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■テントの夜3

テントの中は明かりもなく暗かった。
それでもホッと安堵の息がもれる。
「やっと落ち着きましたね」
外に声がもれないように気にしながら、私は布団の上で横になる。
ユリウスは私の左に横たわりながら、暗い声で言った。
「……すまない」
あれ?また落ち込んでる?いつものことだけど、何なんですか?
「私は頼りない男だ。おまえのために安全な宿一つ確保出来ず、森では火の一つも
おこせない。エースに変な意地を張って、風邪まで引かせるところだった」
「ちょ、ちょっとちょっとユリウス!」
そもそもの原因は私だし、そこまで落ち込むことないのに!
「前向きに考えましょうよ。ね。お互い疲れてるんです。さ、寝ましょうよ」
コートを脱がせて横にならせ、布団をかけてやると、やっと落ち着いたようだ。
私も布団をかぶりながら左のユリウスに、
「遊園地ではたくさん遊びましょう。ジェットコースターに乗って!」
「いや、絶叫系は私は……」
「何だか初めてデートみたいなことが出来そうですね。楽しみです」
「…………努力する」
気のせいか妙に悲壮な顔の、左隣のユリウス。
私は疲れもあってゆっくりと目を閉じた。

…………
暗闇の中で、身体をまさぐられている。
――ああ、もう……ユリウスったら……。
もしかして私にサービスすることで、起死回生を図ってるんだろうか。
そんなことしなくったって私はユリウスが大好きなのに。
というか時計塔ならまだしも、こんなところでこんな行為に及ぶなんて。
他人のテントの中、しかも外に本人がいるので動けないし声も出せない。
――ユリウス……こういうことは……。
でも意思表示が出来ない。
それをいいことに、動きは次第に大胆になっていく。
――ん……。
手が下半身を撫でる。最初は服の上からそっと。でも少しずつ触り方が強くなり、
敏感な一点をしつこくまさぐる。
――ん……や……。
声が出そうになり、あわてておさえる。
右から伸びる手は声を出させようとするかのように指を深く押しつけ、上下に執拗に
擦ってくる。
――ユリウスの馬鹿……。
半分眠りながら、下がじわりと濡れてくるのを感じた。
でも手はまだ服の上だ。まるでこちらを焦らすように、太腿の方を撫でたり、お尻に
触ってみたり。焦れったくなって、少し腰を動かす。
すると暗闇の中で誰かが苦笑する気配。
右隣で身体を起こし、こちらのウエストに手を当てる。
――ちょっとユリウス……エースが外にいるのに……。
でも聞こえたら困るから、こちらからは動けない。
すると手はするっと私の下の着衣を下着ごと脱がせた。
――……っ!
下半身があらわになり、下着に糸を引いたのが分かる。
――ん……だめ……。
指がのび、すっかりぐしょ濡れになった一点を刺激し出す。
私は声を出すまいと必死で、ぎゅっと目を閉じ、快感に耐える。
手がさらに上着をたくしあげ、胸まで外気に晒す。
ほぼ全裸に近い状態になり、胸に手が伸ばされた。
――ん……ん……。
適度に力を加え、反応をうながすように先端に口づける。
ビクッと背筋をそらせば、歯を軽く立てて甘噛みし、ついでとばかりに唇にキス。
危うく本当に声を出すところで、冷や汗をかいた。
「……っ!」
再び股間に伸びた手が、下方をまさぐる。愛液にまみれた場所に指を立て、わざと
音を出しながらかき回す。
「……っ!……っ」
声は出さなくとも息は荒くなる。すると煽るように最も敏感な一点を強く摘まれ、
電流が走ったかのように大きくのけぞる。快感で達するかとさえ思った。
――ユリウスの意地悪……。
指がゆっくりと中に潜り込み、内部を探りながら、ゆっくりと解していく。
――ユリウス、お願いだから早く……
これ以上焦らされたら、本当に外まで聞こえる大声をあげそうだ。
それ以前に、秘部に悪さするこの音は本当に外に聞こえていないのか。
恥ずかしくて背徳感に顔が赤くなる。
やがて足を抱え上げられ、生温いものをこぼす何かが押し当てられる。
――あれ……?
そのとき、何か違和感を抱いた。
ユリウスって、ええと、その……こんな、だったっけ?
半分寝ぼけていて気づかなかったけど、準備のやり方にしても、前はもう少し手探り
というか、全体的にぎこちなかった。なのに今は、妙な慣れがあるし、何より大胆。
でも仕事人間の恋人だ。最近ご無沙汰だったし、告白されて間も無い。
――男の人だし、私の身体に慣れてきたんですかね。
思い直し、期待を持って大人しく待った。
「……っ!」
熱いモノが中に入り、声を上げそうになって押さえる。
すぐに相手は動き、私はシーツをつかんで耐える。
「……っ……」
息を乱すことさえ許されない状況で、目をつぶって律動に耐える。
でもそうすればするほど、愛液が溢れ、結ばれた箇所からこぼれてシーツに染みを
作っていく。淫らな音がテント内に響き、絶対に外に聞こえていると確信する。
――エースに会ったらどんな顔を……あとお洗濯とか……ああ、もういいです……。
快感の前に全ての世間体がどうでもよくなり、私は足を広げ、腰を振って、恋人に
協力する。野外のテント、外に人がいる、声を出せない。
全てが快感を増幅させ、興奮を高めていく。
まるで押さえるな、と言わんばかりに相手の手が、私の口の中に入る。
「…………」
飴のようにしゃぶりながらも、違和感を覚える。
――ユリウスの手って、こんなでしたっけ……。
使い慣れた硬い手。でも手先を使うから、もっと荒れていた気がする。
――あれ……?
でも眠いから、勘違いしてるのかと思う。
そもそも、何でこんなに暗いのだろう。
外ではエースが焚き火の番をしているはず。その焚き火は。エースは……。
どちらにしろ、律動がますます激しくなり、考えているどころではなかった。
唾液を引いて口から離れた手が私の足を抱え直し、さらに深く、最奥まで押し込む。
――ユリウス……ユリウスっ……。
もう息を乱す程度のことはあきらめ、シーツをつかんで必死に耐えた。
――あ…やあ……あん……だめ……。
深く、深く揺すぶられ、ぐちゅぐちゅにかき乱され、快感でめまいがする。
「………っ……ぁ……っ!」
視界が真っ白になって達した瞬間、小さな声が漏れる。
そして私の締めつけに煽られたように中で吐き出される感覚。
ようやく解放され、シーツに沈みこんで脱力する。
ユリウスもゆっくりと右隣に戻りながら、声を出さずに笑い、懐紙で私の×××を
拭く。その間に、イタズラのように、まだ十分に潤っている場所を、音を立てて
弄る。また反応しそうになり、右隣を叩くと、ふっと笑う声。
やがて、時間をかけて身体を清める。相手は服を手早く身につけさせてくれた。
……ぬぐったとは言え下着は冷たかったのは仕方ない。
まあ他人のテント内でコトに及んだ自業自得としか。
右隣から回される大きな腕に安心し、私は行為の疲れもあって今度こそ眠りに落ちた。


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