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■白と黒の時間6

「……っ!ひ……っ」
あまりの痛みに悲鳴さえ出なかった。

自身の身体と泡の滑りもあって、ジョーカーのモノはあっさりと最奥に達する。
そして痛みに慣れる間もなく、ジョーカーが動き出した。
ようやく浴室に悲鳴が響いた。だがジョーカーは笑いながら、
「はは。小さいから厳しいかと思ったけど、結構いけるじゃないか。
あ、でも滑って落としたらごめんね」
「いや、それだったらおまえもタダじゃすまねえだろ、ジョーカー」
湯に浸かりながら、もう一人のジョーカーは呆れたように言う。
ユリウスの方は涙も出ない。壁に押しつけられ、逃れるすべはどこにもなかった。
いったい、何の罰で自分はこんな苦痛を強要されるのだろう。
涙でにじむ視界でもう一人のジョーカーを見ると、どこか気まずそうに、
「おい、思いださねえか?おまえ、いつもあいつと……してただろ?」
「……?」
だが思い出すことは何も無い。いや、だが確かに以前、これと同じような――
「ジョーカー、余計なこと言うなよ」
一際強く突き上げられ、それも霧散する。
だが泡の滑りやジョーカーの体液もあり、予想していたよりも痛みは早く引き、
代わりに快感が内側を支配しつつあった。起ちあがったモノがジョーカーの腹に当たり、
「はは。可愛いなあ。こんな体位じゃなかったら可愛がってあげたいんだけどね」
そして抽送は一層強くなり、揺すぶられる中で何も考えられなくなる。
動きが変わり、体勢がより不安定になったため、反射的に目の前の男にしがみつくと
「そこまで我慢出来ない?今、あげるからさ」
意地悪な笑いが振ってくる。だが手を離したくとも、ジョーカーが壁からわずかに
後ろに下がったらしく、もう壁は支えになってくれない。
ユリウスは小さな身体でただ、苦痛と快楽に耐えた。
「そろそろ……行くから……っ!」
自分の身体をつかむ腕が強くなり、同時に一気に突き上げられる。
「…………っ!!」
視界が真っ白になり、ユリウスは小さく達した。
そして一呼吸遅れ、内側に白濁したものを放たれた。
「ああ、疲れた。やっぱりこういうのは得意じゃないな」
そう言ってジョーカーはつながったままゆっくりとユリウスを床に横たえ、内側から
出た。そしてわずかに力を抜いたユリウスの顔に、雫を垂らす自分のモノを近づけ、
「――っ!!」
「ねえ、ちょっとじゃないか、すぐ洗ってあげるし、そんな嫌な顔をしないでくれよ」
残ったものを顔にかけ、ジョーカーはそう言って笑った。
だがこれで終わったと思ったのもわずかな間で、
「おい、終わったならどけよジョーカー」
湯から上がったジョーカーが今しがたユリウスを責めていたジョーカーを押しのける。
「あれえ?心配そうな顔して、君もやることはやるんだ」
ジョーカーの嘲笑が聞こえる。それに怒鳴り返す声。
ユリウスはもう何も見ていたくないと目を閉じた。だが、
「今まで入れられてたなら、慣らす必要はねえな」
残酷な声と共に、十分に大きくなったジョーカーのモノが一気に中を貫いた。

…………

目を開けるとやけに広いベッドの中だった。薄暗い部屋の内装は、どこか見覚えが
ある気もしたが、何か思い出そうと努力する気にもなれない。
ユリウスはやわらかなベッドの中に声も無くうずくまった。
「早く、思い出せよ。あいつはいつ来るか分からねえし、おまえも塔に帰りたいだろ?」
誰かが背中を撫でる。どちらのジョーカーか、何となく分かるが顔を見たいわけでもない。
反応の無いユリウスに構わず、背中を撫でる手はユリウスを抱きしめた。
「早く思い出してくれ……でなきゃ、俺は――」
「…………」
ユリウスは目を閉じる。
そして、どこかにある家に帰れることを願った。

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