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■トカゲの執着心

※R18

クローバーの塔は宵闇に包まれている。
ユリウスの作業場の窓にも、夜の雪がちらついていた。
だがソファに座るユリウスは、それどころではなかった。
「トカ……ゲ、よせ、やめ……」
見下ろすと、足の間に、トカゲの端整な顔が見える。
ユリウスの前に跪き、前を暴き、×××を貪っていた。
「あ、ああ……く…っ……」
声を抑えられない。顔が上気し、息が乱れる。
×××は、爬虫類の舌技に翻弄され、すでに限界まで張り詰めている。
先端はみっともなく雫までこぼしていた。

「はあ……あ……う……」
奥まで咥え込まれ、促すようにさらに強く吸われ、絶頂は早かった。
「――っ……!!」
ついに、声にならない声を上げて達し、トカゲの口内に放ってしまう。
「はあ、はあ……」
快感の余韻と罪悪感で、ユリウスはソファに沈み込む。
一方、トカゲは口元を軽くぬぐって立ち上がると、邪悪な笑みになる。
ユリウスの前にかがむと、悪戯をするように髪を一房、軽く引っ張り、
「で?俺とおまえはどういう関係だ?」
「…………」
まだ根に持っていたのか。だが答えることなど、出来るはずがない。
「卑怯な奴だ。そんな目をして」
「…………」
トカゲの顔が近づき、唇が重なる。
自分の××の味がトカゲの舌から染みこみ、若干の吐き気を覚える。
だがユリウスもそれ以上抵抗をせず、トカゲの頭を抱く。
「ん……」
服ごしに互いの身体が密着し、二つの時計の音が混ざる。
そしてトカゲの手の動きも次第に速く、こちらの服を乱していく。
しんしんと降る雪は音を吸い込み、どこまでも静かだ。
「……分からない」
やっと、それだけ答えた。だがトカゲはニヤリと笑う。
「否定されないだけ、ありがたい」
そうしてトカゲは、自分のネクタイをするりと引き抜いた。


作業場は薄闇に包まれている。ストーブの暖色だけがわずかな光源だ。
「はあ、あ……ああ……あっ……」
ユリウスはシーツを汗ばんだ手でつかみ、声を抑える。
「声を抑えるな、おまえの部屋だろう……」
「無茶を……ん……っ」
トカゲに、むき出しの肩をかまれ、痛みよりは快感で声が出る。
「時計屋……っ!」
後ろから貫く爬虫類は容赦なく、腰をつかみ、激しく揺さぶってくる。
ただでさえ安物の寝台はギシギシと不吉な音を立て、男二人の睦み合いを支える。
体液をたっぷり吸い込んだシーツは乱れに乱れ、己の長い髪が汚れたシーツの上に
乱雑に降りかかるが、それを直す余裕さえない。
「……ん……っ……」
熱く硬い×××に奥まで貫かれ、達しそうになるのをこらえる。
内も外も先走りの液にまみれ、何度か放った白いものの上にこぼれ落ちる。
「おまえも、腰を動かせ、時計屋……」
「ん……」
命令に応じ、あえぎながら腰を動かすと、深さが増し、それだけでイキそうになる。
「トカゲ……やめ……っ」
「もう少しこらえろ、まだ始めたばかりだろう」
前に回されたトカゲの手が、×××を強く扱き、ゾクリと快感が背をつたった。
「あ……ああ……っ……もっと……強く……」
「本当に、堅物そうな面をして、おまえという奴は……」
呆れと笑いを半々に、爬虫類はさらに責めを強くし、さらに勢いを増した×××で、
何度も何度も、おかしくなるほどにユリウスを揺さぶる。
「あ、ああ、はあ……ああ……」
――トカゲ……っ!
他には何も考えられない。背後から自分を貫く男のことしか。
流れる体液が髪を穢そうが、寝台が悲鳴を上げようが、何もかもがどうでもいい。
何もかも忘れ、果ててしまいたい。
それは相手も同じだったようだ。
「時計屋……もう……っ」
さらに激しく責め立てながら、トカゲがさらに強くこちらをかき抱く。
押しつけられる熱と、貫かれる熱に挟まれ、全てが限界だった。

「――……――っ……!」

押さえきれない声を上げて達し、シーツの上に白濁したものを、勢い良く迸らせる。
「く……っ……」
同時に、トカゲがゆっくりと内から出……後ろに生温かい××がかかった。
「…………」
抗議する気にもなれず、喘ぎ、脱力したままシーツに沈んでいると、
「時計屋、大丈夫か?」
心配そうに言われ、そして後ろをぬぐわれる感触。
「別に……」
冷静さが戻り、気まずさで口ごもっていると、苦笑する気配がした。
「時計屋」
肩をつつかれ、不機嫌に振り向く。
予想通りというか、唇が重なった。
「ん……」
互いに唇を開き、舌が絡み合う。そのまま、二人は抱き合っていた。

…………

シャワーから出たトカゲは、ネクタイを締め直しながら詫びる。
「もっとおまえの側にいてやりたいんだが、仕事がな。しばらく来られないだろう」
「いつまで恋人面をしているんだ、用事が済んだならさっさと出て行け」
ユリウスは重い身体を動かし、作業台に座り、修理の準備をしていた。
するとトカゲが傍らに近づく。ユリウスの髪をすくい、口づけると、
「おまえこそ、事が済んだら冷たいものだ。性欲を満足させたら俺は用済みか?」
ここにいない恋敵のことを皮肉られた気がした。
「…………出て行け」
そしてトカゲが笑う声。
「まあいいさ、つきあってくれて感謝する。また来る」
「もう二度と来るな。何度も言っているだろう。私は男とは……」
「また来る」
遮るように言われ、ユリウスは思わず顔を上げる。
「トカゲ……」
爬虫類の顔から表情が消えている。
その身にまとう空気に、先ほどまでの甘いものは欠片もない。
トカゲは殺気さえ漂わせ、こちらを射殺すように睨み、低い声で言った。

「覚えておけよ……俺はいつまでも二番目で我慢する気はないからな」

「私は……誰も選ばない」
極力、平静を装って答えたつもりだ。だが装いきれただろうか。
最後に聞こえたのは、扉を閉める寸前にトカゲが漏らした嘲笑だった。

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