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■拒絶・中

※R15

「ん……ん……」
舌が強引に口内をうごめき、舌をとらえ、まといつく。
何とか離れようとするが、肩を抱かれ頭を押さえられた。
「時計屋……」
角度を変えては何度も何度も強く口づけられる。
伝わる熱はとても熱い。爬虫類なら冷たいはずなのにと、どこかで不思議に思う。
何度か後じさるうち、いつの間にか、ユリウスは壁に背を押しつけられていた。
そしてさらに強引に引き寄せられ、深く、強く身体を密着させられる。
もう口の端から流れる水がどちらのものなのかさえ分からない。
だが指に感じる白いワイシャツの生地が違和感をもたらした。
――待て、こいつはトカゲだ。あいつではない。何を、私は……。
「や、止めろ!!」
ユリウスは強引に顔を離し、グレイを突き放した。睨みつけるように見下ろす。
だが、今度はグレイも引かない。
「ほら……お前も代わりを求めていたじゃないか。本当に嫌なら、最初から俺の舌に
噛み付くなりすればいい。なのに一切の抵抗もせず、それどころか……」
グレイもまたユリウスの身体を見下ろす。
「ち、違う、違う、違う!」視線を感じ、少年のように恥じてズボンの前を隠す。
だが、グレイの手が容赦なくそれをつかみ持ち上げる。
ズボンの生地はわずかに、だがハッキリと反応していた。
「お前も男だな、時計屋」
言って、それを指で弾く。それだけでユリウスの身体は震えた。
トカゲは嘲笑を浮かべ、
「やはり『身体に聞く』のは確実なようだな」
だらしない本性を晒してしまったユリウスは急速にみじめな気分になっていった。
「トカゲ、頼む。出て行ってくれ。いや、出て行かせてくれ。
私はお前とは良好な関係でいたいんだ。先に進む必要などないだろう?」
力なく言うが、グレイはユリウスの肩をグイと引き手首をつかんだ。
そしてグレイは頓着せず、こちらを引きずっていく。
その先は寝台。抵抗すれば流血沙汰になり、最終的に負けるだろう。
ユリウスはなおも懇願した。
「頼む。今ならまだ……」
グレイが振り返る。
射抜かれそうな黄の瞳は酷薄に告げた。
「断る」

「ぐっ!」
投げ飛ばされるように寝台に横たえられ、再度圧し掛かられる。
ユリウスは必死で暴れた。
「止めろ……止めろ!!」
自分はグレイより背が高い。それに同じ男だ。本気で抵抗すれば、夢魔の部下とて
強行は出来ないはず――そんな楽観的な思いはあまりにも脆く砕かれる。

「あまり乱暴はしたくないが……お互い怪我をしないためだ。すまないな」
両手を容易く捕らえられ、引き抜いたまま寝台に放ってあったネクタイで縛られる。
「この、離せ……!」
ユリウスはなおもあがくが、グレイはもう相手にしない。
「ん……」
時折口づけながらもユリウスの首に手をかけ、時計の飾りを外すと、壊さないように
床に置き、上着のボタンを外していく。
あらわになった鎖骨を舌でなぞり、手をシャツの間に忍ばせ、先端を弄びはじめた。
「あ……」
ユリウスの身体が跳ねる。飽きるほど刺激された場所だが、今は相手が違う。
撫でられ、悪戯をするように指先でいじられるたびに熱が高まる。
同時に指で強く押され、ユリウスの喉の奥から小さな声が漏れた。
「どうした、時計屋?もう抵抗を止めたのか?」
嘲笑うように言われ、起き上がろうとするが、すぐにベッドに戻される。
再び手を服にかけたグレイは前を完全にはだけさせ、胸を舌でねぶる。
「あ……ダメだ……ん……」
下の熱も放置され、腕を動かすことも出来ず、ただ身をよじるしかない。

「何だ、不満そうだな、時計屋」
声をかけられ、視線を落とすと胸に舌を這わせる男と目が合う。
爬虫類に味見をされているような錯覚を覚え、思わず顔をそらした。
「分かっているさ。そう急くな」
グレイは苦笑気味にユリウスのベルトを緩め、手を中へ潜りこませる。
「――っ!」
布地を持ち上げるモノを撫でられ、ユリウスは息を呑んだ。
最初はゆっくりと、だが形をなぞるように少しずつ強く。
ユリウスは必死に押さえるが、それでもくぐもった切ない声が出てしまう。
「お前の男はどうやっていた?同じようにやってやらないでもないぞ」
からかっているのか、本気なのか。応えずにいるとグレイは笑って身を起こし、
ゆっくりとユリウスの下衣を下ろしていく。
「や、止めろ!」
だが一気に下着ごと脱がされ、ズボンが床上に落ちる音がする。
他人に下を晒した羞恥に唇を噛むと、
「本当に貞淑を装う気か?こんなになっているのに?」
苦笑しながら彼がつかむものは、完全に上を仰いでいた。
「……っ」
見せ付けるようにグレイはソレを扱き、先走りの汁を零させる。
「くっ……!」
煽られるほどに、熱くなるほどに、誰かを思い出さずにはいられない。
愛の言葉を交わしたこともなく、関係も一方的だったというのに。
「ん……ぅ……それでも……それでも、嫌なんだ!」
「時計屋……」
グレイの瞳がすっと細くなる。
礼儀正しい夢魔の補佐官は姿を消し、そこには凶暴な爬虫類だけがいた。
「最初から変わらない。本当に、お前は俺を苛立たせるのが上手いな……」

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