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■エースにいじめられた話

※R18
※ユリウス×夢主前提のエース×夢主



「ふんふんふーん♪」
 今日も今日とて、不思議の国は狂っている。
 その中で唯一の常識人たる私ナノ。
 最愛の恋人、ユリウスははもう数時間帯もすれば、仕事から帰る。
 献身的な私は最愛の時計屋のため、珈琲を淹れている。
 とくとくとポットから珈琲をカップに注ぎ。

「あ」

 失敗☆

 一見、普通の珈琲に見える。常飲しない人なら、多分普通に飲む。
 だがこれは20点代の珈琲だ。
 味のうるささに定評のある時計屋に飲ませてはならない。
 うーん、焙煎が甘かったかなあ。色合いはいいと思ったんだけど。
 いや、火力も不味かったか。
 まだまだ完璧にはほど遠い。

 ……ため息をつく。ストレスが珈琲に出てるかもしれない。
 せっかく恋人になったのに、ユリウスは仕事、仕事、仕事。
 私に構ってくれない。もはや寂しい独り寝も当たり前だ。
 こんなことで、大丈夫かなあ。

 そのとき、バタンとキッチンの扉が開いた。
 てっきりユリウスが早く帰ってきたのかと、笑顔になりかけ――止まる。

「やあナノ、俺と浮気をしてユリウスと三人で楽しいことをしないか?」

 自称親友が。大変さわやかな笑顔で。
 まっ昼間から下ネタを放ってきやがった。
 なので私も手招きし、今淹れた失敗珈琲をつきつけ、
「エース、エース。これを飲んでください。
 あなたにふさわしい珈琲だと思うんです」
「え? 俺のために淹れてくれたの? 嬉しいなあ!」
 剣の柄に手をかけながらこちらに来るのは、奴なりの威嚇であろうか。
「いえまさか。ユリウスのために淹れたんですが、失敗作でとても
飲ませられないので、あなたが処分してください」
「あはははははは! 失敗作を平気で友達に飲ませるんだ!
 俺って本当に好かれてるなあ」
 本気で剣を抜こうとするな。
 慌てて後じさるが、背後が壁である。
 逃げようと思ったが、ドンと身体の両側に手をつかれてしまった。

 ……何かいつもと雰囲気が違う。
 そういえば、ユリウス不在で彼とだけ会うなんて、ありそうでほとんど無かったことだ。

 エースは私を見下ろし、
「ナノ。もっと仲良くしようぜ。俺は君もユリウスも大好きなんだ」
『仲良く』という意味に、限りない広さを感じて怖いのですが。
「私も大好きです、大好きです。毎度、語尾に死ねとつけたいくらい、
あなたが大好きですシネ」
「ふうん……」
 エースの目がすうっと細められる。煽りすぎたか。

「じゃ、君にもっと好かれるよう、いじめちゃおうかなあ……」

 なぜ私の襟元に手をかける。大声を出そうとしたが、
 
「ん……っ」
 
 襟元から忍び込んだ手が、私の胸に触れる。
 私は背を悪寒でのけぞらせ、
「ちょっと、エースっ!」
 これはやりすぎだ。立派なセクハラ。
 友達同士の悪ふざけにしても、度が過ぎている。
「そう? 俺は君に深く傷つけられたんだ。
 ちょっとくらいやり返したって、いいだろう?」
「ま、待って……!」

 しまった。選択肢をミスった。
 もしかすると、元々エースは何かしら鬱憤(うっぷん)を抱えて
ここに来たのかもしれない。
 なのにユリウスは不在。ていのいい八つ当たり要員として、私を発見したら……。

「なあ、君のここ、ユリウスはどう可愛がってる?」

「何を……んっ……ぁ……」
 肌着の上から、先端を指で丹念に弄られ、なぜかゾクッとする。
 別の手が、さらにボタンをゆるめ、私の肩からシャツを下ろした。
「なあ、ナノ……」
 耳元で声がし、耳朶を舐められる。
 肌着がずらされ、熱くなった胸元が露わになる。
 叫び声を上げ、渾身の力で突き飛ばすべきだ。
 なのに……なぜか私はされるがままになっている。
 エースも抵抗を予期していたのか、予想が外れて意外そうだった。

「なあ、何でそんなにその気なんだ?
 もしかして最近かまってもらえなくて、溜まってた?」

「ち、違っ……!」

 男じゃないんだ。女にそんなこと、あるわけない。
「信じられないなあ、ユリウスの奴。
 女の子にだってちゃんと性欲はあるんだぜ?
 なのに分かってやらないなんて、恋人失格だなあ、あいつも」
 違う……ユリウスは、忙しい、から……。
 肩にチクッと犬歯が立てられた。私の身体がビクッとなる。
「ん……んぅ……っ……」
 両の胸をあらわにされ、好きなようにエースの舌が這う。
 羞恥心に全身が真っ赤になった。
 手はというと、私の服の上から股間を撫でている。
 けど、むしろその荒い刺激に……だんだん、身体が……。
「や、やめ……エース……だめっ……」
「ん? ダメだから、直接は触らないんだろう?」
 どういう理屈だ……!
 胸はしつこく舌で嬲るのに、下はガサツにまさぐるだけ。
 合間に何度もキスをされる。
「ほら、舌を出して」
 黙って唇を開くと、舌が絡みつく。
「なあ、何でそんなに素直なんだ? 君って淫乱な子?」
「違う、違います! あ、あなたが力ずくで……!」
「それこそ違うぜ。君は最初っから抵抗しなかっただろう?」
 相変わらずスカートの上から、股間を撫でながら笑う。

 違う……わ、私が好きなのは……。

「じゃ、確かめてみるか」
「え……?」

 エースが邪悪な笑いを浮かべた。


 キッチンに私の悲鳴が響く。
 だが主不在の時計塔に、他の人間はいない。

「止めて止めて! 見ないで! お願い、見ないでっ!!」

 今度は本気で抵抗する。有らん限りの力で暴れ、逃げようとした。
 だが両手は縛られ、身体はキッチンの床に転がされている。
 胸は完璧にあらわにされ、スカートはたくし上げられている。
 そして……濡れて引きちぎられた下着が、転がっている。

 エースは私を押さえつけ、膝を持って大きく足を開かせたまま、呆れたように言った。
「うわー。まさか本当に足りてなかったとはね」
 濡れそぼって震える私の谷間を見、嘲笑った。
「ユリウスもひどいなあ。仕事にかまけて恋人を放置するから、
ナノが不満がっちゃってるじゃないか。でも……」
「ひっ……!」
 濡れた谷間にそっと指を入れられ、声がうわずる。
「それで他の男にやられて感じるとか、そういうのは男の妄想の世界だと
思ってたんだけどなあ……イケない子だ、君は。ますます好きになる」
「いやぁ! 放して……お願い、放して!……ん……っ!!」
「でもまあ、ここまで悦ばれたら、男としては応えないと
失礼だよなあ。どうしようか……」
 グチュグチュとイヤな音がする。
 好きに動かされ、刺激されるたびに、羞恥心と快感で身体が跳ねた。
 私は涙目でエースを見上げる。
 私を見下ろすエースが、一瞬だけ笑顔を消し、加虐的な表情を浮かべた。
 

「やあ……あ……あ、あ、ああ……!」
 キッチンに卑猥な音が響く。
「ほら、もっと、腰を、上げて……すごく、いいよ……」
 私を床に這いつくばらせ、エースは後ろから何度も責める。
 床に体液が飛び散り、完全に衣服を剥がされた私は、床に爪を立て、
達しそうになる自分を抑える。
「ああ、は、あ、ああ……あ、あ……っ」
「そう吸いつくなよ……ダメな、子だ……」
 抽送の音がいやらしく響き、痛いくらい乱暴に胸をつかまれるが、
それさえも快感を増す刺激になる。
 最奥を何度も抉られ悲鳴が上がる。
「エース……エース……っ……」
「なあ、ユリウスと、恋人になってから、どれくらい、した……?
 こんな場所で押し倒されたりとか、あった……?」
「……く……ん……う……」
 あった。最初は構ってくれた。
 それこそ階段を一緒に上ってる途中、突然襲われたこともあった。
 昼間、何となく目があって、階下の物置部屋で愛し合ったことも。
 ただ、最近は、ユリウスが忙しくて……。
「それは、違うぜ……君の方から求めない、から、君に嫌われてるんじゃ、
ないかと、あいつは、馬鹿な、勘違いを……」
「ん……ん……やっ……あ……」
 滴を垂らす茂みを、指が荒らす。卑猥な音がより大きくなる。
 速度が速くなり、気持ちよすぎて、どうにかなりそう。
 涙が出る。今さらながら、恋人を裏切っている最低な女であることを自覚して。
「大丈夫だよ……、ユリウスとも俺とも、三人で仲良く、すれば……」
 そんなこと、私もユリウスも、許さない。
「好きだぜ、ナノ……」
 でもそう囁かれ、内に生温かい物がほとばしるのを感じ――私も声を上げ、絶頂に達した。

「なあ。次は三人で、楽しもうぜ……」

 遠くからエースの声が聞こえた気がした。

 …………

 …………
 
 数時間帯後。ここは昼間の作業場だ。
 
「42点。ここ最近では最悪の出来だな」

 容赦なく点数を入れながらも、ユリウスは珈琲を飲んでくれる。
 私は疲れた顔で『はあ……』とトレイを下げる。
 大変だった。本当に大変だった。
 エースがさっさと帰りやがったので、大慌てで身体を清め、キッチンに
残った『証拠』を処分し、喚起して消臭剤を巻いたあたりでユリウスが
時計塔に戻ってくるのが見えた。
 あとは死にものぐるいで珈琲を入れた。
 最初の珈琲より美味しく出来たこと自体が奇跡だった。
 今は横になって休みたい。だが罪人に許されるわけがない。
 
「どうしたナノ」
「いえ、別に」
 な、何か顔に出ているだろうか。
 私はユリウスから必死に目をそらす。
「…………」
 ユリウスがテーブルに珈琲を置く。
 ばばばバレた? 心は裏切っていないとか勝手すぎる言い訳はしない。
時計塔を追い出されても仕方ない。私は最低女だ。
 なのに。

「ナノ……」
 立ち上がったユリウスに抱きしめられ、キスをされた。
 同時に手が、変な場所を探り出す。

「ど……どうしたんですか? いきなり」
 もしかして本当にバレたのかと、心臓を撃ち抜かれた気分だった。
「そこまで意外か? その、恋人同士だろう?」
「え、ええ。でも、最近は……」
 私を優しくソファに押し倒しながら、ユリウスはもう一度口づける。
「どこかの馬鹿に忠告されただけだ。
 私があまりに構ってやらないから、おまえが寂しがっていると」
 とんでもない野郎だ。私を抱いた後のその口で。
「でもその、昼間からは……」
「時間帯などどうでもいい。なあ、終わったら一緒に風呂に入ろう。
 それから夕飯を取って、その後も……」
 私の手を取り、微笑むユリウス。
 その私は連戦で、ちょっと疲れてます。
 なんて言い訳が出来るはずもない。

「ユリウス……嬉しいです……」

 最低な私は最高の恋人を抱きしめる。
 恋人もすぐそれに応え、私たちは作業場で甘く絡み合う。


 エース、まさか『三人で』は本気ではないですよね……?

 幸せな中に、どこか不安を残しながら。

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