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■ゴーランドさんと一緒5

「時計屋……好きだぜ……」
胸の時計の音が不規則になった気がする。
不慣れな場所に異物を挿入される感覚すら、ゴーランドのものだと思うと、不思議に
抵抗感が薄れていくようだった。
「時計屋……そろそろ……いいか?」
真剣な顔で聞かれ、ユリウスはボーッとしながらうなずいた。
この男なら何をされてもいい。
不思議にそう思ってしまった。

「く……」
「時計屋……大丈夫か、?あまり、無理を……」
覆いかぶさり、自分を揺さぶるゴーランドに聞かれ、ユリウスは必死に首を振る。
異物感への抵抗はあるが、念入りに慣らされたこともあり、思ったより痛みは少ない。
何より、ゴーランドが三枚目の顔を捨て、ただ一心に自分を求め、全身を叩きつけてくる。
そのことに、どこか胸が熱くなる。
「時計屋……時計屋ぁ……」
汗をたらし、快楽に理性を奪われそうになりながら、何度も何度も打ちつける。
起ちあがったモノを扱かれ、シーツをつかんで声を上げ、与えられるものを全て
受け入れる。
「ゴーランド……もっと……」
より深く受け入れたくて、ゴーランドの動きに合わせ、自分も動き出す。
「時計屋……俺も、好きだ……おまえが……」
ぐちゅぐちゅと、結合した箇所から音が漏れる。ユリウス自身もだらだらと雫を
零し、ゴーランドの手を、ソファを汚している。
抽送と合間の睦言は、いつまでも続くのではないかとさえ思った。
「時計屋、そろそろ……イク、から……」
「ああ……」
流れる汗を感じながらうなずく。
すると律動がいっそう速くなり、いや増す快感に声を上げてのけぞった。
「ゴーランド……!あ、ああ……っ!」
「…………好きだぜ……ユリウス……!」
視線が混じり合い、互いにかすかに微笑む。
そして最奥までゴーランドを強く感じた瞬間、内で迸る感覚があった。
同時に自分自身も白濁した液体を放ち、声を上げて達した。

…………

「敵同士で男同士の恋愛なんて、禁断の愛にもほどがある感じですよねー!」
「いっそのこと男同士で結婚式しちゃいますう?きゃー!」
「ブーケは私に投げてくださいねー、時計屋さん!」
従業員たちは……従業員たちはどこまでもあっけらかんとしたものだった。
「おまえ、どういう教育をしてるんだ……」
どこから噂が流れたのか……いや、引きこもりの時計屋がこれほど頻繁に遊園地を
訪れているのだから、自然とそういう噂にもなるか。
だが明日には国中に噂が広がっているかと思うと、頭が痛いどころではない。
ゴーランドも申し訳なさそうに
「す、すまん」
と頭をかく。従業員たちの表裏のない祝福を受け、ユリウスはただうめいた。

「今度はおまえが時計塔に来い。来るたびに、はやしたてられては胃が持たない」
遊園地のすみで二人きりになり、ようやくユリウスは不満をぶつけた。
「そうなんだけど、いちおうオーナーだしな。それに、俺が時計塔に行ったら、
多分、奴に斬られるだろうしなあ……」
「奴?」
『時計塔』『斬る』の組み合わせで浮かぶ人物は一人しかいない。
「あいつのことは誤解だと言っているだろう。
私が同性とつきあっていようが動じない男だ」
笑顔でからかいの種にする姿が目に浮かぶ。だがゴーランドは、
「あんたに関してはどうかな。異性ならともかく同性におまえを盗られたんだ。
虎視眈々と寝首をかく隙をうかがっているかもしれないぜ?」
「そんなわけはないだろう。あいつが××××だとでも言うのか?」
「いいや。だが病的にあんたに依存している。黙ってはいないだろう」
「?」
ゴーランドの発言は分かるようで分からない。
奴がそこまで自分に執着しているとは、とても思えないのだが。
しかし問いただす前に肩を抱かれた。
「まあ、負けないように頑張るさ」
そう言って口づけられた。

「……私にも分からない」
「は?」
ゴーランドに聞き返されるが、知ったことではない。
「おまえの告白を受けた理由など……受けたいから受けただけだ」
抱きしめたいから抱きしめる、触れたいから触れる、それでいい。
「はは、おまえらしいな」
それでもゴーランドは嬉しそうに微笑む。
「しかし、色気がねえなあ。もう少し俺にリードさせろよ」
「悪かったな、私が陰気な時計屋で、女でなくて」
「誰もそんなこと言ってねえだろ。本当に可愛いのな、あんた」
「うるさ……ん……」
怒ろうとしたのを、抱きしめられた。
遊園地の隅とは言っても昼間だ。
誰かに見られているかもしれないが、この馬鹿馬鹿しい格好の男に抱きしめられていると、
何だかどうでもよくなってくる。
「俺が守ってやるよ。騎士なんかより、ずっとな」
「この……馬鹿……」
ユリウスは顔を上げ、自分もゴーランドを抱きしめかえす。
驚いたように見開かれるゴーランドの目と、すぐ肩に回される腕。
そうされると何だか安心する。
「言ったことは、守れよ」
やっとそれだけ言って、ゴーランドを見上げる。
そして、深いキスをした。
この男が好きだ。
例え領土を違えようとも。
時計が動く限り、ずっと一緒にいよう。
ユリウスはいつまでも愛する男を抱きしめていた。
この上なく幸せな気分に浸りながら。

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