続き→ トップへ 目次 ■時計屋の迷い ※R18 外は宵闇だった。月がほのかに浮かび上がり、テントの中にかすかな光を落とす。 「ん……」 奥に打ちつけられ、テントがギシッと揺れた気がした。 汗がまた一しずく、シーツに染みこんでいく。 「……ユリウス……っ!」 こちらの腰を抱え、揺さぶる男は、欲望に何もかもを忘れているようだった。 「ユリウス……ユリウス……っ」 切ないくらいに名を呼ばれ、壊すのではと思う力で打ちつける。 ユリウスも、そのたびに頭の芯までが焼けつくように熱くなる。相手の視線に 晒された××はみっともなく勃ち上がり、戯れのようにときどき弄ばれては雫を流す。 「……あ…ああ……っ!」 抑えようとしても抑えられない。 嬌声を促すように、また××を刺激され、ビクッと背が反り返る。 けれど相手も我慢出来なかったのか、すぐに手が離れ、また強く揺さぶられる。 「ユリウス…好きだ……っ」 常と変わりない声でささやかれ、なぜか時計がきしむ。 急に、騎士の口づけを受けたくなった。 だが男同士の結合で、それはかなわない。 「あ……ああ……ユリウス……もう、俺……」 揺さぶりがさらに激しく、深くなり、こちらの身体を考慮せずに何度も何度も、 奥に打ちつけられる。そのたび、ユリウスも己がイキそうになるのをこらえた。 「ユリウス……――っ!!」 芯まで焼き尽くされ、白濁したものが放たれる。 同時に、内に放たれる、慣れた不快感。男二人分の荒い息が、暗い室内に響いた。 そしてゆっくりと結合を解き、騎士は微笑んだ。 「ユリウス……すごく良かったぜ」 頬に手を当てて、まるで労うように髪を撫でる。ユリウスがそっぽを向くと、 「すねるなよ、ユリウス」 騎士の方を向かされ――唇を落とされる。 そして間近の赤い瞳が笑った。 「キス、してほしかっただろ?そんな目をしてたぜ?」 「っ!!」 見透かされた気がして、息を呑んだ。すると騎士は高らかに笑う。 「はははっ!何、本当にそうだったのか?か、可愛いな、ユリウスっ!」 どうやら口説き文句で言っただけらしい。 自分の頬がみるみる紅潮するのを感じ、後始末も忘れ、ユリウスは、 「うるさい!用がすんだのなら、さっさと上からどけっ!!」 図々しく自分の上で処理をする騎士に怒鳴りつけた。 「わっ!足を動かすなよユリウス。暴れるなって、拭いてやるから!」 清めようとする騎士は、それでも笑っていた。 ………… テントの中は暗い。 「ユリウス……」 横から騎士が抱きしめ、頬に手を当てては何度も口づけてくる。何度も何度も。 舌を少しだけ出すと、慈しむように絡められ、腕が肩に回される。 長い髪を撫でられ、今度は髪に口づけが落ちた。 そのたびに頭がぼうっとして、何も考えられなくなっていく。 「なあ、ユリウス。俺を部下にする気、まだ無い?」 「……当たり前だ」 夢見心地から現実に戻され、ユリウスは不機嫌に肯定した。 騎士はそんな自分を大きな腕に抱き寄せ、 「じゃ、ユリウスの手伝いは勝手にやるからさ。 今のまんま、たまに抱きに行かせてくれよ。それで妥協するからさ」 「するかっ!!」 何が妥協だ。しかも時計塔と違い、今、自分が居住するのはクローバーの塔。 目的が分かっていて、中に入れるような真似が出来るか。 「ケチだなー、ユリウスは。減るもんじゃないし、いいだろ?」 「いいわけがあるか!おまえとの関係は清算する! 二度と私の前に姿を見せるな!!」 「へえ。そういうこと言っちゃう?俺にキスしてほしかったくせに?」 騎士は例によってあっさりと流し、茶々を入れてくる。 「…………」 しかしユリウスも拒まなかった以上、墓穴を掘る真似は出来ず、沈黙した。 騎士は苦笑しながら、髪に指を絡めてくる。 「可愛いよな。浮気をした程度で、俺から逃げられると思ってるんだ」 ……発言にいろいろとツッコミどころがある気もするが。 ユリウスは何か言い返そうと……口からあくびが出た。 「あははっ。春だよな。ユリウス」 どうやら騎士も眠かったらしい。 布団をユリウスの上にかけ直し、また抱きしめてくる。 ――仕方がない。別れ話は……起きた後に……。 抱き寄せる腕を拒むのも面倒で、ユリウスは眠りに落ちていった。 ………… 所長は鞭を肩にかけ、あきれ顔だった。 「君、どれだけ意志が弱いのさ。ユリウス」 「うるさいっ!!」 怒鳴るが、所長までもがあっさり流す。 「まあ遅ればせの青春もいいけどさ。何も男三人で痴情のもつれとかさあ……。 そこまで欲求不満なら、俺が女の子を紹介しようか?」 「やかましい!私が男と関係していようが、勝手だろう!!」 ユリウスは壁をドンと殴り、監獄中に聞こえるような声で怒鳴った。 監獄の所長がいかなる女を紹介する気だったのか、気にならないこともないが。 「怖い怖い。まあ殺されない程度に、きれいに別れてくれよ。応援してるからさ」 両手を上げて笑うジョーカーは、どう見ても面白がっている。 ユリウスは歯がみしつつ、仕事の話を始めた。 1/5 続き→ トップへ 目次 |