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■拒絶・下

※R18

言ってグレイは、ベッドサイドに視線を向ける。そこには宿が、サービスに用意して
いたらしい瓶が置いてあった。中身は本来なら女に使う物だ。
グレイはそれを取るとフタを開け、中を手に広げる。
「……っ!」
ユリウスは顔を強ばらせ、グレイを凝視する。グレイは、ユリウスの足を開かせ、
「優しくしてやりたかったが、無理なようだ。すまないな、時計屋」
「待て……ぅ……!痛……」
後ろに強引に指がねじこまれ、痛みを訴える。
だがグレイは、そのまま中をかき回した。
「やめ……っ!……!!」
潤滑油の助けを借り、指が乱暴に中を抉る。痛み慣れる間もなく指を増やされる。
その度にユリウスは悲鳴を上げるが、グレイは無視し、中を無理に慣らしていく。
「そろそろいいか……」
やがてトカゲは指をゆっくりと引き抜くと、自らのズボンの前を開けた。
そして十分に硬くなった×××を引き出した。
ユリウスはもう無言で首を振るしかない。だがグレイは拒絶をすげなく冷笑し、
「ならどうする?お前が口で慰めてくれるなら、止めてやってもいいぞ。
まあ、入れるのがわずか先に延びるだけだがな」
最後のあがきに必死にもがくが、押さえつけられ、苦笑されただけだった。
「トカゲ。どうして……お前はこんな奴ではなかった。勤勉で、冷静で……」
言葉は嘲笑に遮られる。
「それは、俺の外面を見ていただけだ。俺もお前と……他の奴らと同じだ。
欲しいものは何をしてでも手に入れる。妥協はしない」
「トカゲ……」
目で懇願する。だが、
「俺の表を信じ込んでいたお前は、本当に俺に関心がないんだな。残酷な奴だ」
熱いものが後ろにあてがわれ、ユリウスは叫んだ。
「トカゲ、本当に嫌なんだ!私の身体がどう反応していようと、私は……!!」
グレイは静かに言う。
「巡りあわせでお前の情人と同じ国になったら、そいつの前でお前を犯す。
お前が俺の下でよがり狂う姿を見れば、そいつもお前を振るだろうよ」
思わぬ言葉に反応をするより先に、グレイが中に押し入ってきた。

「っ……」

「トカゲ……っ!」
馴染んだはずの、だがいつもとは違う痛みと形。
「あ……っ……」
振動が始まり、揺さぶられ、ユリウスは歯を食いしばる。それでもなお拒絶する。
「嫌だ……止めろ……」
「往生際が悪いぞ。ならコレは何だ」
「――っ!」
激しく突き上げられながら、硬く上を向く、自らの×××を捕まれた。
「…………っ」
押さえきれない感覚に流されそうになりながら、何とか理性を保とうと頭を振る。
それを見て、グレイは苦しそうに、
「そこまで俺が嫌ならそれでもいいさ……。俺のやっていることは誰が見ても最低
だろうからな。だが、俺は……俺は……」
「!!」
ふいに律動が強まり、ユリウスは荒く息を吐く。
慣れと瓶の液体とグレイ自身の先走りで、痛みは次第に和らいでくる。
それは、欲しいと渇望していて得られなかった感覚だった。

「く……はぁ……あ……」
そして、気がつけば快感を求めて脚を開き、出来る限りに腰を動かしている。
口で拒みながら、こんな反応をする男を、グレイがどんな顔で見ているか。
知るのが怖くて固く目を閉じる。
「時計屋……時計屋……」
だがグレイは、何度も呼びながら打ち付ける。
ユリウスにはかける言葉もなく、叫ぶ名前もない。
ただ激しい動きに動きを合わせ、快感を貪欲に引きずりこもうとする。
頭が熱い。狂おしいくらいに欲しくて仕方がない。
終わりが近いのか、グレイの動きはより早くなる。同時に自分のモノも扱かれ、
ユリウスも限界間近だった。だが、だからこそ、より強く思う。
――駄目だ、あいつ以外にイカされるのは……
なぜ、そう思ってしまうのか。自分が情けないと思うのか。考える余裕はない。
だから最後の瞬間まで懇願する。
「止めてくれ……嫌だ、嫌なんだ……グレイ……」
「……断る」
瞬間、奥深くで熱いものが弾けた。
それが己を刺激し、ユリウスもまた白濁したものを宙に放った。
腹を汚す白に絶望的な気分になる。
「くそ……くそぉ!」
今度はユリウスの方が叫ぶ。両手を拘束され、目を覆うことも出来ず、ただシーツに
顔を押し付けようとする。
分からない。
時計の修理さえしていれば良かった日々はどこへ行った。
時計塔で誰とも関わらず生きるはずだった自分は、プライドもなく腰を振っている。

「時計屋……すごく、良かったよ」
ようやく自身を引き抜いたグレイが言う。
虚脱と圧迫感からの解放で、ユリウスはただ顔を伏せた。
トカゲは自分とユリウスの後始末を軽く行うと、まだ動揺の収まらないユリウスの
隣に横になった。
そして労わるようにユリウスを優しく抱きしめ、目の下の水滴をぬぐう。
ようやく腕を拘束していたネクタイをほどき、半裸の身体を抱き寄せ、唇を重ねた。
「俺が悪かった。何もかも」
されるがままになっていたユリウスの胸にも、ようやく怒りがこみあげる。
あらん限りの罵声を浴びせようと口を開く、が――
「時計屋」
全ての罵倒を覚悟する哀しそうな瞳と合う。
「…………」
ユリウスの胸の中に、ふと希望がわいてきた。
激情に流されはしたものの、グレイは恥じているのではないか。
欲望を満たしたら冷静になり、衝動で動いたことを今さら後悔しているのでは。
ユリウスはただ、ため息をつく。
「全ては酒の席の上のことだ。そういうことにしよう」
そうでもしないとやるせない。
「もう護衛にはつかなくていい。次の引越しまでなるべく顔を合わせずにいよう」
それが最善に思えた。一線を越えてしまったなら引き直せばいい。だが、

「断る」
グレイが静かに言った。

「何?」
「断ると言った。護衛は仕事の関係で今後は無理かもしれないが、お前と次の引越し
まで何もしない、ということには到底同意しかねる」
「私の方こそ断る!人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!
なぜお前と関係を続ける必要があるというんだ!!」
激昂して怒鳴るが、グレイは聞かない。苦しそうに顔をゆがめ、
「駄目なんだ……お前といると、正気ではいられない。
お前が時計に宿る男を思うほどに」
「対抗心を恋愛感情と勘違いするな。お前は――」
「時計屋」
腕を伸ばし身体を抱きしめられた。痛いほどに強く。
手が再び身体をまさぐりだし、ユリウスは声を上げる。
「止めろ!本当に止めてくれ!好きな相手にこんな真似をするのか?」
「お前こそ。もう身体が反応しているじゃないか」
視線を下に落とされ、それを追い、目を見開いた。
「!!」
硬くなりかけた××を目にし、頬が紅潮する。自分もグレイも、矛盾だらけだ。
「……おまえの上司に報告させてもらう。塔の主にしかるべき処置を取ってもらう」
「とうの昔にご存知さ。夢魔であられる上に、俺がお前との淫夢を見ているからな」
「…………」
誰も好きではない。一人でいたい。
こんな関係、最初から維持する理由も利点もない。

だが、グレイをどう拒めばいいのだろう。
普通なら上に訴えるか住み処を変えるか、あるいは撃ち殺すかだ、この世界では。
だが夢魔は黙認状態らしい。住居を変えるのも不可能な話だ。実力行使は……。
グレイには当初から面倒を見られている。何度も命を助けられた。
仕事から食事から人員から頼りきり、護衛の件でも散々世話になった。
少しばかりの見返りを求められて、すげなく拒むのは正しいのか?
頭の中をさまざまな思考が渦巻く。
そうしているうちにグレイの下はユリウスの下半身に及ぼうとしていた。
「時計屋……」
――逃げ場は、あるのか?
どちらにしろ向こうが一方的に訪れれば、こちらに避難場はない。
以前と同じだ。
しかも今度は領土がたったの一室。他に行ける場所があるはずもない。
「くそ……止めろ!」
応える代わりにグレイは暴れるユリウスを少し起き上がらせ、背中に手を回すと、
体液と汗ですでに崩れていたコートやシャツを引き抜いた。
そして完全に隠すものがなくなったユリウスを押さえつけ、グレイは手首を再度縛る。
「放せっ、放せぇっ!」
自らも汗ばんだシャツを脱ぎ捨て、グレイが抱きしめる。
「愛してる……時計屋」
「嫌だ……どうして……」
だが直接肌が密着し、熱が再燃している自分も自覚する。
言葉と裏腹に反応するものに愕然とする。
ユリウスは自分を裏切るもの全てに目を背ける。
「愛してる……」
そう言いながら、グレイは動き出す。
ユリウスは夜の終わりを願って、ただひたすらに目を閉じた。

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