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■劇的何とか計画6

さて、帽子屋ファミリーのお屋敷に無理やり招待された、私ナノ。
『まずは汗を流すといい』となぜか真っ先にバスルームに送られた。
そしてブラッドと護衛の部下さんたちに連行され、客室に案内されることに。
もちろん何度も、用事はない、すぐ帰ると言ったのですが……。

ガチャリと扉が目の前で開く。扉の向こうの部屋は――
「ブラッド。ここ、どこっすか」
御自ら送って下さったボスに問いかけると、
「見ての通り、ごく普通の客室だが」
「窓に鉄格子がはまってるんですが」
「知っての通り、我が領土は成長途上だからな。安全のためだ。
だが、それ以外はごく普通の客室だろう?」
「家具がベッドとテーブルと椅子くらいしかないのですが」
「君は過度な装飾や物品を好まないからな。必要最小限にした」
これなら私のボロ屋の方がまだ、一個か二個、家具が多い。
「ここ幽閉用ですよね、どう見ても。外鍵ですし」
「君は疑い深い子だな。せっかく友人をもてなそうとしているのに。
この部屋がそこまでお気に召さないか?」
「い、いえ。別の自分の一人が、ここでヒドい目にあったような……」
「ほう?」
ん?何か今、私、変なことを口走ったような……疲れてるのかしらん。
するとブラッドは私の髪を一房手に取って口づける。ゾワリ。
「私が、友人の君にひどいことをすると?」
え?しなかったこと、ありました?
そして後ろ手に指示したのか、部下さんたちが一礼して『自称客室』を出て行く。
重い音を立てて扉が閉まる。
「さて、二人きりになれたな、お嬢さん」
後ろから抱きしめられた。私は固い声で、
「……扉の向こうの護衛さんたちが、立ち去っていないみたいですが」
「見張りだ。何、ここで起きたことへの反応や口外はしない。
道ばたの石のようなものだと思えばいい」
「無理っす」
「なら、終わったら始末することに――」
「今気づきましたが、全く気になりません」
「それが賢明だ」
ブラッドは満足そうに言い、私のうなじに口づけたり、足の膝上をすーっと
なで上げたり、だんだん触れ方が露骨になってくる。
――いやいやいや!そうじゃないでしょう!
これじゃあ身体を好きにされ、監禁されというパターンに入ってしまう。
「あのですね、ブラッド。実は私は重大な悩みを抱えていまして」
何とか気をそらそうとした。
「ああ、金か?望むだけ持って行くといい。ただし条件があるが」
……条件とやらが、どんな恐ろしい内容なのか、考えることすら怖い。
打つ手無しの私は、屈辱の涙を飲んで支配者に従うことにした。
「ん……」
服の前ボタンが一つ一つ外され、シャツを下ろされ、肩が、その下が
むき出しになっていく。不本意だ。猛烈に不本意だけど、
「出来れば良い子にしていてほしい。でなければ門番たちや、君と
ひとときの逢瀬を楽しんだ獣も、呼ばなくてはいけなくなるだろう」
バレてましたか。
三月ウサギにむごたらしい制裁が課されてなければいいですが。
「あ……ん……」
衣服を肌着ごとたくしあげられ、少しだけ変な声が出る。でも、
「あ、あの、ブラッド……カーテン……」
鉄格子の窓のカーテンは、当たり前に全開だ。
「別に見る者もいないだろう。気にすることはない」
まあ窓の向こうは木立と空。確かに外から見る人は、物理的にも度胸的にも
いないだろうけど……やはり気になる。
「そこまで気になるか?それなら――」
「や、やめ……!」
下の服を強引に下ろされ、下が、その、丸見えになる。
誰か見ているわけではないのですが、窓が……青い空が……。
「はあ、あ……」
バサッと衣服が足下に落ちる音がする。
羞恥で両足を閉じようとするも、
「や……っ」
「おや、ここはもう潤っているようだな。よほどうちの犬の技術はお気に
召さなかったのか?それとも君は心底から、そういう性癖なのか」
し、失礼すぎる……!つか部下の不祥事を謝罪する気は無いのか。
「ナノ」
後ろから下をいじられ、うなじに口づけられ、胸を弄られ、身体に
力が入らない。仮に誰かが窓の外にいたら、自分の身体が丸見えという
ことも、恥ずかしさを煽って仕方ない。
「あと、真っ昼間からというのも、ちょっと……ん……」
顔だけ振り向かされ、肩ごしにキスをされ、声が上ずる。
ぼんやり開いた口から舌が入り、私の舌をとらえて絡みつく。
「ん……ん……」
そしてすぐ近くで、よく知っているけど知らない声が、
「なら昼間らしく、寝具の使用は避けるか」
そう言われて、流されかけていた心が、ちょっと正気に返る。
「え?ちょっと待って下さいよ。床とかなら、普通にベッドで……」
と言いかけたとき、身体がフワッと浮き、椅子に座らされた。
「え?何で私、座ってるんです?」
よく分からずブラッドを見上げると、ブラッドは私の前にかがみ、タイを
外しながら、優しい笑顔で、
「それはな、お嬢さん――」

…………

鉄格子の向こうは月夜だった。
うーん。自分で言って何かデジャヴが……気のせいですかね。
私は布団にくるまりながら、
「いやあ、ベッドっていいですねえ」
気を取り直して言ってみる。うむ。寝てよし休んでよし×××してよし!
……椅子は無理がある。実際、色々無理があった。せめてソファでしょ。
いえ、明らかに腹いせでしたね、あれは。
「君の店に、偵察を行かせた」
「!!」
ごろんと身体を転がされ、ブラッドの方を向かされた。
ボスは上機嫌にも不機嫌にも見えた。

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