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■VS.双子・上

……さて、また会場。説明するまでもない自称『隠し芸大会』の会場です。
改めて説明しますと、これはナイトメア主催の催しです。
夢の中に不思議の国の住人全員を召喚し、戦うという趣旨なんですな。
『隠し芸』というのは、イメージによって、己の武器を呼び出す所から来てるとか。
ただし役持ちは、定番の武器を退屈そうに出すだけ。
でも、余所者の私は意外な武器を出し、それが今や生命線になっています。

さて、それで次の戦いなのですが……。

『試合開始!!』

司会者の無情な宣言が響き、会場に歓声が響く。
でも私はそれどころじゃあなかった。
「ナイトメアー!これはいくら何でも卑怯じゃ無いですか!?」
私は叫び、ワナワナと対戦者『たち』を見る。
個々のステータスなんぞ、もはや差がありすぎて確認したくもない。
ちなみに現在の私のレベルは0.52〜0.76あたりをさまよってますが!
でも本当にそれどころじゃない。

「お姉さんを堂々と好きに出来るなんて、僕ら幸運だよね、兄弟」
「退屈な催しに粋なサービスだよね、兄弟」

二人して髪をキザにはらうと、客席から女性客のキャーと言う黄色い声。
そう……対戦相手は双子の門番。
トゥイードル=ディーとトゥイードル=ダム。もちろん大人版。
「何だって!相手が二人なんですか!!」
『い、いや、ナノ。これには色々事情が……』
サポート役のナイトメアが、私の頭の中でごにょごにょと言い訳する。
一方双子は私の言葉を聞き、
「僕らが何で二人かって?お姉さん。それはね、僕らが――――だからだよ」
「そうそう。入れ替わっても誰も気づかない。つまらない――――なんだよ」
……ん?黄色い歓声に紛れて、二人の言葉の一部がよく聞こえなかった。
「あの、すみません。今の言葉をもう一度――」
『ナノ!今はそれどころじゃないだろう!この場を乗り切るんだ!!』
ナイトメアが発破をかけてくる。
そ、そうでしたね。気にしてられないです。 
でも気のせいか、今、強引に遮られた気がしないでも……ま、いいか。
そして私が武器を出す前に、もう双子は虚空から斧を取り出していた。
そしてそろいの仕草で、私に向かって構える。
――ううう!またも大ピンチがああ!!

私はぶるぶる震える人差し指を二人に向け、
「な、ななななな舐めないで下さいよ、二人ともぉ!
こう見えて、私だってここまで勝ち残ってきたんですから!!」
――マシンガン、マシンガン!!
私は必死にイメージし、ビバルディのマシンガンを出現させる。
それはすぐ私の両腕に……て、重い!!ずっしりしてて落ちそうになったあ!
「ぐっ……」
女で女王様のビバルディでさえ、これを軽々と扱うとか、どれだけ基礎体力が充実
してるんですか、この世界の人ら!!
双子は、苦しそうにする私に早くも余裕の表情だ。
「お姉さん、それ、ロングリコイル式だよね?お姉さんが使うのは危ないと思うよ」
「同感。フルオート射撃はやめておいて、バースト射撃にしといた方がいいよ」
え……?ディー、ダム。あなたたち、今、何語をしゃべったんですか!?
どうもこのマシンガンは、素人が扱うには色々危険らしい。
そして双子は、ちょっとまじめな顔で斧を構える。
「夢の中とは言え、お姉さんの身体が半分吹っ飛ぶのは、見たくないしね」
「そうだよ兄弟。お姉さんがオイタをする前に、銃を取り上げるよ!」
――あ、ああああ!!危険なオモチャを手にした子供への対応だ!!
「こ、こうなればイチかバチか!!」
ビバルディから奪ったとき、頭の中にマシンガンの使用方法も勝手に刻まれている。
その知識を頼りに、何とか発砲を……。
「うわっ!!」
手の甲に強い痛み……と思ったときにはマシンガンを取り落としてしまった。
それは地面に落ちる前に、溶けるように消えてしまう。そして会場の歓声。
「い、痛……」
手の甲を見ると、赤くなっている。何かで強打されたらしい。
「ごめんね、お姉さん。斧の柄でちょっと叩いちゃった。
でも素人が銃を使って、怪我するよりはいいでしょう?」
「っ!!」
間近でディーの声がし、全身が戦慄で震える。
身をひるがえし、慌てて逃げようとすると、
「動かないで、お姉さん」
ダムの優しい声がする。
そして首筋にヒヤリとする感触。気がつくと、背後から抱きしめられるようにダムに
拘束され、斧を喉元につきつけられていた。
「無駄だよ、お姉さん。銃や剣を持ったとしても、お姉さんは素人なんだよ?」
ディーも斧を私につきつける。切っ先はまっすぐに心臓。
「く……っ!」
確かに……武器だけ同レベルになったところで、経験から体力から全てが違う。
「言っとくけど、今までみたいな間抜けな奇襲で、僕らを倒せると思わないでよ?」
「僕ら、面白いものには慣れっこだからね。驚かせてその隙に……は通じないよ?」
読まれまくっている!そして二人は冷酷な声で私に、
『降参してくれるよね、お姉さん?』

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