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■そしてやられるだけの日常・下

※R15

窓の外は雪景色。そしてここはユリウスの作業場だ。
私はユリウスの膝にすがり、涙にくれる。
「ユリウスー。皆が私をいじめるんです。
私、×××じゃないのに!もっと身持ちが堅い女なのに!!」
「分かった分かった。奴には後で必ず報復するよう努力する。
ジョーカーも出来るだけ何とかしよう。だからそんなに泣くな」
私の頭を撫でながらユリウスは慰めてくれる。
……しかし制裁についての具体的な言及が皆無だ。
あまり期待しない方がいいんだろうなあ。はあ。
ユリウスは私の頭を撫で、
「それで、他の奴らは?エースとジョーカーに何をされた?」
「はい、実は――」
ユリウスになら隠すこともない。
私は彼らにされたことを切々と訴えた。

…………

そして。
「何で、こんなことに……」
「すまない、おまえに傷を吐き出してもらい、少しでも慰めになればと思っただけだったのに……」
椅子に座り、奉仕する私の頭を押さえながら、ユリウスがうめく。
言葉は優しいが、私の口の中の××は……ええ、ご立派なことで。
ええ。ええ。膝にすがって『何をされたか』を延々と語ったら。
野郎が反応しましてね。
気がつくと逃げられない感じに、身体を押さえられてました。
ブルータス、おまえもか。

むろん最大限の抵抗はした。が、ユリウスであろうと、男性は男性。
力ずくで反撃を封じられ、ご奉仕を強制されました。
もう、こうなったら早く終われとそれだけを願い、口を動かしていると、
「?」
まだ達してないのに、ユリウスが私の頭を離してくれた。
相手に理性が戻ったのかと期待するが、
「ナノ、すまない」
「っ!」
作業台に押し倒されました。背中痛いです。
台の角が当たるところとか特に。
「最低最低最低!」
暴れるけれど、全く通用しない。
「すまない。本当に……」
私の反撃を適当にいなし、葬儀屋は誰かさんと同じに私の肌着を
たくし上げる。そして胸にキスをした。
荒れた手が私の下半身に侵入し、ちょっぴり潤う場所に触れる。
「んっ」
腰をビクッと浮かすと、ユリウスは罪悪感が少し薄れた顔で、
「何だ。おまえだって、その気じゃないか」
皆さんの調教の成果です。
あきらめて力を抜くと、時間帯が夜に変わった。
うっすらと暗くなる部屋に、暖炉の木がパチパチ燃えている。
「ナノ。終わったら、シャワーに入ろう。
……今夜はもう、帰さない」
言っていることは恋人のそれっぽいですが、やっていることは同意なしの犯罪です。
「ナノ……」
耳元に手を当てられ、キスをされた。
私も目を閉じ、それを受け入れる。
流されていれば皆、満足する。私はそうやって自由になるしか――。

…………

…………

私はベッドで目を覚ます。ちょっと寒い。
ぬくもりを求め、隣に目をやるが――誰もいない。
私が寝ているのは、ユリウスの部屋のベッドではない。
「――夢オチ!?」
ガバッと起き上がり、愕然とした。
そして両手で顔に手をやり、真っ赤になった顔を隠す。
「私は何という夢を……」
恥ずかしさに身体がガタガタ震える。
いくら何でも欲求不満すぎないか、私。

「しかし、あの人数と回数は新記録でしたね」

夢とは言え、よくもったなあ、私。
おかげで、夢から覚めても全身が気だるいような錯覚に陥る。
「こんなダメな私に活を入れるには、目覚めの珈琲に限りますね」
そう言ってベッドから下りようとした。

カチャリ。

そこで気がつく。片方の足首に、何やら鎖付き足輪。
鎖の先はベッドの支柱。頑丈に溶接されております。
そして改めて気づく。このベッドは大きい。
二人どころか三人四人は余裕だろう。
「…………」
ガチャガチャとしばし鎖をいじり、そしてさらに気づく。
壁や家具全てに帽子の意匠が。
窓を見る。鉄格子がはめられていた。
自分を見る。大変にきわどいデザインの下着だった。
黒のガーターにベビードール。小悪魔風リボンのついたTの字な下着。

そして私は扉を見る。
そこには――。

私の悲鳴が響く。

「あいにくと、当屋敷では珈琲は禁止だ」

凍りつくように冷たい声。
冷酷なまなざし。
ブラッド=デュプレがそこに立っていた。
ナンバー2と門番双子まで連れて。
「うわあ、お姉さん、すごい格好だね!」
「色々マニアックだよね、ボス」
「おまえら、ジロジロ見てんじゃねえよ!」
そう言いながら一番、私の胸とTの字下着を凝視するエリオット。

「さて、めでたく新記録を樹立したそうだな」

ブラッドが手に持った長いものを自分の手に打ち付ける。
ステッキではない。
乗馬鞭だ。
これから馬に乗るわけでもあるまいに。
ブラッドは激怒している。静かだが、かつてないほどに。

「制裁を課すにしても、私一人では君を満足させられるか不安でね。
こうして部下も連れてきたわけだが」
「いえいえ満足ですとも、あなたお一人で!」
複数はマジで勘弁して下さい。せめて二人以内で。

「それではさらなる記録に向けて頑張っていただくか」

ブラッドが胸のタイをほどき、他の者も服をゆるめ始める。
私は涙もつきてベッドに横になり、
「ブラッド。一つだけ言っておきます。
 ……どなたとも合意ではありません」

『嘘つけ!!』

全員から総ツッコミを受けた。
そんなのアリか。

…………

…………

その後、私は激しい疲労により、短くない時間帯、を帽子屋屋敷の世話になることとなった。
ブラッドのために、紅茶を淹れさせられてる日常だ。
逃げる隙をうかがうも、足輪は首輪となり、鎖の先を握るのはブラッド。

「やはり、ペットは室内飼いに限る。
外に出しておくと、誰彼構わず尻尾を振り、媚びを売ると来た」
紅茶を飲みながらブラッドがぼやく。
「いや、だからですね。ブラッド。私では無く、向こうに非が――」
今も、いろいろ乱れたメイド服で、ブラッドに抗議するが、
「安心しなさい。二度と離す気は無い。何があろうと」
ギロリと睨まれた。
無実の訴えが通じず、涙にくれる私。
ソファに座るブラッドは、ティーカップを置くと、私を抱き寄せてキスをする。
それで、そのまま押し倒し、服をまさぐってきた。
「ナノ……」
「はあ」

自由になる算段を練りつつ、私は目を閉じ、愛撫を受け入れるのであった。
流される日常に慣れつつある、我が身を後悔しつつ。


結論。流されっぱなしダメ、絶対。

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