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■森の情事

※R18

そして監獄での仕事は、どうにか終わった。
「それでは、私は行くぞ」
ユリウスは立ち去ろうとジョーカーに背を向けた。
「あ、ユリウス。ちょっと待ってくれよ」
去り際に、ジョーカーに呼び止められた。不機嫌な顔で振り向くと、
「『処刑人』なんだけどさ、やっぱり誰か確保が出来ないかな?」
「何だと?まさか……」
ユリウスは眉をひそめた。ジョーカーはうなずいて肯定する。
「三月ウサギの来る頻度が減ってるんだよ」
「…………」
「ブラッド=デュプレだろうね。奴とはまだ、ぎこちないみたいだけど……」
「気色悪い説明はいい。あちらの事情になど興味は無い」
それに大方、想像はつく。
どうせ抗争に駆り出し、仕事に忙殺させ、記憶を薄れさせているのだろう。
だが取り締まる側として、罪を忘れ、居直ることは許されない。
「いい人材にアテはあるかい?誰か三月ウサギを投獄出来そうな奴は」
「……いや」
するとジョーカーは腕組みし、少し難しい顔になる。
「まあ、まだ『間が無い』から、三月ウサギもこっちに来やすい。
俺たちも、がんばって三月ウサギに揺さぶりはかけてみるよ」
「ああ、頼む」
嫌な記憶が薄れないうちなら、罪悪感も強い。
三月ウサギが自分から牢に入るよう、道化の話術に期待するしかない。
「でも、それでもダメだったら……」
意地悪く言うジョーカーに、ユリウスは肩を落とす。

「適材がいないなら、時計屋が『処刑人』を『兼任』するしかないだろう」

「……出来るの?君に」
ジョーカーの表情は相変わらず読めない。

「ああ。そのときは私が三月ウサギを投獄する」

…………

…………

陽光さす森の木陰で、二人の男が怒鳴り合っていた。
「おまえ……いい加減に……っ」
前をはだけさせられ、ズボンを下ろされ、草むらにうつぶせにさせられ、何とか
逃れようとユリウスは暴れるが、
「いや、だって春だろう?春って、動物が子どもを作る季節なんだぜ?あはは!」
後ろから押さえつけ、揺さぶる騎士は前を緩めただけの格好だ。
「おまえは……発情期の動物か……!」
テントで目覚め、出発の運びになった途端、これだ。
「春っていいよなあ。夜でも外は温かいし、開放的だし」
「おまえは、どの季節だろうと……×××××だろうが!!」
「あははは!ツッコミと罵倒を一緒にやるなんて、ユリウスも上達したよな」
何の上達だ、と言いたいが、それもそれでツッコミなので何とも言えない。
そして力が緩んだ隙に、騎士が潤滑油の力を利用し、押し入って来る。
「ん……ん……っ……」
声を殺し、圧迫感に耐えた。こうなっては騎士が満足するのを待つしか無い。
そして抽送が始まった。


「ユリウス……もっと、腰、振って……」
「ん……く……」
とんでもないことを言われるが、従順に応じてしまう自分がいる。
結合が深まるたびに、本来はありえない快感が内に生じ、じわじわと高まっていく。
「あ……ああ…っ……っ!」
「ユリウス、ノリすぎだろ?はは……俺も……」
小憎らしいほど陽気だった騎士の声も、徐々に余裕を失っていく。
「ああ、ああ……っ……ん……」
「ユリウス、声、いい……もっと、出して……俺を、欲しがって、くれよ……」
狂ったように打ちつけ、かき抱く騎士は、反応を促すように、前を愛撫する。
「――っ!!」
触れて欲しかった箇所を上下に激しく扱かれ、理性が飛びそうになる。
「いいから、早く……終わらせ……」
「あはは……冷静になろうとしても……声に、出てるぜ……」
それは間違いでは無い。
内を大きく抉られるたびに、牝のような声が出てしまう。
騎士は笑って、前から手を離し、さらに結合を強く、早くする。
「はあ……はあ……っ」
もう何も考えられない。欲しい。内に放ってほしい。
ユリウスはそれしか考えていなかった。
「ユリウス…俺、もう……」
騎士の声からも完全に余裕が失せていた。
絶頂の近さを予感し、ユリウスの熱もまた高まっていく。

そして、どれだけ激しく求められただろうか。
「……ユリウス……ユリウス……っ!!」
強く名を呼ばれた瞬間に、内側に熱いものが放たれる。
「――……っ!」
同時に自分も、場所を忘れ、声を上げて、草むらの上で達した。

「ん……はあ……はあ……ああ……」
そのまま倒れ込み、乱れた服のまま快感にあえいでいると、頬に熱いものを感じる。
気だるく目を、上にやると、
「ああ……ご、ごめん。ユリウス、間に合わなくて」
少し気まずそうな騎士が、××をこちらに向けていて……
「この恥知らずがっ!!」
顔に残滓をかけられたと知り、激怒のままに怒鳴る。
「痛ぇっ!!」
起き上がり、容赦ない力でこぶしをぶつけると、騎士はさすがに涙目になり、
「わ、悪い。わざとじゃないんだって!
ユリウスにちょっと口で処理してもらおうかと……」
「そう考えること自体が言語道断だろうが!!
どこまで私を性処理の道具にすれば気が済むんだ!!」
「ちょ、ユリウス!ちょっとさすがに声が大きいぜ!痛い!痛いって!!」
胸ぐらつかんで何度も殴ると、騎士は悲鳴を上げる。
だが、その顔はどこか楽しそうだった。

…………

元々少ない体力も情事で早々に尽きた。
ユリウスは木の幹にもたれ、春の風を受けている。
「ユリウス、好きだぜ」
「…………」
投げ出したユリウスの足の上に座るのは、図々しい騎士。
こちらの頬に手を当て、かがむようにして何度も口づけをする。
舌を絡ませ、唇をなぞり、頬に、まぶたに、耳に、首筋に、飽きることなく触れる。
「……いい加減にしろ。もう帰るからな」
素っ気なく言うと、
「それはダメだ。一度引きこもったら、もう永久に俺を部屋に入れない気だろう?」
「自覚があるなら結構なことだ。別れの逢瀬も終わったし、いい加減に解放しろ」
ハエをはらうように、うるさい騎士を手で拒む。
「別れ……俺にあんな顔とか声とか見せておいて」
切ろうとしても切れないだろう、と騎士は余裕の顔だ。
「ユリウスをトカゲさんに、渡すつもりはないぜ」
逆に強く抱きしめてくる。ユリウスは怒って、
「いい加減にしろ!おまえと違って私には代えのきかない仕事が……!」

「その通りだ。時計屋を解放しろ、騎士」

と、低い声が聞こえた。

「……っ!」
驚いて振り向くと、木々の向こうに、グレイ=リングマークが立っていた。
すでに両のナイフを抜き放ち、いつでも攻撃に移ることが出来る構えだ。
「トカゲさん!よくここが分かったなあ。森の奥なのに」
騎士はやっとユリウスから身体を離し、嬉しそうに剣を抜く。
「ああ。さんざん探し回ったが、時計屋が教えてくれた」
「私が?」
ユリウスは木にもたれたまま、気だるく聞く。トカゲはやや目をそらしながら、
「その……時計屋が大声で……性処理の道具がどうこうと……」
「――っ!!」
情事の声を聞かれるより恥ずかしい。しかも聞かれた相手がトカゲ。
トカゲはさらに目をそらしながら、
「その、どう盛り上がっていたか知らないが、いちおう外でそういうことを叫ぶのは
俺はどうかと思うぞ……」
「〜〜〜〜っ!!」

穴があったら入りたい。いや。いっそ、この二人が相打ちになってどちらも消えて
くれないものかと、ユリウスは心の奥底から願った。

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