続き→ トップへ 目次

■ウサギの友人・上

※R18

ユリウスはぼんやりと時計を直していく。
ゼンマイの動力は正しく歯車に伝わっている。
二番歯車は正確に分針と時針を動かし、脱進機と天府の振動も問題ない。
手は素早く輪列を修正し、軸を与え、ネジで各部を固定していく。
やがて、一度は時を止めた時計が動き出す。

だが、やはりユリウスは一切の感慨もなく、動き出した時計を所定の場所に
置き、流れ作業のように次の時計を手に取った。
もともと、寝る時間以外は仕事をしているようなものだったが、最近は特に拍車が
かかっている。寝食の時間を削って仕事に打ち込んでいる状態だ。
時々過労で意識が飛んで、ようやく休息時間となる。
だが、起きるとまた修理を始め、休むことは無い。

何も考えない。
考えたくない。

「ユリウス、好きだぜ」
つむぐ言葉は優しく、落とされる唇は温かい。
笑顔は曇り一つない爽やかさ。だが……
「止めろ……エース……」
「ははは。止めると思う?」
仕事中だろうと構わず、床に押し倒し、身体をまさぐってくる。
あれ以来、エースは訪れるたびにユリウスを襲うようになった。
なぜだかは分からない。
愛してはいないはずだ。本人も同性愛者ではないと否定した。
もちろん、当人が望む『時計屋の仕事』も与えていない。
なのに、なぜこんなひどいことをしてくるのか。
まさか暴力が愛情表現だというほど終わっている男ではないと思いたい。
逆に憎しみを抱かれているのだろうか。なら素直に斬りつけるなりすればいいのに。
「大好きだよ……」
相手の意思など欠片も気にかけず……いや、むしろ意図的に意思を踏みにじっている
フシがあるだけにタチが悪い。
嗜好品といえば珈琲くらいしかないユリウスは、騎士に受けた屈辱を忘れるために
休み無く仕事にのめりこむようになった。

「ユリウスも俺を抱きしめてくれよ……うん、そうそう。いい子だ」
皮肉なことに、不摂生がひどくなったことで、最近のユリウスはほとんどエースに
抵抗出来なくなった。
不眠不休で心身の力が衰え、意識もどこかぼんやりしている。
ひどいことを要求されない限りは従ってしまう。
そしてエースもそれを見逃す男ではなく、堂々と弱みにつけ込んでくる。
「ユリウス、今日は新しいことを覚えようぜ」。
エースはズボンの前をゆるめる。
「ユリウス、俺のを、ユリウスの口で慰めてくれないか?
上手く出来たら、ごほうびにユリウスを気持ち良くしてやるぜ」
「…………」
嫌だ。冗談ではない。目で拒んだつもりだが、
「……ぅ……っ!」
右腕を捕まれ、骨が砕けるかという強さで握られる。
「ユリウス……時計屋が腕を握りつぶされたら、大変だよな。
俺はユリウスが好きだから、そうなってほしくはないな」
心底から気の毒そうに言う。
虚ろだった意識が多少鮮明になり、ユリウスの頬に赤みがさしてくる。
「やめ……く……っ」
「じゃあ、俺の言うとおりにしてくれよ。これ以上抵抗しないで、な?」
「…………わかった」
疲弊しきった心身はアッサリ白旗を揚げる。

最初の頃は銃を突きつけたり、スパナで殴打する隙をうかがったりもした。
だが、今はそんなことが疲れて仕方ない。面倒くさい。
これ以上傷つくなら、言うことを聞いた方が楽だ。
「わかった……だから、はなせ」
「ははは。素直になったな、ユリウス」
騎士は笑って手を放す。その目は、ユリウス以上に何も見えない。
捕まれた部分が痛い。アザどころか本当にヒビが入ったのかもしれない。
だが、今は治療よりもエースを満足させることが先だ。
床に腰を下ろすエースの元に近づき、ベルトをゆるめ、中に手を這わせる。
「うわ、ユリウスの手、荒れてるな。俺みたいに手袋して仕事出来ないのか?」
「繊細な仕事だ。手套(しゅとう)などすれば感覚が鈍る……」
会話だけはごく普通の雑談のまま。
ユリウスは這いつくばるようにしてエースのそれを持ち、口に含む。
同性の×××など吐き気がする。しかしぎこちなく、口を動かした。
「……ん……ん……」
「ユリウス、やり方が分かるか?ああ、舐めるだけじゃダメだって。
女の子にやってもらったこと、ないのか?
舌をちゃんと動かして……ああ、それじゃダメだって」
言って、ユリウスの髪をつかむ。
頭髪が抜けそうに手荒につかまれ、思わず歯を立てそうになる。
エースも顔をしかめ、
「痛ぁ……!ユリウスー、分かってると思うけど……仕返しをしようと思うなら、
自分も同じ目、いや三倍返しくらい覚悟してくれよな」
無理強いをする男が被害者面か。
笑おうにも笑えない。
言われるまま口を動かし、舌で舐めあげると、エースの×××は徐々に硬さを増す。

1/6

続き→

トップへ 目次


- ナノ -