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■怒らせた話10

引き続き回想中。
私はプレハブ小屋の中で、ぐるぐる歩き回っていました。
「さて。この落とし前はどうつけるべきですか」
防犯ベルは大げさな気がするし、毎度職員さんを呼びつけるようで申し訳ない。
こちらも自衛策を考えませんと。
私は腕組みし、真剣に頭をひねり……ひねり……。
「……珈琲を飲みたいですねえ」
二十七秒くらいで挫折。私にしては長考した方か。
「そうそう。カビの生えた豆と、ドレスもどこかで処分しないと……」
そしてパッと名案が浮かぶ。
「そうだ!庭で焼きますか。覆いをして、豆も飛ばないようにして」
元の世界では焚き火禁止だけど、ここは不思議の国。庭で何を焼こうが自由です。

「完成!」
半時間帯後、私は庭で準備を終えました。
周囲を石で囲み、豆がパーンと飛び散らないよう、網などで軽く覆いをする。
そしてライターで枯れ木や葉っぱに点火し……
「ファイアー!!」
ゴミ袋から、汚れたドレスと珈琲豆を盛大にバラまく。火はすぐに燃え移った。
ほどなくして、カビた珈琲の焼ける匂いが庭中に広がる。
「うわあ、焙煎っぽいですねえ。パチパチ言ってます」
カビてるからひどい匂いだけど、紛れもなく珈琲の濃い匂い。
子どもみたいに自然焙煎にはしゃぐ私。
「ん?」
そこに、ざわざわと人の足音がした。それはすぐ私の敷地内に入ってくる。
――ん?……マズい!!
でも、あれは……帽子屋ファミリーの人たちだ。ブラッドまでいる。

帽子屋のボスが、店ではなく、私の家に何の用でしょう。
でもボスは奇妙なことに、いつもの白い服じゃなくて、会合用のスーツだ。
いや、会合スーツに似てるけど、さらにオシャレにアレンジしたような……多分、
お出かけ用の特注品。高そうですねえ。
スーツだけじゃない。いつもよりめかしこんでいるような……。
猛烈に逃げたいですが、焚き火をそのままには出来ない。
水!水はどこですか!と、慌てていると、先にブラッドが私を見つけたらしい。
「やあ、お嬢さん」
と、昼だというのに、不似合いなほどに上機嫌な笑顔で私に近づいてくる。
「待ちきれず迎えに来た。ぜひ会場まで君をエスコートさせて――」
ブラッドの声はそこで途切れた。

そのときマフィアのボスの見た物は。

普段の黒エプロン姿。特にオシャレも何もしていない、いつも通りのペット。

謎の焚き火。そこで燃えている……自分が贈ったドレス。

そして、

「あ、ブラッド!!そっちは風下だから、逃げ――」
カビた珈琲豆を焼いた濃い煙が、ボスの全身にかかったのであった。

私が、逃亡の努力も虚しく、追い立てられ、追いつめられ、捕まったのは、それから
数時間帯ばかり後のことでありました……。

…………

…………

はいはい。最後の回想シーン終了。

「え、ええと、あの、ブラッド……何とお詫びして良いやら……」
疲労と恐怖を相半ばに、私はすごい格好のまま、歯の根をガチガチ鳴らす。
すごい格好とは、うっすいネグリジェ姿で、鎖で吊された格好。
あれから、いちおう身体をきれいにされ、ネグリジェを着せてもらえました。
あと椅子に座らせてもらってます。高そうなひじ掛け椅子。
色々脅されたけど、さすがに手首が外れるのは本意ではないみたいですな。
それに私のプライバシー配慮(?)のための覆いもあります。
周囲にカーテンレールみたいなのが設置され、絹のとばりがつけられている。
だから外部の人が来ても、私がいるとは……いや、部屋の隅に不自然に設置された
とばりとか……絶対バレてますよな。
ともかく、前よりマシです。
前は吊されっぱなしだったし、もっとスゴイ格好だった。
ボスに××されて、××だったあの格好の私を『あらあらお嬢さま。あんまりボスを
怒らせちゃダメですよ〜』と、のんびり笑いながら、清めてくれたメイドさんは、
プロ中のプロに違いない。

「君にも学習能力の萌芽が見られるようで、何よりだ」
書類仕事が終わったらしいボスは、立ち上がると、またシャツ姿でこちらに来る。
「飼い主として、これからは、君をしつけ直すことに全力を注ぐつもりだ」
「い、いえ、そのあの、いつもダルそうにしてるあなたが、そんな努力など……」
私に覆いかぶさるように立つボスに、私は椅子の上でガタガタ震える。
けどボスは冷たい、瞳で、私の両膝に手をかける。
「そうとも。面倒だが、放し飼いにしたツケがこれだ」
そう言って、私がぴったりと閉じた膝を……強引に押し開く。
「ん……っ」
抵抗したけど、そのままひじ掛けに、足をのっけられる。
……えーと、成人向けコンテンツのお姉さんよろしく、足を大きく開いている状態。
そしてブラッドはネグリジェの裾をめくる。
「噛んでいろ」
「――っ!」
そして裾を……私の口に押し込むよう、無理やり噛ませた。
おわかりでしょうか、自分で裾をくわえ、大事な箇所をわざわざ見せてる状態。
しかも両手は鎖で縛られ……自分のことながら、写真撮ったら売れるんじゃ、という
卑猥な格好です。ちなみにネグリジェの下は本当に一枚。一枚っつか、ほとんど紐。
布地は本当に最小限で、大事な箇所をかろうじて覆っているだけ。
「どんな手段を使っても、今度こそ従わせる……君も愉しめるようにな」
と、布地の上を指でくすぐりながらブラッドは笑う。
「ん……っ!」
――この、×××××……!
でも私は何も出来ず、屈辱的な姿勢をさせられたまま、涙ぐんだ。

……半分くらい自業自得だと、自覚しつつ。

10/30
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