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■塔の夜・上

「……エース……!」
ユリウスは怒りのままに叫ぶ。八つ裂きにしても気が済まない。
けれどエースは動じた様子もない。
「あはは、ちょっと待っててくれよ、ユリウス」
呑気に言って、今度は自分のズボンのベルトをゆるめる。
「……っ」
余裕そうな態度だったが、エースの×××もすでに十分大きくなっていた。
ユリウスはさっきに劣らない本能的な恐怖に青くなる。
「エース、待て……」
「ユリウスー、自分だけ満足しておいて、俺には待てってひどくないか?」
言って手袋を取ると、ふところから何かの瓶を取り、手に広げる。
そして白い液体を指先にからめ、身をかがめると、
「…………っ!!」
突然、後ろに経験したことのない痛みを感じ、ユリウスは頭が真っ白になった。
何か異物が強引に入り込んでいる。何かなど考えるまでもない。
「ユリウス。暴れると切れるぜ」
言って、逆の手で再びユリウスの×××を握る。
今度は手袋ではなく手の直接の感触が生々しい。
早くも次の欲求がわきあがってくる。
「ん……」
「ははは。反応、早すぎだろ。ユリウスー。
ま、いいや。その調子で緊張しないでくれよ」
だが異物感も強くなり、痛みも強くなる。
「止めろ!よせ……っ!!」
何とかしようと体を動かすが、エースはユリウスをしっかり押さえている。
「は……あ……ぁ……」
刺激と羞恥と、どうにも出来ない自己嫌悪でどうにかなりそうだ。
目に生理的な涙さえ浮かべ、必死で暴れたが、騎士の力にはどうしようもなかった。

やがて、異物感がふいに喪失した。
ホッと力を抜けたのもつかの間。
もっと熱い×××が下の入り口にあてがわれる。
これから何が起こるか悟り、青ざめるが出来ることは何も無い。
「待て……エース……」
「ごめんなユリウス。俺も限界なんだ」

次の瞬間、体を引き裂かれるような苦痛が全身を貫いた。

「あ……いたっ……!!やめ……はな…せ…!」
「ユリウス……俺も楽じゃ無いんだ。もっと力、抜いて……」
やや苦しそうな表情で、勝手なことを言うエース。
だが、後ろに塗り込まれた何かが侵入を助けてしまう。
相手はゆっくりと奥まで挿入すると、少しずつ、動き出した。
「痛い……止め……ん……ぁ……」
圧迫感と激痛で、それだけで意識が遠のきそうだ。
恥も外聞も無く涙があふれる。
背中が激しく床にこすられ、そこからも鈍痛がする。
自分は、憎まれ恨まれる時計屋だ。
銃で撃たれたこともあるし、リンチで死に掛けたこともある。
だが、それさえも今の痛みには、遠く及ばない気がした。
痛い。身体も、心も粉々に砕けそうに。
「はあ……はあ……ぁ……」
汗ばんだエースは、自分の欲望に集中し、動きを早めていく。
あれほど自分を好きだと言った男が、ユリウスの苦痛にはお構い無しだ。
「あ……あ……」

何度も抜き差しされ、どのくらい経ったかも分からない。
もう快感の欠片も感じない。
苦しい。
痛い。
痛くて痛くて仕方ない。
早く終わって欲しい。
それだけだった。
「ユリウス……そろそろ……イク……」
一際激しい突き上げに、目の前が激痛で白くなる。
そして、自分の中に何か放たれたのを感じた。
「はぁ……はぁ……」
名残惜しいといった風に、エースはゆっくりと自分の×××を引き抜く。
痛みは残るが圧迫感からは解放され、ユリウスも力が抜けていく。
「ユリウス、好きだぜ……」
嘘を言って抱きしめられる。
それきり、ユリウスの意識は闇に落ちた。

…………

…………

「ん……」
気がつくと、ユリウスは床に寝ていた。
使い古した薄手の毛布をかけ、剥き出しの床に転がっている。
――なんで、私は床で寝ているんだ?
窓の外は夜だが、どれくらい時間帯が経ったのか見当がつかない。
半ば寝ぼけたまま起き上がろうとし、
「!!」
後ろの激痛に身を折る。
そこに先刻の記憶がよみがえってきた。
「エース……!!」
激怒して室内を見るが、騎士の姿はどこにもない。
すでに身支度を整え、この部屋を去ったようだ。
ユリウスといえば後始末もされず、申し訳程度に布団をかけられ、
床に転がされている。傍には脱がされた衣服が散乱している。
――好き?これが、お前の愛情表現か?
ユリウスはただ、目の前にいない相手を罵った。

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