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■別れた直後に再会した話

「はあ……はあ……エース、もう……」
ユリウスは懇願するが、腰を打ちつける騎士に終わる気配は無い。

あの後、騎士を振り切って時計塔に戻ろうとしたが、騎士は無理やりついてきた。
街に迷い出た後は、そのまま騎士に引きずられ、安宿に連れ込まれた。
心身ともに疲労困憊していたこともあり、逆らう力はなかった。
時間帯がいくつか変わり、また夜に戻っても騎士の責めは終わらない。
最初のうちはまだ応えられたユリウスだが、体力のありすぎる騎士に翻弄され、
今は反応を返すことさえ億劫だった。
「やめ……」
抵抗はもとより声もかすれかけている。
「止めると思う……?ユリウスって、結構、抜けてるよな」
対する男はさして疲れた様子でもなく深くに挿入する。
もうどれだけの時間帯、され続けたかも定かではない。
最初は野外でしていたこともあり、すれた背中が痛む。
「ん……はあ……」
抽挿はより激しくなるが、騎士に一向に衰えは見られない。
そして、そんな騎士に引きずられるようにユリウスの中にも熱が再燃していく。
「はあ……はぁ……」
息遣いだけが響く。

「ユリウス……っ」
やがて、やっと騎士が絶頂を迎え、ユリウスの上に倒れこむ。
鍛えられ、重い騎士の体を受け止め、やっと力を抜く。
頭を少しなでると、気だるげに顔を上げた騎士と目が合う。
「…………」
再び唇を合わせられ、舌を入れられた。手は新たな刺激を求めて再び動き出す。
「エース。まだやるのか、もういい加減に……」
「ユリウスがそんな顔してるのが、悪いんだろ」
「そんな顔……?」
「ああ、すっごくいやらしい。俺にねだってる顔だよ」
「な……!」
聞き捨てならない言葉に反論しようとするが、すかさず自身を握りこまれる。
「う……」
もう完全に尽き果てたと思う箇所が、再び熱を持つまでそうはかからなかった。
だらだらと雫が零れ、物欲しげに起ち上がる。
「く……やめ……ェース……」
「あはは。まだ反応してるのに?もっと頑張れよユリウス」
――お前の体力が有り余りすぎてるだけだろう……。
戦ったときと別の意味での戦慄を覚える。
再度のしかかった騎士は奥深くを貫き、再び動き出す。
そしてユリウスはもはや何度目かも分からない波に飲み込まれた。

…………

「ん……」
重苦しい眠りからユリウスが目覚めると、夕陽が目をさした。
気だるさを押して身体を起こすと、どこもかしこも痛みがあった。
そのまま安布団に倒れこみ、二度寝をしたい衝動にかられる。
その前に目だけでユリウスは騎士を探した。
だが赤を脱ぎ捨てた黒い騎士の姿はどこにもない。
すでに宿を発った後のようだ。
また勝手に未回収時計を厚めに出かけたのだろうか。
ぼんやりと思考し、そこで我に返る。
――エリオット!!
騎士に嬲られ、疲労で熟睡し、どれだけの時間が経ったか分からない。
だが約束の時間を過ぎていることだけは確かだ。
エリオットは待っていてくれるだろうが、長く一点に留まるほど危険が増す。
苛立たしいほど思うように動かない身体を叱咤し、何とか身支度を整え宿を出る。
――約束の場所へ行かなければ。
ユリウスは夕暮れの街を急ぎ足で行く。
急ぎ足が小走りに、小走りが疾走に変わるまでさして時間は必要ではなかった。

…………

ユリウスは近道を通るため、道を外れると、麦畑の群生地にわけいった。
野生の麦は思った以上に育っていて、思ったよりも足にからみつく。
疲労は増すばかりだ。
だが戻ることも時間の無駄に思え、野生の麦をかきわけ、ひたすらに走った。
風が吹き、麦畑を揺らす。
何と美しい金色。
こんなときでなければ、足を止めて見入っていただろう原野の美だ。
「あ、ユリウス!奇遇だな」
そして叙情は一瞬にして霧散する。
嬉しそうな声に似合わぬ殺意をまとい、仮面とローブの男は、麦畑に立っていた。
久しぶり、と言いたげに手を振ってくる。
もはや何故ここにいるのか問う気さえ起こらない。
待ち伏せという殊勝なことをする男でも出来る男でもない。
出会ってしまった自分が悪い。
そういう男なのだ。

「帰ったのではなかったのか?」
ユリウスはためらわずに銃弾を撃ち込む。
「あははは。これは本当に偶然だぜ?やっぱり運命だよな。俺たち」
気色悪すぎることを言われ、反論する気も起きない。
「今、邪魔をするなら本当に許さない!」
「ははは。妬けるな、ユリウス……殺したくなるよ、本当に」
声のトーンが急速に変わる。もう少し言葉を選べば良かった、と後悔しても遅い。
騎士は仮面とローブを外し、剣を引き抜いた。

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