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■騎士につけこまれた話

※R18

頬に手が伸びる。目の前に緋色の瞳。
夕焼けの赤のような、果てのない空洞の色。
そっと、その目が近づき、口づけられる。
そのまま強く抱きしめられた。
温かい。
この騎士の腕は、こんなに暖かかったのか。
「ユリウス、好きだぜ」
「そうか」
再び、口づけられる。だが瞳には、揺れるような殺意が見える。
それさえももはや気にならない。
もうどうでもいい。

ユリウスは騎士を抱きしめた。
そして何度も口づけを交わす。
二人は一切の愛情を介さずに抱き合う。
「ユリウス、大好きだ。不器用で、一人ぼっちで、うじうじして、前に進めなくて。
勝手に劣等感持って、落ち込んで、元気なくして……そんなところが大好きだ」
どう聞いても欠点としか思えない項目を羅列し、そこが好きだとのたまう騎士。
「私はお前が好きではない」
「嫌いとは言わないんだな。はは。それだけでも嬉しいぜ」
「利用価値があるということだ。勘違いするな」
素っ気無く言う。
「いいよ。俺はそれでいい」
表情は影になり、見えない。そして騎士は再び唇を重ねる。
その合間にユリウスは服をゆるめ、自分もコートを脱ぎ捨てる。
ベストの前を開き、シャツのボタンを外した。
そして騎士の手を取り、自分の胸元に導く。
騎士は心得ていて、一番刺激してほしい部分を弄り出す。
「くっ……」
指の腹で擦られ、摘まれ、甘噛みされ、切ない声が己の口から漏れる。
時計に埋もれた作業室にわずかに残る床上にユリウスは押し倒される。
飽きるほどに口づけを交わし、舌をからめ、抱きしめあう。
肌を幾度と無く啄ばまれ、刺激にのけぞり、否が応でも快感は高まっていく。
騎士も胸元を開き、ユリウスも舌を這わせる。
けれど、同時にそんな浅ましい自分に嫌悪も感じた。
冷静になれ、と自分に言い聞かせ、
「騎士、やはり止めよう。今は――」
だが、もう遅い。いや最初から手遅れなのは分かっていた。
「――っ!痛ぅ……」
狂ったウサギに撃たれた痕を強くつかまれた。
ろくに応急処置をしなかった傷は、今も完治に至らない。
騎士の指の間に血がにじみ、真紅の水滴が垂れる。
「騎士……本当に止めろ……」
「ユリウス。『痛い目にあいたくなかったら逆らうな』とか悪役そのものみたいな
台詞、俺に言わせないでくれよ?」
指に付いた血をなめ、本当の悪役のように言う騎士。
「お前……っ」
「それに痛い割に、こっちはちゃんと反応してるとかさ、今さら何、言ってるんだ」
呆れたような声。問いただす前に、
「ユリウスって頭はいいのに、こっち方面じゃ俺より馬鹿だよな」
聞き捨てならないことを言い、手をズボンの中に忍ばせる。
「え、騎士……止め……っ!」
だが、ユリウスの声は熱で上ずっている。騎士の方が冷静に、
「ユリウスー、中がもうビショビショだぜ?これで止める方が辛くないか?」
雫を垂らす場所を指で撫で擦られ、声が抑えきれない。
制止の言葉と嬌声の喘ぎが交互に漏れ、身体が刺激に合わせ揺れ動く。
何とか理性を失うまいと首を振るが、逆に騎士の手の動きに意識が集中してしまう。
これ以上は耐え切れない、と言うとき一気に下衣を剥ぎ取られる。
騎士の視線が、限界間近な一点に集中しているだろうと思うと羞恥で逃げ出したくなる。
だがのしかかる男の腕は硬く身体を押さえつけ、身動き一つかなわない。
「ユリウス、どうしてほしい?ユリウスの口から聞きたいなぁ」
こんなときも爽やかな男だ。手はというと抜け目なく後ろに回り、解し始めている。
その刺激だけでも達してしまいそうになるが、それよりも欲しいものがある。
「ユリウス、なあ、言ってくれよ。
俺はすっごくユリウスに優しくしたい気分なんだ」
「い、嫌だ……」
何とか拒もうとするが、もう瓦解する寸前だった。
涙さえにじむ目で騎士を見上げる。もう矜持も何もあったものではない。
「何だってしてやるよ。ユリウスがそうして欲しいのなら」
顔が近づき、優しく口づけされる。
「だって、今のユリウスは一人ぼっちで本当に可哀想だから……」
怒るべきなのだろうか。感じたのは痛みだった。
騎士の言うことが事実だったから。
「……――して、ほしい……お前の……を……」
気が付くと勝手に口が言葉を紡いでいる。
ただ逃げ出したかった。
忘れさせてほしかった。
「いいよ。ユリウスの頼みなら」
騎士は笑い、前を緩める。
怒張した×××が後ろに当てられ、入り口が期待にヒクつくのが分かる。
「行くぜ」
「――っ!」
瞬間、熱い×××が強引に中に押し入ってきた。
反射的に逃れようとするが、騎士の手はすでにユリウスの腰をつかんでいる。
「……はあ……あ……」
騎士は動き出した。
痛みなのか望んでいた刺激なのか、分からないままユリウスも動く。
やがて騎士自身の先走りで動きが痛みが緩和され、新たに熱が高まっていく。
「……ん……」
「く……はあ……はあ……」
壊れた時計の山の中で、時計屋と騎士は絡み合った。
互いの瞳に相手を映すが、心までは映せない。
「ユリウス……好きだぜ……」
「私は……」
分からない。
騎士の心も、己の心も。
突き上げが次第に強まっていく。貪欲に騎士の×××を呑み込み、ユリウスも
限界だった。かすむ目で騎士を見上げる。うっすらと汗した騎士も笑う。
「大好きだぜ」
「私は…………」
応えを口にする前にユリウスは達し、別の声を上げる。
騎士が自分の中で達したのを感じながらユリウスは意識を落とす。
騎士の腕に優しく抱きしめられながら。

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