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■ウサギの友人・中

※R18

「……ん……」
髪をつかむエースの手の力も、強くなっていく、これでは本当に髪が抜けそうだ。
「はぁ……はぁ……」
「…ん……ぅ……」
荒い息とくぐもった苦しそうな声が交差する。
先端から漏れる汁が口内にあふれ、口の端から伝う。
そろそろか、とユリウスがボンヤリ考えたとき、ふいに口が解放された。
「ユリウス、ごめんな……やっぱり、ダメだ……」
言って、這っているユリウスの腰をつかんで自分の方に向かせ、下衣に手をかける。
「……エース……」
抗議の声を聞いた風ではない。
手袋を取り、作業机に常備してある機械油の瓶を勝手に手に取り、中身を手に注ぎ、
「……ぅ……やめ……」
激痛。
記憶に新しい異物感と圧迫感が後ろを支配する。
それも長くは続かず、すぐに引き抜かれ、
「…………っ!!ぁ、ああ……!!」
暴れて逃れようとするが、腰をしっかり抑えられ、逃げられない。
瞬間、白熱するような衝撃と苦痛がユリウスを襲った。
「う……あ……」
「ちょっと慣れてきた?温かいぜ、ユリウス」
一気に奥まで挿入したエースは、こちらの苦痛を意に介さず動き出す。
「痛……エース……やめ……ああっ!う……」
声を震わせ制止を求めるが、強く揺さぶられ、悲鳴に変わる。
硬い床が痛い。何かにしがみつきたくとも、何も無く、こぶしを握るしかない。

「…………」
汗が伝い、床に落ちては染み込む。
どれくらい経ったか、痛みに頭が白くなりかけたころ、
「く……」
自分の中に生温かい不快な感触が広がる。
「はあ……はあ……」
放ったエースが覆いかぶさってくる。
結局、今回もユリウスは欲望を満たすためだけの道具扱いだ。
口約束と裏腹に、与えられたのは新たな痛みと屈辱だけ。
それなのにエースはいとおしげに抱きしめる。
「ユリウス。すごく、良かったぜ……大好きだ……」
「…………重い、どけ」
出来る限り冷たく言うが、もうあまり声に力が入らない。
しかしエースの方は利いた風でもなく上着を脱ぎ始めた。
どうやら、悪夢はまだ続くらしい。

…………

ユリウスは買い物袋を抱え、道を急いでいた。
本当は時計塔に永久に引きこもっていたい。
しかし、現実には定期的に外に出なければならないし、日用品の買い出しもある。
ユリウスは痛む身体を休めたいと、緩慢に帰り道を歩く。
しかし、もうすぐ時計広場というところで、
「おーい!!時計屋さーんっ!!」
一帯に響き渡る大声がした。
周囲の顔なしもギョッとしたようだがユリウスも驚いた。
危うく繊細な工具や部品類の入った袋を落とすところだった。
「…………」
振り向くと、三月ウサギが満面の笑顔で、こちらに走ってくるところだった。
声に敵意はないし、襲撃しようと言う様子ではない。
ユリウスはスパナを銃に変えるのを止め、いつもの素っ気ない声で、
「どうした?今は仕事を頼んでないはずだが?」
「ええ?用事なんてねえけどよ。あんたの後ろ姿を見かけたから声、かけたんだ」
キラキラ。
……嬉しそうだ。

あれから、エースと三月ウサギの関係に不安がある。
襲われているところを三月ウサギに見られないか、ということも。
だが、エースは頻繁に来るとはいえ常に時計塔にいるわけではない。
一度塔を出ると、迷子癖もあってしばらくは来ない。
三月ウサギは上手いことエースと鉢合わせせず、時計を回収していた。
「で、また帽子屋ファミリーの奴らに襲撃されたんだ。
絶対に許さねえ。こうなったら意地でもファミリーには入ってやるかっ!!」
一応逃亡中の身のはずだが、大声でしゃべる。
よく分からない事情で、相変わらずファミリーには入りたくないようだ。
まあ、個人の問題だからユリウスには興味がない。

三月ウサギはしげしげとユリウスの顔を眺める。
「そういえば、時計屋さん、何か、少しやつれたんじゃねえか?
ちゃんと食べてるか?それに、あちこちアザが……」
心配そうな、不思議そうな顔で言われ、内心慌てる。
「お、お前こそ、逃亡中だがちゃんと食べているのか?」
話題をそらすために言うと、ウサギ耳がくたりと垂れる。
――う……。
「食ってねえ。時計屋さんが出してくれるけど、四六時中、帽子屋ファミリーに
追われてるし、この国も狭いからな。何やかんやですぐ使っちまうんだ。
もう十時間帯もにんじん料理、食べてねえよ……」
元気が無さそうだ。退屈嫌いの帽子屋ファミリーのボスは、どうやらウサギ狩りに
興を見出したと見える。三月ウサギに命の危険がないのがせめてもの救いか。
しかし捕らえたからと言って、嫌がる者をマフィアの幹部に出来ないだろうに。


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