続き→ トップへ 短編目次

■白と黒の時間5

悪意のある笑顔で言われ、どんなご褒美を期待しろと言うのか。
なおも睨んでいると、
「俺の機嫌、取っておいた方がいいと思うよ。ここじゃ一番の権力者だし」
「だな。もっとえげつないことも、いくらでも出来るんだぜ。こいつの方はな」
前を軽く清め、服を正したジョーカーも加わる。
「…………」
記憶を、どうにかして記憶を取り戻したい。だが何も思い出せない。
なら拒否したい。
自分でしなければ出来ないことなのだから手を動かさなければいい。
それなのに、彼の望み通りにしなければ、もっとひどい目にあう予感がする。
直接的な暴力に訴えるジョーカーと違い、彼以上の何かをされそうな……。
ユリウスはのろのろと自分の手をのばし、自分のモノに添えた。
ゆっくりと扱き出すと、二人の見物客が笑う声が聞こえる。屈辱に視界が涙で
かすむが、なるべく流し、別のことを考えるようにした。
時計。時計のことを考えると、なぜか不思議に気分が落ち着く。
時計屋というくらいだから、きっといつも時計を売っていたのだろうか。
いや、そうではなかった気がする。それ以外は思い出せない。それに、時計だと
心は安らぐが、反応にはつながらず、行為が一向に終わらない。
なら他に思い出せることは。
赤――そして黒。
「!」
ユリウスの中がドクンと熱くなる。
なぜ赤、そして黒なのか。
さっぱり分からない。
それなのに、その二つの色が自分に不思議な感情を生み出す。
気がつくと手の動きが速く、快感も増していく。だがはやす外野の声は耳に入らない。
何か懐かしい、勇気づけられるような、不安な何か、そして欲望。
それに意識を集中し――やっとのことでどうにか吐き出すことが出来た。
「ふふ。おつかれ、ユリウス」
手も、身体も白いもので汚し、震えながらソファにうずくまるユリウスに、
ジョーカーが笑う。そして、さっきのようにユリウスを抱え上げると、
「それじゃあ風呂に入ろうか。きれいにしてあげるって約束だしね」
「……?」
身体をきれいに出来るならありがたいが、この男にはどこか不安を感じる。
「おい、ジョーカー。おまえやっぱり……」
乱暴な方のジョーカーが低く言う。
「当たり前じゃないか。何だって俺だけが置いてけぼりにならなきゃいけないんだよ」
「だけど、今はガキなんだぞ。怪我でもさせたら……」
「ジョーカー。×××を強要しておいて全く説得力ないんだけど?
ちゃんと気をつけるさ。
それに、そこまでブツクサ言うなら、俺だけで独り占めして混ぜてあげないよ?」
「…………まあ、刺激で思い出すかもな」
「?」
何だろう。二人の会話からとても嫌な予感がする。
だが抱え上げられ、半裸の状態で逃げ場などあるわけもない。
何があっても、これ以上ひどいことはないだろう。
ユリウスはそう思い、自分を納得させるしかなかった。

…………

「痛い……嫌だっ!止めろっ!!」
滝のようなシャワーの音の中で必死に叫ぶが、自分を後ろから抱きかかえる力は
ゆるまない。
「ジョーカー、ほら、もっと大人しくさせてよ。洗ってあげられないじゃないか」
「うるせえな。泡で滑るんだから仕方ねえだろ」
湯気の立つ豪華なバスルームの中で、ユリウスはジョーカーに抱えられ、
もう一人のジョーカーに前から足をつかまれ、大きく開かされていた。
自分の前に立つジョーカーは悲鳴に全く構うことなく、泡だった手でユリウスの
前を洗い、後ろの口に指を潜り込ませる。快感と苦痛に叫び、身をよじるが、
押さえる力が強くなるだけだった。
「さて、このくらいでいいか。ジョーカー、どうも」
ユリウスを抱えていたジョーカーからユリウスを抱き取ると、ユリウスの背を
壁に押しつけた。
そして自身の先走りと泡でぬめるものを後ろに押し当て――ユリウスに用意を
させずに、一気に貫いた。

5/9

続き→

トップへ 短編目次

- ナノ -