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■トカゲの尋問・下

※R18

「おまえ、拷問と性欲処理をはき違えていないか?――うっ!」
軽口を叩けたのもそこまでだった。服を切り裂くグレイのナイフは、皮膚の表面を
ほんのわずかに斬りつけ、そこからじわりと赤い雫がにじみ出た。
小さな傷だったが、グレイは前をはだけると、そこに容赦なく爪を立てる。
「――くっ……やめ……!」
激痛に顔をゆがめる。
「いい声だな、時計屋。興奮するぜ」
口調を変え、グレイは嘲笑し、さらに深く爪を食い込ませる。
「ぐ……っ!」
痛みから逃れることも出来ず、ユリウスはただ情けない悲鳴を上げた。
「この、××××が……!」
「いいのか?逆らって。俺のような男が補佐官を勤めている領土だ。ナイトメア様の
安全が害されるというのなら、俺は容赦しない。眼球も、ためらいなくえぐれる」
そう言って、指をユリウスの目に近づける。
「トカゲ……っ!」
だが指は見開いた眼球の角膜に触れる寸前に、止まる。
「はは。冗談だ。そう怖がるな」
グレイは笑って、傷口からも手を離す。
痛みが緩み、ユリウスはわずかに緊張を解いた。
「……っ」
だがグレイのナイフは服を切り裂く作業を再開する。手の込んだことをするのは、
時計屋への嫌がらせと、その気になれば身体を切り刻めるという脅しか。
外気に晒されたユリウスを見るトカゲの目に性的な欲望は見られない。
むしろ純粋に同性の無様な姿を嘲笑っているようにも見えた。
先刻切られた傷の血も止まり、ユリウスはぼんやりと考えた。
そこでグレイが何かを取り出したことに気づき、それに息を呑む。
「おい、トカゲ……!」
グレイは構わずに取り出した瓶の中身を手に広げ、ユリウスの後ろに手をのばす。
「今回はおまえを楽しませる気はない。今の俺はただの補佐官だ」
「トカゲ……ぅ……くっ!」
後ろに、潤滑油でぬめる指を挿入され、異物の感触にうめいた。
だがグレイはいつものように慎重に慣らしはしない。それはただ経路を確保するだけの
機械的な作業で、ユリウスの苦痛を全く考慮していなかった。
異物感に慣れる間もなく指は増やされ、悲鳴にも構わず中を蠢き、奥を穿っていく。
「トカゲ……やめ……く……っ」
だが手は苦痛を煽るように動く。痛みを訴える箇所は特に強く。

「――?」
そのとき。サディスティックな行為の強要にひたすら目を閉じ、耐えていたとき。
ユリウスの頭に何かがかすめた。
こんなときだというのに、何かを思い出しそうになったのだ。
――何を……私は……。

だがグレイが下衣の前を開く音を耳にし、わずかに現実に戻る。
夢魔の部下は冷めた目で時計屋を見下ろすと、小さく、
「時計屋……話す気になったか?」
ユリウスは無言で首を振った。グレイは小さく息を吐く。
「これが最後のチャンスだったんだがな……」
「好きにしろ」
慣れている。慣れたくはないが、慣れざるを得ない状況に身を置いていた。
「――ぅっ……!!」
瞬間、足を抱えられた。冷静なグレイの顔と裏腹に、グレイのモノは十分に怒張し、
先走りの汁までこぼしている。それを自覚しているのかグレイは無言で先を後ろに
押し当て、一気に貫いた。
「ああ……く……っ……」
強引に熱い塊が内部に押し入り、ユリウスは今度こそ叫んだ。
「あ……ああ……っ!」
前戯もなく、ほとんど慣らされていない状態で、痛み以外のものがあるはずもない。
グレイも無表情に尋問相手を見下ろし、動き出した。揺さぶりは最初から強く速い。
容赦なく奥の奥まで打ちつけられ、先走りのものが不快に中を汚していく。
だが自分は手首を拘束され、何も出来ない。
夢魔の部下の息が激しい。熱いのか冷たいのか分からない。
――どっちが、おまえの本音なんだ?
「……く……」
「そうだ、もっと痛がれ、俺に、もっとその顔を見せてくれ……」
何度も揺さぶられ、ただ耐えるしかない。時折ささやかれる『楽になる方法』を
ユリウスはことごとく拒み、それで苦痛が増してもただ目を閉じる。

己の怠慢で全てを失い、もう自分には時計屋としての矜持しか残されていない。

それすら破壊されたら、自分は――
「時計屋……時計屋……」
グレイが低く叫び、内側に白濁した汁が激しく吐き出される。
あふれたものが外にこぼれ、残されたユリウスの服地に染みこんでいった。
だがそれで終わりではない。グレイは再び動き出し、苦行が再開された。
「あ……ああ……」
「……時計屋……」

苦しげな声だけが響いた。

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