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■月見団子を誰が貴様にやるか!1

※R12くらい

こんにちは。ナノです!
ちょっぴり、いや凄まじくドジな、笑顔の明るい女の子です!
趣味はお茶と紅茶と珈琲作り、あと算数のお勉強かな!
あとは現実逃避と自己嫌悪、それに急性カフェイン中毒と、多重債務です♪

……放送事故です。謹んで訂正させていただきます。
最後の一つ、いや二つ三つ四つは忘れてください……。

さて、私は異世界から来た余所者で、紆余曲折を経て、クローバーの塔近くの空き地に住んでいます!
塔のご厚意でプレハブを建てていただき、屋台でカフェを営んでいるんです。

…………
そのとき、外は気持ちの良い秋晴れだった。
私は店はお休みにし、とある料理を作ることにした。
「さてと……」
私は黒エプロンをしめ、プレハブのお台所に立つ。
そして一回転し、グ●コのようなポーズになり、高らかに宣言。

「ナノの月見団子教室〜!」

一人パチパチパチ。
そしてどこかで回っているだろうカメラに向け、萌えポーズをしつつ説明を開始する。
「まずお団子用の粉と『謎の粉』をボールに取り出し、水でとき、砂糖を加えます」
ざーっと大量の粉を出し、たくさんの水を入れ、砂糖を加える。
「あ、もちろん生地に直接触っちゃダメですよ!いろいろ危険ですから!」
そう言ってカメラに可愛くウインク。薄手のゴム手袋をする。
「次に、鍋にお湯を入れ、火にかけ、その間にさっきの粉を、耳たぶくらいの硬さに
なるまでぎゅっぎゅっと練ります」
カメラ(のあるだろう場所)に向けて、可愛いポーズをしたり片目をつぶったり。
ノリノリな私は、生地を適当にちぎって丸め、沸騰したお鍋に入れる。
「煮えたかな〜煮えたかどうだか食べてみ……ては、ダメですよ〜♪」
最後にスポイトで、お団子の成分が抽出された湯を採取。
近くのビーカーに一滴たらし、紫色に毒々しく変色するさまを確認する。
そしてお団子が浮き上がってきたら、もうちょっと待つ。
「おおー出来ました!」
そして可愛いお団子を冷水にさらす。
さらにカメラ(のあるだろう虚空)に向け、舌をちょっぴり出してスマイル。
そして換気扇を厳重に回転させて×××××を全て排出して、ようやく終了。
『うーん、まあこんなもんでしょう』と料理研究家気取り。
カメラに向けて再度萌えポーズ!
「次に(これが一番重要なんですよ!)冷蔵庫から市販の『月見団子』を出します」
ビニールパックに包まれた市販品の『月見団子』を出し、私はお皿に広げる。
そしてどこかにあるだろうカメラに向けて笑顔で、お皿を突き出し、
「はい、美味しい月見団子が出来ました!」
一度お皿を置いて、一人パチパチパチ。
最後に決めポーズをし、『てへっ』と一人ウインク。
撮影終了。
そして後ろから視聴者の声がする。
「……というか君が始めに作っていた危険そうな団子はどうした?」
「うふふ。その必殺団子を、この市販団子を混ぜるんですよ。
食べてみて運が悪ければ一撃必殺ロシアンルーレット!」
キッパリ。

…………

………………

…………………………

私はギギギっと身体をロボットのごとく回転させる。
ソファには気まずそうなグレイが座っていた。
「い、い、い、い、い、いいいいいいいつからっ!?」
「その、君が料理を始めたころに……俺は塔のドアを通ってきたから……」
行きたい場所につながる塔のドア、ですか。
そしてグレイは気まずく私から視線をそらし、
「君があまりに楽しそうだったから、声をかけづらくて……」
あまりに痛かったから、の間違いでしょう、ええそうでしょう!!
私はツカツカとグレイのもとに行くと、襟首を両手でそっとつかみ、持ち上げる。
作った団子もアレだけど、カメラ目線で萌えポーズとか全部見られたかと思うと。
グレイは青ざめながら、
「つ、強くなったな、君が大変に恐ろしく、もとい、頼もしく見え……」
「黙れ」
「……了承した」
そして私は先ほどのスマイルで、
「グレイ、今見た物は永久に封印していただけますか?」
グレイは無言で何度も何度もうなずく。
しかしその端正な顔は、珍しく口元が震えていた。
まるで身体を折って爆笑したいのを渾身の力でこらえているような。
私はグレイの襟元から手を放し、ゆらりと歩き出す。
そして背後からはグレイの、
「だ、大丈夫だ。とても可愛かったよ…………くく……くくくく……っ」
最後でこらえきれない、という顔で笑う。
私は無言で、冷水に浸したマイ団子を一つ取り。クルリと回転。
グレイの元に行き、
「グレイ、はい、あーん」
「……見逃してくれ。俺はしゃべらないから」
「あーん」
私は笑顔で威圧という騎士スキルを駆使する。グレイは必死に顔をそらしながら、
「というか、この団子を作るとき言っていた『謎の粉』について教えてくれ」
「一つヒントを出しましょう。このお団子は……エース用です」
最後の一言には私の負のエネルギーを全て詰め込んだ。
奴を始末出来るのなら、差し違えようとも本望。
……そしてグレイは沈黙し、ふいに虚空を指差し、

「み、見ろ!コロンビアブルボンの稀少豆が踊っているぞ!」

「何ですってっ!?」
それは大変だ!すぐに確保しなければっ!
「……と、その手に乗りますかぁーっ!」
大きく振りかぶって、必殺の魔球!
私の手から放たれたお団子が球場の砂を巻き上げ、砂嵐を……。
コホン、ふざけすぎでした。
とりあえずグレイの口には入りました。

…………
「ナノ……俺は……それでも君を……あい……」
パタリとグレイの右手が床に落ちる。
私は静かに十字を切り、グレイに祈りを捧げる。
「尊い犠牲でした。しかしお団子の成功もまた確認が出来ました」
そして虚空に向けて拳を握り
「グレイ……あなたの仇は必ず討って見せますっ!」
「ナノ。ツッコミを入れていいだろうか……」
グレイの低い呟きを背に、私は街へとかけだしていった。

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