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■久しぶりなお話

※R18

※お約束※
 今回は短編になります。お互い初対面です<(_ _)>
『これ無理』『地雷かも』と思ったら迷わずページを閉じて下さい。
 冒頭はブラッド→→→→→←夢主 なため、温度差が凄まじいです。
 一部、無理やりめの描写があるので苦手な方はご注意下さい。

 …………

 …………

 皆さん、こんにちは。
 私、ナノ。奥ゆかしく、儚げな紅茶名人、魔性の余所者でございます。
 ……すんません、調子こきました。
 紅茶以外のスキル皆無な、無能の余所者であります。

 さてこの私。銃弾飛び交う不思議の国にやってまいりまして、無能なりに紅茶チート的な
力を獲得しまして、その後、あれやこれやがあった気がします。

 色々が色々あった気もする。
 さらに何やかんやがございまして。

「こんな狂った国、耐えられるかーっ!!」

 とある時、私は森の扉をくぐったのです。
 森の扉はどこに通じるか分からない、恐ろしい扉です。
 行った先は、監獄かもしれない元の世界かもしれない、あるいは何も無い永遠の
虚無かもしれない。
 でもいっぱいいっぱいだった私は、もうどうにでもなれ、と扉をくぐったのでした。

 そして、別の国につきました。

 …………

「…………」
 森の木に登り、木の枝から、慎重に周囲をうかがう。
 遠目に帽子屋屋敷が見えた。その時点でチッと舌打ちする。
 クソ扉め、こんな場所につなぎやがって。
 この国がどの軸であろうと、他にどんな領土があろうと。
 奴の屋敷がある限りハズレでしか無い。
 するすると木を下りた。
『扉を……開けて……』『こっちに……おいで……』
 多くの扉が一斉に呼びかける。
「やかましいわっ!!」
 蹴りを入れてクソうるさい扉を黙らせ、腕組みする。

 どうする? この国に留まる? それともまた扉をくぐる?

 判断の難しいところだ。
 この扉の向こうはいつも安全とは限らない。
 今回はたまたま無事だったけど、その幸運が二度も続く保証はどこにもない。

「奴の目を免れて、コソコソ生きていく方法も……」
 何、相手はマフィアのボスだ。
 平々凡々な余所者の小娘に、そう毎回執着するわけがない。
 さっさと他の領土に忍び込み、奴と接点を持たないようにしよう。そうしよう。
「では、なんとかこの国で生きて行くことにしましょう」
 なるべく大人しめな役持ちに取り入り、のんびり紅茶を淹れてニート生活を満喫するとしよう。
 そうしよう、そうしよう。
「そうと決まれば、さっそく――」
 森を出て、意気揚々と街に続く小道を――。

 私の身体が凍りつく。

「今回も楽勝だったなあ、ブラッドぉ! 一緒にニンジンバーに行こうぜ!」
「出たよ兄弟、バカウサギのニンジン中毒〜」
「いつになったら全身がオレンジになるんだろうね、兄弟」
「俺はウサギじゃねえ! 単にニンジンが好きなだけだ!!」
「にぎやかなことだ。私は早く屋敷に帰って、一刻も早く紅茶が飲みた――ん?」

「…………」

 しーん。
 隠れる暇さえ無かった。呪われすぎだろう、このタイミング。
 森の小道で。私は抗争帰りの血まみれ御一行とかち合った。
「何だ、てめえ」
 マフィアのナンバー2が銃を抜き、剣呑な顔で言う。
 当たり前だが初対面のようだ。
 なので賢明なるわたくしは、絡まれる前に素早く叫ぶ。
「怪しい者でございますん! 通りすがりの紅茶マイスター、余所者ナノと申します!
 これから森の扉をくぐり、別の軸にヒャッホーしてまいります!!」

 狂ったような言葉を発した気もするが、ホントにイカレてる彼らに比べれば可愛いものだろう。
 私はきびすを返し、撃たれないよう森の木々の間をジグザグに走り、一目散に一目散に走るっ!!
 そのかいあって、間もなく森の扉が見えてきた。
『開けて……』『扉を開けて……』
「あー、もう。心臓止まるかと思いました。はいはい、今、開けますよ!
 殴りたくなる笑顔の看守でも騎士でも何でもいいから、今度こそクソマフィアのいない
安心安全な国につなげて下さいね!」
 扉のノブを、つかもうとして、
「――っ!!」
 目の前で扉のノブが吹っ飛んだ。銃に撃たれたのだ。あ、危ねえっ!!
 だがバクバクする心臓を押さえてる場合では無い。私は慌てて別の扉に向かう。
 バアン、と、その扉も破壊される。次も、その次も。
「な、何すんですっ!!」
 耐えきれずに振り向き、抗議した。

「その1。よりにもよってこのブラッド=デュプレに『紅茶マイスター』と名乗る
思い上がりのお嬢さんの正体が知りたくてね。
 その2。私は逃げられると追いかけたくなるんだ。まして珍しい余所者なら、なおさらに」

 銃をこちらに向けながら、この世が壊滅したかのようなセンスの帽子屋が近づいてくる。
「だから言ったでしょうが、人畜無害で麗しい薄幸の美少女ですって!」
「言ってはいないな。それと、君は冗句のセンスが少々古くさいようだ。
 薄ら寒いことを言っていないで、女性らしく、しおらしくしていたまえ」
 ……悪かったなあ!
 しかも相当ナメられているのか、部下の気配はない。
 先に帰らせたようだ。
 誰も来ないような森の奥に屈強な男とか弱き美少女一人。嫌な予感しかしねえ。
「さて」
 奴が目の前に立つ。

 立ち尽くす私を見下ろし、無遠慮に顎をつまんだ。
 顔を無理矢理上げさせられ、無礼な態度にムッとする。
 でもブラッドは面白そうに、

「その3。君は運命の出逢いを信じるかね?」
「…………」
 奴の目はマジだった。
 けど、さすがに自分を絶世の美女と思うほどうぬぼれてはいない。

 これは、別の軸のボスの好意が影響を与えてるのかも。
 違うようで連動してるって、誰かが言ってたしなあ。
 いや、それはそれで破滅へのシナリオじゃないか?
 どっちにしろ、関わっちゃいけない案件だ。この人!!

「運命の出逢いとか(笑)。祭りの屋台の宝くじより信じられませんよ。
 いいから帰って下さい! 私は別の国に行くんです」
 後じさって距離を取ろうとするが、詰め寄られる。
 やがて大きな木が背中にあたる。
 すぐそばに扉はないし、さっきまでうるさかった扉どもは全て沈黙していた。
「君は別の軸の私と知り合いだったようだな。私への態度は初対面のそれではない」
 くっ。相変わらず無駄に察しのいい男だ。
「私と同じ顔の男は、君に優しかったか? いやそうであれば、君はここにはいまい」
 奴は馴れ馴れしく、私の腰に手を回す。
「私も、君と初対面のような気がしない。不思議だな。
 とても高揚した、弾むような気持ちだ。
 欲しくて欲しくて仕方がなかった紅茶が、やっと手に入ったような」
 唇を近づけてこようとするのを、顔をそらして必死に拒む。
「その例え、止めて下さいよ。どんな高級茶葉だろうと、飲み終わったらゴミでしょう」
「おや、すねたのか? 可愛いな。お嬢さん」
 声が! 低い声が耳元で聞こえる! 息がかかる! 耳が生暖かい!!
 まずい。両手で完全に逃げ道を塞がれている。
 何か非常に不味くないか、これ?
「なら言い直そう、欲しくて仕方の無かった小鳥。
 色んな奴らが追い求めたが、手からすり抜けられ、そして私の手の中に飛び込んできた」
「〜〜〜〜っ!!」
 耳朶を、舐めるなっ!! 味わうように、耳のラインを執拗に舌が這う。
「や……止め、て……!」
 必死に身体をよじるが、逆に抱き寄せられ身体を密着させられる。
 艶めかしさなどない。私が逃げないよう力で拘束しているだけだ。
「おや、淑女がそう暴れるものではない。ほら、そんなに暴れると――」
「!!」
 襟元のボタンが一つ外される。
 たかが首元が晒されただけだ。けど、顔が赤くなった。
 やっぱり目の前のこの人は、知らない人だ。
 そして今は二人きり。誰もが敬遠するドアの森の奥深く。助けはない。
 急に体温が下がる。身体が動かせないことに、じわじわと背筋が寒くなる。
「おや。震えて。私が怖いのか?」
「ち、違います!」
 せめてもの意地で顔をそらしていると、もう一つボタンが外された。
 今度は鎖骨が見える。
「……ゃ……っ」
 腰をさらに引き寄せられ、鎖骨にブラッドの唇が触れる。
 歯を立てられたのか、チクッと痛みが走った。
 羞恥で頬がどんどん熱くなる。大きな手がお尻の割れ目をたどっている。
「止めて……止めて、下さい……」
 手で押し返そうとするけど、ビクともしない。
 鎖骨を食むブラッドの顔が見える。その表情は一切動いていないように見える。
 でもかすかに寄せられた眉根、せわしない手つき。
 何より、こちらが嫌がる素振りをするほど、息が乱れていく。
 ……夢中に、なっているように見えた。
「っ!! だ、ダメっ! 止めて!!」
 次にブラッドが何をしようとしているか気づき、声を上げた。
 上着のボタンをさらに外そうとしている。
 これ以上、外されたら、胸元が見えてしまう。
「ね、ねえ……止めて下さい。もう冗談じゃ済まない、から……」
 涙声で言うと、ブラッドが顔を上げた。
 その目にはかすかな混乱。さっきまでの伊達男の余裕はない。
 まるで己の内に生まれた激情に、彼自身が困惑しているかのように。
「むろん、本気だとも」
 そう言って、私を抱き寄せると、強引に唇を重ねた。
「……っ!!〜〜っ!!」
 胸を叩いて拒絶の意志を示し、首を振ったが、手で頭を押さえつけられただけだった。
 無理矢理に舌を入れられ、ぬめるものが口内を荒く探る。
 噛んでこちらの拒否を思い知らせてやりたかったが、相手は殺人など何とも思わない
犯罪者だ。怒らせたら何をするか、怖かった。
 こちらが大人しくなると味を占めたのか、何度も角度を変えて重ねては、唇を支配する。
 私の頭を強くつかんで舌を絡まさせ、淫らに抱きつくよう、目で威圧した。
「そうだ……もっと私に、おまえの腰を、すり寄せろ……」
 何で、そんな娼婦みたいな真似を……。
 でも彼の混乱はこちらにも伝染している。
 羞恥と恐怖と困惑でワケが分からず、外でされるがままになっている。
「いい子だ、お嬢さん」
 腰を動かす私にニヤリと笑い、
「やだ……、待って……っ……!」
 彼が私の下の衣服に手をかける。
 彼の下半身を見ると、かすかに盛り上がっていた。
 ――嫌っ!!
 こんな場所で、嫌だ。
 誰もいないかもしれないけど、しゃべる扉はある。
 彼らに知能があるかどうかすら謎だけど、とにかく嫌だ。
 こんな場所で犯罪行為をされ続けるのは耐えられない。
「……お、お願いします。何でも言うこと聞くから、ここだけは、止めて……」
 ほとんど本気で泣いて訴えた。
 そんな私を見下ろし、ブラッドが喉を上下させる。
 彼の目に、一瞬だけ激しい葛藤が見えた。
 ここで欲望を発散させるか、楽しみを一時お預けとするか。
「…………マフィアのボスに言った言葉を、忘れるなよ」
 低い、とても低い声でそう言って、
「来い」
 私に背を向け、先に歩き出す。
「…………」
 私は震える手で襟元のボタンをつけ、ガクガクする足で彼の後に続く。
 周囲の扉を見、今ならどこかに飛び込めるのでは――と、かすかに思うが。
「もし逃げようとするのなら、もうどこだろうと一切の容赦をしない」
 殺意を放つ目に睨まれた。
 何をされるか知りたくないので、震えながら犯罪者についていくしかない。
 これが一目惚れなら、ここまでひどい一目惚れってあるんだろうか。
 
 …………

 そして帽子屋屋敷についた。
 屋敷についてから、彼の腹心たちに好奇の目で見られたりしたが、そのあたりは省く。
 なぜならブラッドがあまりにも殺気立っていて、誰も声をかけられなかったからだ。
 まさか我らがボスが行きずりの小娘に一目惚れ、とは誰一人想像すらしなかったようだ。
『ボス、あの子を拷問にかけるの?』『うわ、可愛いのに可哀想』と真顔で双子が言ってたくらい。
 私は身を縮こませ、屋敷の奥深くに向かうしかなかった。

「っ!!」
 部屋に入るなり突き飛ばされた。バランスを崩し、後ろによろめいたら、ベッドにもろに倒れ込んだ。
 慌てて起き上がろうとしたが、上着と帽子を放ったブラッドに上からのしかかられた。
 両脇に手をつかれ、狼狽する。
「ま、待って!」
 柔らかすぎるベッドの上で必死に身をよじり、キスをしようとする彼から逃げようとした。
「その愚かな頭に風穴を開けられたくなければ言いたまえ。
 君の切なる願いを聞いて、場所を変えてやった。他に何が望みだ?」
 静かな声だが、目にはこちらを貫きそうな苛立ちが見える。
「だ、だ、だって、私たち、まだ、あ、会った、ばかりで……」
「そんなもの、後でいくらでも知り合えばいい!」
 それもう、言い訳しようのない犯罪では。
「それに、あ、あの、まず、お、お風呂に……」
「終わったらいくらでも入れてやる!」
 彼も彼で、自分の領域に入り完全に遠慮がなくなったらしい。
「!!」
 仰向けに押し倒される。柔らかすぎるベッドに身体が深く沈んだ。
 彼は体重を利用し私をベッドの上につなぎとめる。
 彼の舌が、私の唇や首筋をなぞった。
 ブラッドの足がこちらの足に絡みつき、盛り上がった股間を押しつけられる。
「ん……ん……っ……」
 混乱でどうすればいいか分からないうちに、胸元のボタンを外される。
 一つ、二つ、三つ……しまいにはそれさえ面倒になったのか、
「……っ」
 両手で引きちぎられた。外れたボタンが宙を舞うのを呆然と見送っていると、
「服など、後で好きなだけ買ってやる……」
 シャツをはだけられた。
「……や、だ……」
 胸元を押さえようとしたけれど、手をはがされ、そのまま肌着まで引きちぎられた。
「…………」
 怖い。例え同じ顔の男と身体を重ねたことがあったとしても、今、身体の上にいるのは
会ったばかりの男だ。
 むき出しの胸を陶然と見下ろされても、恐怖しかない。
「ああ、思ったよりも美しいな……」
 やっと彼の声から少しばかり苛立ちが抜ける。
「お、お願い、触らないで……」
「こんなに震えて、怯えて……」
 素手で胸を包まれ、身体がすくんだ。
 ブラッドの雰囲気が少し柔らかくなる。
 彼はいっそ、優しささえ感じる手つきでゆっくりと、果実を愛でる。
「…………」
 舌が胸を這い回るのを、唇を噛んで耐える。
「いい子だ、そのまま大人しくしていなさい」
 ブラッドの手が、するりと私の下の服を下ろした。
 彼が顔を上げ、グイッと乱暴に両足を開かせる。
 素の下半身を凝視されたとき、耐えきれずに涙をこぼした。
「なぜ泣くんだ? とても可愛い、美しい場所じゃないか?」
 寒々しいことを言ってキスをし、舌で涙をすくい取る。
「それに私は、嫌がる女を強引に支配するのは好みでは無い。
 君に屈辱と痛みを強要はしたくない。
 だから君にも私を受け入れてほしい。この先、長く共にあるのだから」
 マフィアのボスのそんな戯れ言を、誰が信じるというのか。
 ぐずりそうな私を置いてブラッドは起き上がり、自分も脱ぐべくシャツのボタンを外しだした。
 筋骨たくましい身体が灯りの中に浮き上がるのを、震えながら見た。

 ベッドの上で、私は汗ばんだ身体で悶える。
「あ……いや……や、だ……」
 全裸でうつぶせでいる。
 そして必死で大きな枕にしがみつき、拒絶の意を貫こうとするが、
「何が嫌だ。ここはこんなに欲しがっているぞ」
 ぐちゅぐちゅと、何かを引っかき回すような濡れた音がする。
 そのたびに高く上げさせられた尻が震えた。
「……あ……っ、ぁっ……あ……!」
 じんと身体を揺るがすような快感に耐えきれず、変な声が出る。
 ……奴の言葉に嘘はなかった。
 嫌がる私に、甘い言葉をささやき濃厚な愛撫を施した。
 あんな性急に襲っておいて、誰がだまされるもんかと、意地を張った。
 でも最初だけだった。
 まだ快楽にそこまで慣れていない身体は、奴の手管の下、アッサリ陥落した。

「さてお嬢さん、そろそろ君の同意があるものと解釈してもかまわないかな」
「ん……っ」
 上半身裸の男が、私の口にぬめる指先を強引に突っ込む。
 そこはさきほどまで、私の秘部を責め抜いていたものだ。
 私は動物みたいに、私の体液にまみれた指をなめ回す。
「あ……はぁ……」
 混乱と快感と、抵抗感で、言葉を発することも出来ない。
 ただ枕を抱きしめ、潤んだ目でブラッドを見上げた。
「…………」
「いい、ようだな。だが例え君の同意がなくとも……」
 その続きは言われなくとも分かる。
 ブラッドのモノは、もう耐えるのが無理と言わんばかりの状態だ。
 ついにズボンを下ろし始めた。
 ベッドサイドのランプに彼の鍛えられた肉体と、屹立したペニスが見える。
「……ん……」
 またちょっと怖くなって、枕を抱えたまま、前にずりずりと進む。
 けど腰をガシッとつかまえられ、ずりずりと彼の方に引っ張られる。
 枕を剥がされ、上半身を起こされた。
 熱い。彼の筋肉質な腕が、私の身体を抱きすくめる。
 ブラッドはうなじを舐めながら、
「お嬢さん。初めては後ろからがいいのかな? 君の希望には最大限に沿うつもりだ」
「……ま、ま、前から、で」
 かすれるような声で発言してから、ああ、言ってしまったと思う。
 次の瞬間にはひっくり返され、仰向けにされた。
 真上に彼の身体がある。耐えられず、
「……おね、がい、……は、早く……!」 
 言ってから、何を言っているんだ、自分は、と思う。
 さんざん私にひどいことをした男と、同じ顔だ。
 会うなり速攻で人を襲おうとしたケダモノだ。
「そう急かすな、お嬢さん。大切にしたいんだ。君を」
 それでもそんな言い方をされたら、もう一度信じたくなる。
 溺れさせて、忘れさせてほしい。
「あ……あ……っ……」
 太くて硬いモノが、少しずつ、一番欲しかった場所に沈められる。
「ん……ん……っ……」
「力を抜いて……そうだ……ああ、可愛い、な……君は……」
 そして耐えきれなくなったのか、私の腰をつかみ、激しく動き出した。
「……あっ……! い、いや! やだ、激しく、しない、で……あ……っ!」
 シーツをつかんで必死に我慢するけど、奥を貫かれるたびに、イキそうになる。
「あ、あん……っ、や、あ、あ、っ……あ……」
「……ナノ……っ……」
 名前を呼ばれ、キスをされた。そしてシーツをつかむ手に、やんわりと手を添えられ、
「すがる相手が違うだろう?」
「…………」
 恐る恐る、ブラッドの背中に手を回す。
 彼がより近くて、肌が密着する。
「ナノ……っ」
 激しい侵略が再開される。
 でも抱きしめれば抱きしめるほど、より深い結合を誘っているようで、恥ずかしい。
「隠すな……淫らな君を……、もっと、私を、求めろ……!」
「ああ、ブラッド……! く、下さい……もっと、欲しい……」
 ベッドのスプリングがギシギシ揺れる。
 身体があまりに揺さぶられるから、自分を保てない。
 怖くて、不安で、したいだけキスをねだって、彼の首筋にすがって泣いた。
「ナノ……私が、欲しいか……? なら、ずっと、ここに、いるか……?」
 快楽に貫かれ、突き上げられ、汁をこぼしながら、私は媚びた言葉を口にした。
「い、いたい、です……ずっと、ここに置いて……私を、飼って……!」
「……ああ、君は、本当に、可愛いな……」
 動きが強くなる。息も出来ないくらいに苛烈で。まぶしくて。
「ブラッド、あ、ああ……っ! あ、あ……!」
「……ナノ……っ……もう、私の物だ……誰にも、渡さ、な……」
 そして、自分の中にブラッドの激情を感じると同時に。
「…………っ!」
 私も声も無く達し、彼の腕の中に崩れ落ちた。
 甘い口づけを恍惚と受け入れながら。

「はあ、はあ……」
「ナノ……最高だった……愛している……」
 私の唇や胸に甘い口づけを落としながら、ブラッドが言う。
 私はもう、色んなことがありすぎてぐったりしていた。
 これで彼も気が済んだだろう。さっさとシャワーを浴びてぐっすり眠りたい。
 そしてこの屋敷から出たい。
「……で?」
「ん? どうした?」
 私の髪をすきながら、上機嫌にマフィアのボスが言う。
 疲れた様子ゼロ。そもそも抗争帰りだったはずなのに、化け物じみた体力だ。
 いや、それより。その――まだ、抜かないの?
「あ、あの……」
 面と向かって言うのはためらわれ、促すように見上げた。
 するとブラッドはフッと笑い、身体を起こす――抜かないように。
「何だ、もう欲しくなったのか? 君も淫乱な女だな。だが、それでこそ私にふさわしい」
「は? はあ!?」
 ブラッドが私の足を抱える。
 いや、まさか、ないでしょ? 連戦とか。
「だが無理をするな。ゆっくり楽しもう」
「いえ、私が言いたいのは、早く抜――あ……や……っ……!」
 緩やかに押し込まれ、ゾクッと、解放されたはずの快感がわき起こる。
「ま、待って……もう少し、休み――や……っ! あ、あっ、ぁ、ぁ……ん」
「そんな可愛らしい顔をしないでくれ……君に無理をさせ、そうだ……っ……」
「ブラッド……や……っ……」
 でも私の声はもう媚びた声になってしまっている。
 気持ちいい。終わりたくない。終わらないで。

 そして夜のしじまに、雌の鳴き声が響いたのであった。
 
 …………

 …………

 …………

「また逃げようとしたのか? いけない子だ」
「だからって、こんな風に縛らせるこたぁないでしょ。変態ですか」
 不本意である。
 ベッドの左右前後の支柱に両手両足首を縛られた格好で、私は不満を漏らした。
 あれから屋敷に置かれ、むろん何度も何度も何度も何度も逃げようとした。
 で、この結果である。

 仕事を終え帽子を外したブラッドは、私のすぐそばに座り、頬を撫でる。
「だが両足のみでは、君は足かせをねじ切って逃げるかもしれない。
 両手のみでは、君はベッドを引きずって逃げるかもしれない」
 どんだけゴリラだ! 
 こんなキングサイズのベッド、誰が持ち上げるかっ!!
「――まあ本音は君に羞恥を与えることだがな。
 私の部下にこんな格好をさせられ、屈辱だっただろう?」
「…………」
 そりゃ、赤の他人にこんな大股開きをさせられたらね!
「私に逆らえば、それなりに痛い目を見る。
 これで少しは、私の屋敷にいてくれる気になったかな?」
「最低野郎……」
「面白い子だ」
 ボソッとつぶやくと、ブラッドは遠慮会釈もなく、私のスカートの中に手を這わせる。
「変態! 痴〇! 紅茶中毒! 変な帽子!」
「帽子について、とやかく言われるのは心外だな。
 それに紅茶中毒については、君もそうではないのかね?」
 恐ろしく布面積の少ない、というかほとんどがヒモな私の下着――むろん私の趣味で
無くマフィアのボスの意向により強制的に着用させられた――の隙間から指を
忍び込ませながら言う。
「んっ……それは、別の、話で……」
「私と君は『他の奴ら』より上手くやっていけると思うのだがね。
 至高の紅茶が分かる舌を持っているし、身体の相性も……だろう?」
「……っ! 昼間から……この、変態……!」
「時間ほどいい加減なものはここには無いさ。
 それに、それを言うなら昼間からこんな格好をさせられ興奮している君も、だろう?」
 スカートをまくりあげられると、大きく開かされた下半身があらわになる。
 最低野郎の下に晒された、ヒモ同然の下着は……その、布地の箇所が、ちょっと濡れてた……。
「いけない子だ。こういった趣味があるのなら、次は縛ってあげようか?
 それとも恥ずかしい衣服の方がお好みかな?」
 指が下着の間から滑り入れられるけど、四肢をしばられているせいで何も出来ない。
「あっ……やだ、そこ、いじめ、ないで……ぁ、ん……!」
 ブラッドが何かをすると、なぜか両の足かせが外れ、両足が自由になる。
 でも両手首の戒めはそのままだから、何も出来ない。 
 好きにされて、不本意ながら喘ぐしかない。
 ブラッドはむくれる私に苦笑しながらキスをする。
「もっとこの屋敷に慣れたら、いずれ紅茶を淹れてくれ。
 君の紅茶は最高の味だという噂を耳にしている」
「気が向いたら」
 プイッとそっぽを向くけれどキスをされた。
 まあ、多分、そう遠くとは言わず淹れさせられるのだろうが。
 その先は知らない。
 でも私が『色んな場所から』逃げてきたことは、先刻ご承知のようだ。
「逃がしはしない。つなぎ止めてみせる……他の誰にも、渡さない」
 髪にキスをしながら、独り言のようにつぶやくのが聞こえた。

「愛しているよ、ナノ」
「嫌ではありませんよ、ブラッド」
「ずいぶんと、高慢なペットもいたものだ」
 苦笑しながら小突いてくる。そして両手首の戒めを外してくれた。

「ブラッド……ああ、ブラッド……っ」
 そして好きにされ、彼を抱きしめながら、私は次の逃げる算段をする。
 ブラッドもきっと、そんな私を見抜き、閉じ込める手段を考えているのだろう。
 でもそんな関係もちょっと楽しい。

 こんな気持ち、久しぶりかもしれない。

 久しぶりで――とても、ワクワクする。

 私はこの世界の彼が、そこまで嫌いでは無いらしい。
 そんな自分に気づき、ちょっと驚く。

 まあ、それはまだ表に出さないですけどね。

「キスをしてくれ、ナノ……」
「はい……ブラッド……好き、です……」


 そしてまた、新しいゲームが始まる。  




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