感を
引き出そうと動かしていた。
「はあ……はあ……」
舌使いにおかしくなりそうだ。手を動かしながらのけぞり、自分の方が汗をかいて
荒く息を乱す。エースを見ると、行為に集中しながら時折こちらを見て笑っている。
「この……っ……」
怒ろうとしても、遊ばれるように強く刺激され、顔を紅潮させ、吐息を出す。
「だ、ダメだ、もう、イクから……離れ……」
けれどエースは全くどかず、余計に速度を速め、促してくる。
「ダメだ、本当に離れ……間に合わな……」
そう言いつつ、エースを離すまいと頭を抱き、動かしている自分がいる。
「エース……ダメだ……あ……ぅ……っ」
出してしまい、罪悪感と絶頂感で思わずエースの頭を抱く。
「ユリウス。興奮しすぎだぜ。そんなに良かった?」
全く動じることなく舌先で先端を清め、エースは笑う。
「すまん……」
「いいっていいって」
口をぬぐい、テーブルの上においてあったコップをあおり、やはり笑う。
「ユリウスにも、たっぷりと楽しませてもらうからな」
そう言って、どこからか潤滑油を取り出した。
「とりあえず、場所を変えようぜ。やっぱ愛し合うならベッドだろ」
ユリウスはため息をつき、立ち上がった。

…………
「おまえ……ベッドはすぐ、そこだろう……!」
「だって我慢出来なかったからさあ」
ベッドのハシゴをつかみながら、ユリウスは必死に後ろからの責めに耐える。
あとは上るだけというところで『やっぱり我慢出来ない』とエースに襲われた。
「ほんの数秒も、我慢出来ないのかおまえは……!」
「ユリウスだって、我慢出来なかっただろ?俺の頭を必死におさえちゃってさ」
腰をつかまれ、がくがくと容赦なく揺さぶられ、自分でも興奮しているのが口惜しい。
ハシゴをつかむ手が震え、突き入れられるごとに切ない息が出る。
「あ……あ……エース……」
「うんうん、大丈夫。好きだぜ、ユリウス」
「あ……っ」
前に手を回され、勃ち上がりかけたモノを扱かれる。
たまらずに数段下のハシゴをつかみなおすと、余計に後ろを突き出す姿勢になり、
恥ずかしくて仕方ない。
「ユリウスー。立ってられない?そんなにイイのか?」
「この……馬鹿が……」
でも、実際にもう限界近い。自分でも腰を動かし、奥へと誘う。
「ん……ユリウス……俺も……」
揺さぶりが早くなり、ハシゴをつかむ手が汗で滑りそうだ。
「エース……エース……っ……!」
「ユリウス……っ」
何度も何度も互いの名を呼び、おかしくなるかというところで……
「……っ!」
内側に放たれるのを感じ、ほとんど同時に、自分も達した。

「はあ……はあ……」
ゆっくりと引き抜かれるのを名残惜しいとさえ感じながら、エースを振り向く。
「…………」
訴えるように見ていると、
「良かったぜ」
顔をかがめ、キスをされた。そして、
「それじゃ、もう一回行こうぜ。今度はユリウスが上な」
「おい……っ!」
抗議をしても遅く、ユリウスは半ば強引にベッドの上に追い立てられた。

…………
「で、いつ出て行くんだ?」
「あははは。本当に不機嫌だな。もう帰るって」
時計修理を後ろから邪魔されて、うっとうしくて仕方ない。
「ユリウス、大好きだぜ」
口づけをねだられ、仕方なく肩越しに重ねてやる。
「ん……」
頬に手を当て、舌を絡める。しばらくして顔を離し、
「ほら、もういいだろう。行け」
「うんうん、もう少し経ったらな」
「全く……」
どうも、しばらくいつきそうだ。
大型犬に懐かれるのも楽ではない。
――でもまあ、少しくらいはいいか。
こいつは目を離すと何をしでかすか分からない。
目の届くところにいた方が安心だ。

――本当に仕方のない奴だ。

窓の外はよく晴れ、爽やかな風が吹き込んでくる。
相変わらず自分を抱きしめる馬鹿をうっとうしく思いながら、ユリウスはどこか
穏やかな気分で時計修理を続けるのだった。

4/4

続き→

トップへ 短編目次

- ナノ -